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53 受付のおっさんが濃い

 フィーネと酒場で交流した翌日、少し遅めの九時に起きた俺は身支度を整えると冒険者ギルドへ向かった。


 昨日は少々寝る時間が遅くなったため、ミハエルと話して集合時間を九時三十分にしたのだ。

 まだ若干眠さはあるが、問題はないだろう。


 ギルドの扉を開け、酒場に目を向けるが、まだミハエルは来ていないようだった。

 一応今日もダンジョンに向かう予定ではあるのだが、たまには依頼ボードを見るのも悪くない。

 Eランクになってからはずっとダンジョンばかりで依頼なんてまったく見ていなかった。

 Dランクの依頼はどんなのがあるのだろうか。


 お、ダンジョンでの依頼があるな。

 ---------------------

 素材の採集


 場所:鉱山ダンジョン二十七階から二十九階

 内容:リザードマンの皮八枚の納品

 期限:依頼受諾から三日以内

 報酬:銀貨四枚と大銅貨八枚

 依頼主:防具屋 キッシェ


 受諾可能ランク:Dランク以上

 ---------------------


 俺が依頼書を見ていると、横合いから声がかかった。


「よう、ルカ。何見てんだ?」

「ああ、ミハエル。おはよう」

「おう、おはよう。んで?」

「これだよ。どうせ三十階向かうし、これ受けてみないか?」

「ほん? ああ、なるほど。いいんじゃね?」

「よし、じゃ受けてみよう」


 俺は依頼ボードから依頼書をはがすと、受付へと持っていった。

 報酬が凄くいいわけではなく多少色をつけているという程度だが、三十階へ向かいつつ集めればいいだろう。

 ――ちなみに常駐依頼は、はがさずに受付で申告するだけだ。


 受付にはつるっとハゲたおっさんと、綺麗なお姉さんがいる。

 俺の進行方向は今、おっさんだ。


 おっさんは笑顔で俺を待っている。

 すまない、おっさん!どうせなら綺麗な人がいい!

 俺はそっと進行方向を変えた。

 おっさんは途端にすごく悲しそうな顔になった。


 くそおおお! そんな顔されたらお姉さんの方いけないじゃん!

 俺は諦めたように再度進行方向を変えておっさんの受付場所へと行った。

 おっさんは実にいい笑顔で俺を出迎えてくれた。


「よく来た坊主! さぁ俺に依頼書を出せ!」


 おう、濃いな……。

 俺は若干引きながらも依頼書を出した。

 これは、あれだな、ミハエルは絶対後ろにいないな。

 チラリと酒場の方を見ると、ミハエルが席について俺に向かって顔の前ですまんと手をあげていた。

 おのれ、ミハエル!


