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62 魔法の訓練

二話更新してます。

「エルナ、次は魔法の威力をあげていこう」


 俺の言葉に、エルナはキョトンとしていた。


「威力、ですか?」

「そう、魔法は基本的にはイメージが大事なんだ。どれだけイメージをしっかりと持てるか」

「イメージですか」

「ああ、例えば、ファイアボール。エルナ、ファイアボールを出してみて」

「はい」


 エルナはファイアボールを手の上に発動させた。

 ファイアボールは赤い炎でゆらゆらと揺れている。


「よし。じゃあ、俺のファイアボールを出すから、違いを言ってみてくれ」


 そうして俺は自身の手の上にファイアボールを発動させた。

 俺の出したファイアボールは白に近い黄色をしている。

 エルナはびっくりした顔をしていた。


「えっ! 色が、色がまったく違います!」

「そう、火の温度が違うんだ」

「火の温度、ですか?」

「ああ、焚火やロウソクを見てると炎の色が違うんだがわかるか?」


 エルナは少し考え込んだ。


「そういえば、青っぽかったり黄色だったり、オレンジ色だったりします」

「そうだ。炎の色が違うのは大雑把にいうと、それぞれ温度が違うからだ」


 正確には燃焼がどうのと理由はあるのだろうが、とりあえずは簡単な説明でいい。

 イメージさえできればいいのだから。


「なるほど」

「で、俺のファイアボールはそれでいうと、温度が高い炎ということになる。一度消そうか」

「はい」


 そこから俺はCランク試験の時に買っておいたロウソクに火をつけて炎について俺の知ってる知識で説明をはじめた。


「炎も俺たちと同じで温度をあげるには酸素、空気中に含まれる成分がいるんだ。俺たちも呼吸をとめると苦しくなるだろ?あれは空気中にある酸素って成分をとれなくて苦しくなるんだ。炎も同じで、酸素の供給を止めると、火が消えてしまう」

