54 試験の内容
二話更新しました。
翌朝、ミハエルと合流した俺はCランクになる為の試験内容を聞きに受付へと向かった。
受付に座る受付嬢さんに声をかける。
「すいません、Cランク試験についてお伺いしたいんですが」
そう言って俺はギルドタグを提示した。
ギルドタグを受け取った受付嬢さんはタグを確認した後に手元にある何か資料らしきものを確認してからタグを俺へ返却しつつ言葉を返した。
「はい、お返ししますね。それでは説明の為の部屋へご案内しますのでこちらへどうぞ」
受付嬢さんは近くの職員さんに声をかけてから俺たちを案内しはじめた。
受付の横からさらに奥へ進むと数人の職員と思しき人たちが何か机の上で書類整理などをしており、ちょっとだけ職員室を思い出した。
そこを通り過ぎると階段があり、そこから二階へ上がるらしい。
階段をあがるといくつか部屋があり、一番奥にはなんだか重厚そうな扉があった。
俺たちは一番手前の部屋に案内され、暫く待っているように言われる。
部屋の中には横長の机と椅子があり、小さな会議室といった感じだ。
とりあえず座って待てばいいかと俺たちは適当に腰かける。
――といっても偉い人は扉から離れたとこで、新人は扉に近いとこに座るっていうのを以前何か雑誌で見た記憶があるので、一応扉側には座っているけども。
しばらくすると扉が開き、昨日いたハゲたおっさんが入ってきた。
この人が説明係なのかなと思っていると、おっさんは俺たちの向かい側に腰かけるとニカッと笑った。
「おう、昨日ぶりだな、坊主ども!」
相変わらず声の大きい人であるが、なんだか憎めないおっさんである。
「さて、今日はお前らのCランクになる為の試験の説明だな」
「よろしくお願いします」
「おう。さて、とりあえず自己紹介をするか。俺はアーロン・オルフ、このシュルプの街の冒険者ギルドでギルドマスターをしている」
まさかのギルドマスター宣言に俺は心底驚いた。
確かにそう言われるとなんだが威厳があるように見えてくる。
しかし毎回ギルドマスターが試験の説明をするのだろうか。
そうだとしたら結構大変だよな。
「俺はルカ・ローレンツです」
「ミハエル・シュッツです」
「うむ、まぁ硬くならんでいいぞ! 気楽にしろ」
偉い人の前で気楽にできるほど俺の肝は大きくないんだ、ギルドマスターのおっさん。
「さて、それじゃあ説明するぞ――」
そうしてCランク試験の内容を聞くことになった。
試験はここから馬車で一週間ほど行ったところにある古い廃鉱山でのDランクモンスターの殲滅だった。
モンスターの名前はヴェルクフェー――山妖精――というモンスターらしく、古い廃鉱山にいつの間にか棲みついていたのだという。
それほど凶暴なモンスターではないが、村が近くにあるため、討伐依頼がきたらしい。
依頼内容としてはCランクになるそうで、廃鉱山内を探し回って殲滅しなければいけないかららしい。
基本は俺たちだけで討伐をするが、その試験中は常にギルドが指定した試験官が付き添うということだった。
まぁ正直俺にとっては嬉しくない試験だ。
探し回ること自体は何も問題はないが、俺の攻撃魔法やバインドが封じられることになるからだ。
これはあとでミハエルと相談が必要になるだろう。
「――というわけだ。分かったか?」
「はい」
「廃鉱山までの馬車はこっちで用意してやるから安心しろ。試験開始は明日からだ」
「明日ですか」
「おう、それまでにお前らは自分の飯くらい用意しとけ。集合はギルド前で、朝の鐘が鳴る頃だ」
「分かりました」
「よし! それじゃあ今日はもういいぞ!」
その言葉に俺たちはギルドマスターに頭を下げると部屋を出てギルドをあとにした。
「ルカ、今日どうする?」
「今日は明日からの準備だな。帰りの分も含めて色々と用意がいるだろうし……」
そこまで言って俺は自分の耳を軽く叩いた。
ミハエルが頷いたので通話魔法を使う。
『とりあえず俺が弱い攻撃魔法以外使えないのが問題だな』
『確かにな。試験官がずっと一緒となると自由度が下がるな』
『ああ、今回はほぼミハエル頼りになると思う』
『それはかまわねぇさ。ただバインドもダメだし立ち回りに注意がいるな』
『ああ、一応初級の弱い魔法で支援はするけど、期待はしないでくれ』
『おう。俺結構ルカの魔法頼りな戦い方してるからこういうのは困るな』
そう言ってミハエルが苦笑する。
『俺なんて、ミハエルがいること前提の魔法の使い方してるからな』
『お互い頼りっぱなしだな』
『はは。いいんだよ、俺たちはパーティなんだから』
『そうだな。お互いで補い合えるのがパーティのいいとこだよな』
『そういうことだな。あとはギルドマスターは詳しく言ってなかったが、準備自体も試験だと思うから必要なものはすべて揃えておこう』
『そうだな』
そうして通話を切った俺たちは往復二週間分の食糧の用意と、マルセルのお父さんの店で傷薬や回復ポットの購入など、旅に必要な物を準備していった。
正直回復ポットは高いのであまり購入はしたくないが、持っていないというのもおかしな話なので仕方ない。
まぁ、試験のあとも残っていれば、アイテムボックスにいれておけば何かあった時に誰かに使えるだろう。
準備も終わり、モンスターの情報も共有したあと俺はミハエルと別れ、時間もあるので実家へ連絡をしにいくことにした。
時刻はもう夕方近いのできっとカールも帰ってきているだろう。
「ただいまー」
「あら、おかえり。ルカ」
「にーちゃんだ。おかえり」
「にぃー」
俺はとりあえずまずは可愛い天使二人を抱きしめた。
「んー可愛いなー可愛いなー」
「にーちゃん、やめてー」
「かあいー」
あー! どっちも可愛い!
カールに逃げられたあと、リリーを抱っこしながら俺はマリーに話しかけた。
「母さん、俺、明日から往復で二週間、Cランク試験で出かけることになったんだ」
「まぁ。危なくないの? 大丈夫?」
「大丈夫だよ、試験官の人が一緒だから」
まぁ、実際は試験官は一緒にいるだけで手は出さないが、心配させる必要もないだろう。
「そうなの? 危ない事はあまりしないでね?」
「うん」
冒険者自体、危険な職業だが家族を悲しませる事だけはしない。
この日はこのまま夜ご飯を実家でとってから宿屋に帰ることになった。
カールやリリーと離れるのはとても寂しいが耐えねばならぬ!
宿屋に帰った俺はカールとリリーのアルバムを眺めて寂しさを紛らわせながら眠りについた。
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