「ほうほう!ついこないだ冒険者なったばかりなのに、もうDランクなってんのか!」


 どうやらこのおっさん、俺たちのことを知っているようだ。

 しかし声がでかい。あまり叫ばないでほしいものだ。

 俺が黙ったまま冒険者タグを置くとおっさんはチラリと見ただけですぐに依頼書を受理し控えの板を渡してくれた。


「はっはっ! 頑張れよ! 坊主!」


 そう言って俺は頭をわしゃわしゃと撫でられた。

 なんだか元気なおっさんだ。


「ありがとうございます」


 そう言って俺はミハエルのもとへと向かった。


 俺は席につくとミハエルをジト目でみた。

 そんな俺にミハエルは苦笑しながら顔の前に手をあげて謝ってきた。


「すまん。いやなんか面倒そうで」

「はぁ。まぁいいけどな。てか、あんなおっさんもいたんだな」


 そう言って受付を振り返ると、すでにおっさんはおらず、おっさんの席には別の受付嬢さんがいた。


「あれ、もういないのか」

「あー、なんかルカがこっち来たとこで奥に行って変わりにあの女の人が来てたぞ」

「ふぅん?変なおっさんだな」

「だなぁ。まぁ、とりあえず飯にしようぜ」

「そうだな」


 変なおっさんの事はさておき、俺たちは酒場で朝食をとり、ダンジョンへと向かった。


 二十五階の転移柱に飛んできた俺たちはそのまま階下へ向けて移動をはじめた。

 依頼書では二十七階からリザードマンが出るみたいなので、とりあえずまずは二十七階だ。


 ちなみに、昨日はちゃんと清算したが、結構な稼ぎになった。

 大銀貨一枚と銀貨二枚と大銅貨三枚だった。

 六階しか下りていなかったが、トイフェルアイがいた二階層が人がいなくてモンスターがわっさわっさだったので、そこでのドロップでかなり稼いだというのはある。

 まぁ一番高かったのは銀貨五枚の宝石つきのネックレスではあるけども。


 しかし冒険者は死と隣り合わせとはいえ、ここまで稼げるものなのだろうか。

 いや、そういうものか。

 どれだけ稼いだって、一瞬で死ぬ職業だし、普通は武器防具の手入れや、回復ポットや薬草なんかの準備にもお金はかかるのだ。

 俺たちが特殊すぎるだけなんだ。


「ふう。やっと二十七階への階段か」


 そんなミハエルの声に俺は頷いた。


「ここからリザードマンがでるはずだ。他にもいるかもしれないけど」

「ま、見てみりゃ分かるこった」

「はは。そうだな」


 俺たちは二十七階へと下りていった。

 下りてすぐ敵を発見した。

 俺は声を潜めてミハエルに話す。


「リザードマンと、クラインデビルだな」


 リザードマンは二足歩行の人型の茶色いトカゲで、手には槍を持っている。

 攻撃方法は槍での攻撃と、尻尾でのなぎ払いなどだ。


 クラインデビル――小さい悪魔――は三十センチくらいの大きさで、肌の色は灰色、背にはコウモリのような翼が生えている。

 耳は尖っていて、手足は大きいが全体的に細く、そして鉤のある尻尾が生えている。

 攻撃方法は雷魔法のようで、かすっただけで麻痺の効果があるようだ。


 二十五階を過ぎてからは魔法を使う敵が普通にいるようになったな。


「――そんなわけでリザードマンは頼んだ」

「おう、任せろ」


 どちらにしろ、俺たちの戦闘方法はこれまでと変わらない。

 とはいえ、魔法を撃ってくる相手なので、速度重視の魔法に切り替える。

 ミハエルが走り始めたと同時に、俺はウインドバレットを撃ちだす。

 氷結槍ほどの威力はないが、風による回転で高速で撃ちだすので一瞬で敵にぶつけることができる。

 もちろん威力も氷結槍ほどはないがクラインデビルを殺すのには問題ない。


 モンスターがこちらに気づき、クラインデビルがミハエルに向けて魔法を発動しようとしたところで、俺の魔法がクラインデビルの胸を撃ち抜いた。

 すぐにもう一匹のクラインデビルの胸にも風穴があく。


 残りはリザードマンが二匹だ。

 遠距離は潰したのでミハエルも余裕をもって対処できている。

 ただやはり槍を持った相手はリーチ自体が長いので面倒そうではあった。

 いつもよりもミハエルは避ける時に大きく距離をあけている。


 ミハエルが言うには、基本初見の敵を相手する時は感覚がつかめていないので動きが悪いらしい。

 俺としてはどこが悪いのかは分からないが、今回で言えばきっと避ける時に大きく距離をあけている部分などがもっとうまくできるようになる、ということなのだろう。

 他にもあるかもしれないが、俺には今のところそのくらいしか分からない。


 二匹を相手していたミハエルだが最初の一匹を倒したあとは先ほどとは明らかに動きが変わっていた。

 相変わらずのチートっぷりだ。――俺が言えたもんでもないが――



 初めてリザードマンを倒してから三時間が過ぎた。

 今は二十八階で狩りをしている。

 一度二十九階まで行ったのだが、そこそこパーティがいて、俺たちが狩るには少し数が足りないので二十九階よりは人が少ない二十八階に戻ってきたのだ。


 ミハエルももう完全にリザードマンに慣れて狩りの速度が上がっているので、そこそこの数がいないとリポップが間に合わないのだ。


「ミハエル、そろそろ昼飯にしようぜ」

「お、もうそんな時間か」


 セーフゾーンのちょうど近くにきていたので、俺たちはセーフゾーンに入って昼食をとることにした。

 昼食をとっていると、ミハエルが質問をしてきた。


「ルカ、皮何枚になった?」


 皮とは、依頼にあったリザードマンの皮のことだ。

 依頼では八枚必要なのだ。


「今六枚だな。意外と出ないもんだな」

「まだ六枚か。他のもんもドロップするから、皮だけ狙うとなると結構大変だな」

「そうだな、やっぱり朝一で消えてない依頼は微妙ってことか」

「はは。そうみてーだな。でもまぁ、その分宝石結構でただろ?」

「ああ、一番安い宝石だけで五個あるな。あとレア宝石が二個だから宝石だけで大銀貨一枚と銀貨五枚分だ」

「おーいいじゃん」

「あとは銀鉱石が十二個と、クラインデビルの羽が十枚だな」

「羽って何に使うんだろうな」

「んー、錬金素材らしいぞ」

「へー」


 ミハエルの興味のなさそうな返事を聞きつつも、俺は錬金術なんてものがあったことに驚いた。

 ただスマフォの説明だと、それほど発展した技術ではないようだ。

 今のところは、ダンジョンから出る特殊な装備やアイテムを解析して真似ようとしている段階のようだ。

 魔石への魔法付与も、この錬金術の範囲に入るらしい。


 とはいえ、リザードマンの皮が大銅貨五枚に対して、クラインデビルの羽は大銅貨二枚なので、この狩場では一番安く、ハズレ素材と言えるだろう。



 昼食をとったあと、少し休憩してから俺たちは再度狩りを再開した。

 ドロップというものは平等ではないのだ。

 再開した途端連続でリザードマンの皮が二枚でた。

 おのれ。

 とはいえ、三十五階を目指すには少々微妙な時間なので、今回はこのままあと四時間ほどのんびりと狩りを続けてから帰ることにした。


 狩り終了後に清算をしたら、依頼の報酬をいれずに大銀貨四枚と銀貨五枚と、かなりの儲けがでた。

 俺もミハエルもこれには驚いたが、一番驚いていたのはやはり精算所にいるおじさんだった。

 それでも――また君たちか――と苦笑するほどには慣れてきているらしい。


 清算が終わったところで精算所のおじさんから、Cランクになる為のポイントが貯まっていることを伝えられた。

 Cランクになるには試験が必要らしい。

 ただ、今日はもう遅いので、翌日改めて試験内容を聞きに来るようにと言われた。


 おじさんにお礼を言って俺たちはギルドを出たあと酒場で夕食をとりながら試験について予想しあったりして楽しく過ごすこととなった。

お読みいただきありがとうございます。

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闇の世界の住人達

前作になります。まだ連載中ですが、すでに最後まで書き終えています。

もし良かったら↑のリンクから見てみて下さい。

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