6 暴走
あれから三日が経った。
そして俺は遂に魔法のエネルギーを感じ取れることに成功したのだ!
まだわずかでしかないが、俺の体内を血液と同じように、だが血液ではない何かが流れている。
これがあれだな、――魔法エネルギー、ていうか魔法エネルギーって名前ダサイよな。
なんかカッコイイ言葉あった気がするんだけど……。
あ、あった。あれだ、魔素、魔法の素で魔素! いいな! これにしよう!
で、だ。その魔素を発見したわけだが、俺の体内にはちょびっとしかなかった。
やべーな、俺才能なしか?
とりあえずはその魔素を見つけてからずっと操作しようとしているんだが、これがまた難しいんだよな。
まるで鰻みたいなんだよ。
捕まえようとすると、スルスル逃げていく。
いやまぁ、実際手が捕まえてるわけじゃなくて、こう感覚? 見えない手で掴もうとしているみたいな?
まぁ、そんな感じで捕まえようとしても逃げていく。
でもそれもやっとかすり始めた。後ちょっとやれば掴めそうな気がするんだよなー。
よし、もっかいやってみるか……。
俺は意識を集中させ、見えない手で魔素を探る……。
――いた。そっと手を伸ばす。惜しい、もう少しだったが逃げた。
俺はうっすらと額に汗をかいた。
もうちょっと、もうちょっとだ……。
後、少し…………捕まえ……たああああああ!?
捕まえたと思った瞬間、俺の体内にあった魔素が一気に増えた。
急激に増えた魔素に俺はパニックになる。
とにかく抑え込まないと!溢れる!!!
俺は必死になって溢れそうになる魔素を見えない手で抑え込んだ。
ぎゅうぎゅうと抑え込んでやっと少し落ち着く。
だけど、この抑え込んだ手を離すと絶対に溢れかえる。
どうすればいいのかが分からない。ただとにかく抑え込んでおくしかない。
どうすればいいのか聞きたくても、俺はまだろくに発音が出来ない。
仕方ない、とにかく抑え込んで、どうするか考えるしかない。
とりあえず少しだけ解放してみるか……?
よし……ちょっとだけ指先から出してみよう……。
俺は抑え込んだ魔素から少しだけ抜き取り、指先から解放してみた。
途端それはバチっと音を立てて火花が散った。
うおおおお! まじかよおおおお! こええええ……
まじでほんのちょっとだけだったのに、これかよ……。
ぐぬぬ……。これはまじでずっと抑え込んでるしかないぞ……。
あの量であんな火花が散るとか、今抑え込んでるこれ解放したらどうなんだよ、大爆発しそうじゃん。
とりあえず抑え込んでおくのはずっと魔素を追いかけて慣れていたので寝てても問題はなく抑えてはおけるはずだ。
とはいえ、ずっと抑え込んでるのもなんていうか精神的に疲れるしなー。
こう、例えば、体内に箱を設置してそこにいれるってのはどうだ?
魔法ありの世界だしいけんじゃないか?
よし、とりあえず魔素を使って箱作りだ。
…………よっしゃ、いい感じにできたぞ! 某青狸のポケットと箱の中は似た仕様だ。
箱の中にどんどん魔素を放り込んでいく。
箱はまぁ概念っちゅーか、なんというか、とにかく無限に詰め込む事が出来る箱だ。
とりあえずほとんどをしまい込めたので、少しだけ残しておいた魔素をそっと離してみた。
魔素は再び体内を巡り始めたようで、俺はほっと一安心する。
ああ、疲れた。もう寝よう。魔素の検証は明日だ明日。
俺は目を閉じると眠りについた。
離した魔素が若干増えていた事に気づかずに。
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