5 魔法のエネルギー
鼻血事件の翌日、ウードは俺との散歩を自粛するらしい。
何てことだ……。
マリーとも散歩に行くが、彼女は危険だと思ったり、俺に良くないと思う場所には俺が行きたがっても絶対に連れて行ってくれないのだ。
まぁ俺だって、マリーが超絶美人なのは分かっているので、アブナイ場所には行きたいとは言わないのではあるが、その点ウードであればあの見た目なので多少の所であれば行ってくれる。
だが、昨日俺が大興奮して鼻血を噴き出した事で、ウードは自信がなくなったのだそうだ。
参ったな。まだ色々見たいのに……。
とはいえ、暫くは我慢するしかないか。パパが元気になったらまたおねだりしてみよう。
きっと俺が笑顔で行こうと言えば行ってくれるはずだ!
そういえば俺はまだ自分の顔を見たことがないが、まさかとは思うが、パパ似じゃないよな……?
鏡を見るのが若干怖くなったぞ。
とはいえ、まだこの家で鏡を見たことはないので暫くは見なくてすむだろう。
俺はそんな事をつらつらと考えつつ、ベッドの上でゴロゴロしていた。
そうだ。魔法。魔法について考えてみよう。
興奮しすぎてあんまりよく見てはいなかったが、あの少女含め、詠唱をしてはいなかった気がする。
無詠唱ってやつだな! でもこう、ファイアボール!とか叫ぶのカッコイイと思うんだけどな。
でもまぁ、普通に考えたらそんな分かりやすいの叫んだらすぐ対応されるよな。
紅蓮の焔を纏いし我が拳よ……とかの詠唱がないのはまぁ良かったと思うべきか。
さすがにこういう詠唱は恥ずかしくてたまらん。
さて、となると魔法、どうやって使うんだろうか。
いつか小説で見た方法をやってみようか。
まずは魔法のエネルギーを感じてみる!
俺は目を瞑って己の内を感じようとしてみる…………。
…………………………
……………………
………………
…………
……
――分かるわけがない。なんだよ、魔法のエネルギーって。
魔法のない世界で生きてきた俺に分かるわけがなかった。
いやでも、ヒントはあったのだ。
あれだな、少女のかけてくれたヒール。
あの感覚を思い出せ、俺。
少女の手から緑色の光が出て、俺の体を包み込んだ。
――いや、包み込んではいない。妄想を盛った。
そう、緑の光が出て俺の顔面に光が当たったんだ。
そしたら何かがこう、すーっと入ってきたような感じがして、あったかくてぽかぽかしたんだよな。
多分、これだ。すーっと入ってきた物が、所謂魔法エネルギーってやつだな。
あの感覚を体内で探せばいいんだ。
無理な気がすごくするけどやってみないことには始まらん!
――俺は自分の中に意識を集中した。
五分、十分……?どのくらいかは分からない、でも今確かに、――何かを感じた。
あれだ、あれを探せばいける気がする。
更に俺は集中する。
もう少し、もう少しで見つかる、捕まえられる! そう思った瞬間、俺は抱き上げられた。
「ルカどうしたの? うんうん唸って……大丈夫かしら……?」
ああ……後ちょっとだったのに……。
俺はマリーに向かって不機嫌な声を出した。
「あらあら、何か楽しいことをしていたの? ごめんね、ルカ」
少し悲しそうな顔をマリーがする。それを見た俺は慌てて笑顔を浮かべた。
「まんま」
俺の言葉にマリーはぱっと笑顔を見せた。ふぅ危なかったぜ……。
母親といえど、女を泣かせるのは男がすたるってもんだ!
まぁ仕方ない。また一人になった時にでもあの感覚を探すとするか。
とりあえずは腹減ったし、おっぱいをねだろう。
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