50 気付けばDランクになっていた
翌朝、ギルド併設の酒場で朝食をとった俺たちは昨日できなかったアイテムの清算をしたのだが、中々の収入になった。
一階から地下九階までは銅貨合わせて十枚程度だが、それ以降では銀貨九枚と大銅貨二枚と銅貨五枚となった。
一人銀貨四枚と大銅貨六枚に、銅貨二枚と鉄貨五枚となった。
今日からはギルド併設の安宿ではなく、普通の宿でもいい気がするが、現状困っていないので安宿でもいいな。
ただ、毎回借りる時の手続きが面倒なので今日借りる時に一週間分借りてしまってもいいかもしれない。
その事をミハエルに話したところ、俺の作った布団のおかげで何不自由ないとのことで、ミハエルも安宿を引き続き利用するそうだ。
それは良かったのだが、、今回もどうやら俺たちは少しやりすぎたらしく、ドロップ品の数と、俺たちの名前と顔を見て清算係の人が目を丸くしていた。
ギルド職員の中では俺たちは少し目立ってしまっているらしい。
――まぁでも、別に変に目立っているわけではなく、将来有望な冒険者として目立っているだけなので問題はないだろう。たぶん。
さらに嬉しいことに、すでにDランクへのポイントが貯まっていたらしく、俺たちは見事銀色のタグを手に入れる事が出来た。
これで冒険者としてはやっと一人前というところだ。
――多くの冒険者はこのDランクで足踏みすることが多いらしい。
ま、ほとんどはミハエルの実力なので、俺はタグをくれた受付嬢さんに、相方が強いのでと言っておいた。
ミハエルはそれを聞いて苦笑していたが事実なのだからいいのだ。
冒険者ギルドを出た俺たちは、真っ直ぐダンジョンへ向かい、昨日と同じく受付に鈍色の入場タグを渡して、ダンジョンへと入った。
時刻は朝の九時と少し遅い。
清算に多少時間がかかったので仕方ないといえば仕方ない。
一階の転移柱に触れて二十階に飛んだ。
ミニマップを確認すると、数パーティが活動しているようだったが、かなり広いので出会う事はないだろう。
「数パーティいるな、あと宝箱はないみたいだ」
「そうか、パーティは近けぇか?」
ミハエルが近さを気にしているのは俺が魔法を人に見せるのを避けているのを知っているからだ。
ミハエルの気遣いに俺は少し嬉しくなる。
「いや、遠いな。だから問題はないさ」
「そうか。じゃ行こうぜ」
そうして俺たちは足をすすめた。
二十階のモンスターはフェルスリザードと、エアデスパイダー――土蜘蛛――だ。
どちらも遠距離攻撃をしてくるので大変に面倒である。
フェルスリザードは石を飛ばしてくるし、エアデスパイダーは粘々した糸を飛ばしてくる。
ただ幸いな事にエアデスパイダーは地面にしかおらず、天井にはいない。
天井のフェルスリザードは俺が倒し、地上のエアデスパイダーはミハエルが倒すという振り分けで俺たちはどんどん先へ進む。
新しく増えたドロップはエアデスパイダーの落とす蜘蛛の糸だけだ。
子供の拳くらいの小さな糸玉で一個で大銅貨三枚になるらしい。
これで服など作れば柔らかい素材の服になるだろう。
ただし、糸玉一個が少量なのでかなりたくさん消費することになり、価格としてはとても高くなるだろうが。
「二十階になってから敵との遭遇が多くなったな」
ミハエルの言葉に俺は頷いた。
「ああ、ミニマップで見ても全体的にモンスターグループの数が多くなってるな」
「次は二十五階まで敵の変化ねぇのかなー」
「今のところは五階層ずつでの変化だったからな」
「数が増えるばっかりで強くなるわけじゃねーからちょっとつまんねーな」
「ははは。まぁそのうちもっと深くなればいい感じになってくるんじゃないか?」
「そうだな。それを楽しみに頑張るとしますかね」
そんな会話をしつつ、他の冒険者パーティと会わないようなルートを通って階下へと進んでいく。
変化が訪れたのは地下二十三階だった。
「あれ?見たことねー敵がいるぞ?」
ミハエルの言葉に俺もそのモンスターを見ると、それは空中に浮く目玉で、目玉の周りからうねうねと触手が出ていた。
鑑定したところ、トイフェルアイ――悪魔の目――というらしい。
「うわ、気持ち悪いな。あれはトイフェルアイって言って、あの目玉から生えてる触手で鞭のような攻撃をしてきたり、触手で捕まえてきたりするらしい」
「ほぅ」
「しかも、触手で捕らえたあと、酸を分泌してきてじわじわ溶かされるそうだ」
「うお、それはちょっと想像するとえぐいな」
トイフェルアイと一緒にいるのはエアデスパイダーで、フェルスリザードはいないようだ。
どうやらこれまでと違って五階層ごとに変化ではなくなるらしい。
二十三階からはトイフェルアイとエアデスパイダーが出るようになるみたいだ。
早速とばかりにミハエルが攻撃を開始し、俺はエアデスパイダーに魔法を撃ちこむ。
初見の敵がいる時は、こうして出来るだけミハエルが集中できるようにするのだ。
トイフェルアイがミハエルに対して目玉から生えた触手を鞭のようにしならせて次々と打ち出している。
しかしミハエルはすべてかわしつつ、その触手を切り刻んでいる。
が、切り刻んだそばから触手はぬるりと新しいのが生えてきておりあまり切る意味はないようだ。
それを確認したところでミハエルはあっさりと目玉の中心に剣を突き刺した。
すると、目玉は急に膨張してはじけとんだ。