「成分?」

「そうだな、燃えるための燃料やエネルギーと思えばいいさ。俺たちも飯を食わないと元気でないだろ?炎のご飯は空気中にある酸素ってものってことだ」

「なるほどです」


 俺の説明を聞いて頷くエルナを見た俺はさらに先に進めた。


「で、だ。そうなると炎の温度をあげるにはどうすればいい?」

「えっと、酸素をたくさん食べさせる、ですか?」

「そう。正解だ。それを踏まえたうえでファイアボールにたくさん酸素を送り込んで温度を上げるイメージをしっかりとして、再度ファイアボールを発動させてみて」

「はい! やってみます!」


 そう言うとエルナは目を瞑り集中しはじめた。

 数分ほどしてイメージが固まったのか、目を開くとファイアボールを発動させた。

 彼女の手の上には見事、黄色とオレンジの混じった炎のファイアボールが生まれていた。

 俺ほどではないが、明らかに先ほどよりは高い温度のファイアボールだ。


「わわ! できました!」

「ああ、完璧だ。魔法ってのは基本的にイメージが大事なんだ。本人がどれだけ理解してイメージをしっかり持って発動させるか。それが魔法の威力と精度をあげるコツだ」

「なるほどです!」

「じゃあ、今のファイアボールを踏まえて、今度は別の魔法もやっていこうか」

「はい!」


 そうしてその日は、日が暮れるころまで俺とエルナは魔法の訓練を、フィーネとミハエルは連携の訓練をしていた。

 フィーネは弓を持ってさえいれば前衛もこなせるらしく、臨機応変に対応ができるようだ。

 それを踏まえて、ミハエルが弓の一部に刃をつけてはどうかと提案していた。


 俺としてもそれは悪くないと思った。

 実際彼女がダンジョンで死にかけた時は、接近されてそれに対応しきれずに倒れたという経緯もある。


 なので、俺は具現化魔法でこういう感じか?と作ってみた。

 弓はM字型の弓で、これはフィーネが使っていたのと同じだが、M字の山の部分から外側に向けて水平に真っ直ぐの刃をつけたものにしてみた。

 前世のゲームでそういう弓を見たことがあったのでそれを参考にしている。


 弓としては若干重くなったが、フィーネに試してもらったところ、かなりいい感じのようでとても気に入っていた。

 それなら、と俺は作った弓を固定化させてフィーネにプレゼントした。

 嬉しそうにしてくれていたので俺としても嬉しいところだ。



 エルナもそれぞれの魔法の威力をしっかりと上げることが出来た。

 バレット系はまだ少し難しいようだが、いずれ威力も精度もあげれるようになるだろう。


 ヒールに関してはさすがに理解が難しいらしくあまり変化はなかったけども。

 それでも切り傷でも治療できるのはでかいと思う。

 前衛はちょっとした切り傷でも戦闘中にずっとあると動きが鈍くなる原因になるのだから。


「それじゃあ今日はこの辺にしておこうか。明日、ゴブリン狩りをしてみようか」

「ええ、分かったわ」

「は、はい!」


 エルナは若干緊張しているようだがまぁゴブリンを倒せなかったとしても彼女はもう魔力暴走で死ぬことはないのだ。

 普通の仕事をして生きて行くことも可能だ。


「そういや、帰りはどうする?また抱いていくか?さすがにすぐには慣れねぇだろ?」


 ミハエルッ! なぜ君はそんな天然イケメンを発揮するんだ!


「あ! ミ、ミハエルさん、で、出来れば私は帰りもお願いしたいです。まだ、ちょっと一人では怖いので……」


 エルナが申し訳なさそうに、少し頬を赤くしてミハエルにお願いしていた。

 そうだよな、一回程度では慣れないよな……。

 この世界では空を飛ぶ手段はないのだから、怖くて当たり前か。


「フィ、フィーネ。君もそうするか?」

「え、ええ……。お願いしても……?」


 やっやめてください!

 その上目遣いでお願いはほんと、俺の心臓が持たない!

 熱くなる頬を感じつつも、今が夕方で本当に良かったと思う。


「ルカー。魔法かけてくれ」


 ミハエルを見るとすでにエルナを抱きあげている。

 くっ! スマートな天然イケメンめ!

 そう思いつつも俺もフィーネをお姫様抱っこすると光学迷彩と飛行魔法をかけた。


 こうして俺たちは街へと帰り、そのまま酒場へと四人で向かって夕食をとった。


 俺がフィーネに今住んでる場所の治安がよくないんじゃないかと心配すると、フィーネはクスリと微笑んで、エルナの問題も解決したので近々あそこを引き払って宿屋暮らしをするわと言ってくれた。

 ただ荷物がそれなりにあるので少し時間がかかりそうと言ったので、俺はフィーネとエルナにもミハエルと同じアイテムボックスを用意することにした。


 その話しをするとフィーネもエルナも驚いていたが、とても感謝された。

 さすがにすぐには作れないので、明日迎えに行った時に渡すことにした。


 酒場での食事を終えたあと、フィーネたちを送り届け、俺とミハエルはいつもの宿へ向けて歩き始めた。


「とりあえずは良かったな」


 ミハエルの言葉に俺は頷いた。


「ああ。後はエルナが人型を殺すことができるかどうかだな」

「そうだな。まず剣で直接やらせるのか?」

「いや、魔法でいいと思うんだが、どう思う?」

「最初は魔法でいいと思うぜ。ただ、一度は剣で直接やらせる方がいいかもな。直接殺すのはいざって時の覚悟が変わる」

「そうだな。そうしよう」


 こうして俺たちの一日は終わった。


お読みいただきありがとうございます。

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闇の世界の住人達

前作になります。まだ連載中ですが、すでに最後まで書き終えています。

もし良かったら↑のリンクから見てみて下さい。

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