その汁がまた、大変臭い。すごく臭い。
本来ダンジョンモンスターは死ねば煙になって消えるのだが、このトイフェルアイは『致命傷を受けるとはじけとんで臭い汁をまき散らす』までがワンセットのようだ。
鑑定した時に詳細を見ずに、攻撃方法しか見ていなかったことを悔やむ。
というか、この死に際ぶっしゃーだって精神攻撃だと思うから詳細じゃなくて攻撃方法に書いといてくれればいいのに。
俺は離れていたのであまり汁はかかっていないが、目の前にいたミハエルはそれはもう、たっぷりとかかっている。
ぐるりとこちらを向いたミハエルは物凄く涙目だった。
「ルカァ……」
思わず俺は笑ってしまうが、すぐに浄化魔法をかけた。
「うー、助かったぜ……。なんだよあの目玉野郎……」
「あれは驚いた。すまん、ちゃんと鑑定の詳細まで見ればよかった」
「いや、かまわねぇよ。毎回助かってるし」
「しかしはじけ飛ぶなら俺が魔法でやるか?」
「いんや、あれは俺がやる。リベンジだ」
そう言って闘志を漲らせるミハエルに苦笑しつつ俺は答える。
「そうか。まぁいつでも浄化魔法はかけるから」
そうしてミハエルは三度ほど汁を被ったが、四度目には見事汁を被らずに倒すことに成功した。
中々に強引なやり方ではあるが、剣を刺したあと、すぐさま蹴り飛ばしていた。
「よし!」
「おめでとう、ミハエル」
「おう! お? これは鉄鉱石と違うな」
「ん?ああ、銅鉱石だな。大銅貨二枚で売れるからおいしいな」
「お、まじか。目玉野郎はこれで許してやろう」
「はは。そうだな」
そうして二十三階をクリアして俺たちは二十四階に下りる階段に辿り着いた。
二十三階で出たドロップは糸玉と、銅鉱石、そして小さな宝石だった。
小さな宝石は種類にもよるが一番安いので大銅貨五枚で、高いのになると銀貨一枚にもなる。
高いのは滅多に出ないのでまぁ大体が大銅貨五枚の宝石だ。
目玉特有の素材はないようで、代わりに宝石が出た感じである。
「さて、そんじゃ二十四階にいきますか」
「そうだな。今度は宝箱あるといいんだが」
「おー、それな。出なさすぎて忘れてたわ」
階段を下りて俺は笑みを浮かべることになった。
「喜べミハエル。宝箱があるぞ。真っ直ぐ階段には向かえないけどな」
「おお。別に階段なんぞかまわねぇさ。早くいこうぜ」
「そうだな、こっちの道から行けば近いみたいだ」
「おう」
ミニマップにうつる、宝箱を示す黄色い光点を目指し、俺たちは道を進んでいった。
二十四階も出てくるのはエアデスパイダーとトイフェルアイだ。
ミハエルの目玉攻略の仕方は随分と洗練され、刺すのと同時に蹴とばしている。
目玉は遠くの壁にぶつかってからようやくはじけるので汁を被ることはない。
ただし、臭いはどうすることもできないので、臭いのは臭い。
ミハエルのような戦い方が出来ないと、遠距離でつぶす以外に手はないだろう。
――遠距離でやったとしても、臭いはどうにもならないが。
だから二十三階も今いる二十四階も冒険者がいないわけだ。
でもおかげで宝箱に出会えたというところもあるだろう。
そうして暫く歩き続け、やっと宝箱に出会うことができた。
罠がないか鑑定をかける。
---------------------
宝箱:普通
罠:宝箱を開けると毒矢が飛び出す
---------------------
「お、罠があるぞ」
「ほお、どんな罠だ?」
「宝箱開けたら毒矢が飛び出してくる罠らしい。まぁ解除するわ」
「おう、任せた」
俺はかつて開発してあったら罠解除の魔法を宝箱にかける。
宝箱からカチリと音がした。
再度鑑定してみると――
---------------------
宝箱:普通
罠:解除済み
---------------------
となっていた。
「よし、解除できた」
「お、んじゃ、開けるぜ?」
ミハエルの言葉に俺は頷き、ミハエルは宝箱を開けた。
中に入っていたのは宝石のついたネックレスだった。
「お、こりゃいい値段しそうだな?」
そう言いながら俺にネックレスを渡してきた。
それを受け取った俺は鑑定をかけてみる。
---------------------
大きいエメラルドがついたネックレス
状態:良
詳細:ダンジョンから産出された高価なネックレスで銀貨五枚の価値はある
---------------------
「お、銀貨五枚の価値はあるみたいだぞ」
「ほー、いいな。あんまり宝箱自体ねぇみたいだし、見つけたらとってくか」
「そうだな」
宝箱を開けた俺たちは二十五階に向けて移動を開始した。
しかし、チラリと時刻を見るともう十二時を過ぎていた。
「あ、ミハエル。もう昼過ぎてるから、飯にしようぜ。近くにセーフゾーンがあるみたいだし」
「あいよ、了解」
そうしてセーフゾーンに入ってみると、確かに奥の方の壁から水が湧いていた。
湧き水の下には岩のでっぱりがあり、中央が水受けのようにくぼんでいる。
そこに湧き水がたまっているようだ。
水の側まで行って確認してみたが、普通に人が飲める綺麗な水だった。
セーフゾーンで昼食をとり、少し休憩したあと、再び下の階層に向けて移動を開始した。
お読みいただきありがとうございます。
評価ブクマをして頂けますと喜びます。
修正
・大きいエメラルドがついた首飾り
→大きいエメラルドがついたネックレス




