37 ゴブリンの巣(前編)
二話更新しています。
36話の一部を修正しました。
俺の手作りリバーシが完成して三日が経った。
カールは最初はリバーシをよく理解していなかったが、今ではある程度一緒に遊べるまでになった。
まぁ小さい子なので途中でとんでもない場所においたりもするが、楽しそうではあるので俺はそれでいい。
カールが楽しければそれでいいのだ。
今日は仕事が休みなので、一日ドップリとカールと遊びたくはあるのだが、そうもいかない。
結局俺はゴブリンを殺したのは一度だけなのだから。
冒険者になるまでにもう少し俺は慣れないといけないだろう。
「母さん、カール、夕方には帰るけど出かけてくるね」
「あら、分かったわ。気を付けてね」
「にーちゃ」
少し涙目で俺に向かって抱っこをせがむカールを見て俺の決心が激しくぐらついた。
それを見ていたマリーがクスリと笑うとカールを抱き上げる。
「いってらっしゃい」
「あうー」
俺に向けて手を伸ばし、涙目なカールを見つつも俺はなんとかその地獄のような辛さを振り切って家を出た。
家を出た俺は大きく溜め息をついてしまう。
しかし俺にはやらねばならないことがあるのだと気持ちを切り替えた。
時刻はまだ朝の八時だ。
夕方になるまではゴブリン討伐をするとしよう。
――街を出た俺は探索魔法でゴブリンを探した。
ゴブリンは木が生い茂っている所であれば大体どこにでもいる。
基本的には三から四匹程度で群れをなして行動しているが、稀にもっと大規模な集団になっている場合もある。
そういった大規模の集団になる場合は必ずゴブリンの上位種が存在する。
ゴブリンは時折生まれた時から上位種であったり、何かの拍子に進化して上位種になったりして、群れを率いて巣を形成したりするのだ。
時間が経てば巣内のゴブリンが増え、当然集団を養うには野生の獣だけでは足りないので人間の住む村の家畜や畑を襲いだす。
それでも足りなくなると、今度は人間も襲いだすのだ。
なのでゴブリンの巣を見つけたらすぐに討伐依頼がなされる。
そんな巣を俺は発見してしまった。
見た感じは新しそうな巣のようだ。
巣の近くに人間の村がないのは幸いではあるのだがこれはこれでまずい。
発見が遅れれば遅れるほどゴブリンの数は増え、簡単に討伐ができなくなってしまう。
ゴブリン自体は下級のモンスターでランク自体はGランクと最底辺ではある。
ゴブリンは動きも素早くないし棍棒を振り回す程度で一匹くらいであれば戦闘訓練をしていない村人でも二人もいれば一応倒すことができる。
三から四匹であっても、村人が十人もいれば一応倒せるだろう。
ただ、その集団が十匹であればFランクとなり、そこに上位種――最下級――が混じればEランクへと跳ね上がる。
例えば、最下級の上位種であるゴブリンソルジャーとメイジ辺りであればそれほどの強さではないが、それの更に上位種ジェネラルやロード、キングとなると、DどころからBにまで跳ね上がることになる。
というのも、上級の上位種がいるということは群れの規模もそれなりに大きくなっているからだ。
キングがいるとなると百匹以上の集団であることが予想されるため、討伐難易度もぐっとあがるのだ。
もちろんキング+キング以下の上位種+普通だとBランクとなるので、Bランクであれば一人で倒せないこともないが、死ぬ危険性は高い。
安全マージンをとるなら二人以上いる方がいいだろう。
そもそも、モンスターのランクと冒険者のランクはイコールとはならない。
冒険者のランクと言ってもピンキリだからだ。
例えばGランクであればFに近いGもいれば、Gの最低ランクだっている。
最低限の目安にはなるが、安全を考えるなら同ランクなら二人から三人でかかるのが一番いい。
一人でも倒せなくはないが、下手をすればあっさりと命を落とすことになる。
――ちなみにダンジョンに限っては階層によるランク分けがあるのでモンスターでのランク分けは意味を為さない。
さて、そんなゴブリンの巣であるが、俺の眼下に見える巣には上位種が一匹――ゴブリンソルジャー――そして普通が十匹といったところだろうか。
偵察に出てるゴブリンや食料をとりに行ってるゴブリンもいる可能性もなくはないが、ミニマップに映る範囲には他にゴブリンはいないので、今巣にいるのが全部だろう。
配置としてはゴブリンソルジャーが一番大きい小屋のような所に座っており、五匹は――四匹の光点が少し小さい気はするが――もう一つの小屋のような中にいて、残りは巣内をうろうろしているようだ。
俺はこの巣の殲滅をすることに決めた。
正直まだ抵抗はある、しかし俺は、あと三年もすれば冒険者になるのだ。
地上に下りた俺は自身にシールドと身体強化をかける。
そして具現化魔法で作ってあったショートソードをアイテムボックスから取り出した。
さすがにサバイバルナイフでは刃渡りが短すぎるゆえだ。
ショートソードの刃渡りは五十センチほどで十歳の俺には少々取り回しづらいが問題はない。
一応朝晩に剣の稽古はしていたので慣れてはいる。
――とはいえ実戦は初めてとなるが。
一度大きく深呼吸をして覚悟を決める。
ぎゅっとショートソードの柄を両手で握りしめ、俺は走り始めた。
一番近くにいたゴブリンに俺は切りかかる。
身体強化と剣に切れ味アップの付与魔法をかけたせいなのか、あっさりと最初の一匹は肩から腰にかけて両断できた。
ゴブリンの緑色の血を浴びながら俺は次のゴブリンに目を向け走り始めた。
さすがに二匹目になるとゴブリンも気づき声をあげる。
「グギャギャギャ!」
ゴブリン語を理解できなくて良かったとしか言いようがないが、そのまま二匹目も横なぎに剣を振りゴブリンの腹を深く切りつける。
切りつけたゴブリンの腹からは臓物が溢れ出す。
俺は吐きそうになるのを必死でこらえ次のゴブリンに目を向ける。
二匹目の声で俺に気づいた普通のゴブリン三匹が、棍棒を振り上げ俺に襲い掛かってきた。
さすがに三匹同時に相手をするのはしんどいので、一匹にバインドをかけた。
急に足をからめとられたゴブリンはそのまま体勢を崩してこける。
そんな倒れたゴブリンに足をとられ、もう一匹がまごついた。
その間に俺は向かってくる一匹と対峙する。
ゴブリンはグギャグギャと声を上げながら俺に向けて棍棒を振るが、俺はその棍棒を剣ではじき、そのままの勢いで袈裟切りにする。
そこまで全力ではなかったので最初の一匹のように両断とはいかなかったが、明らかな致命傷を与えることができた。
しかしそこで一息つくことはできない。
まごついていた一匹がすでにこちらへ向けて走っているからだ。
俺はすぐにそちらへ体を向けて体勢を整える。
ゴブリンが棍棒を振り上げたところで俺は剣を振り下ろした。
しかしゴブリンの棍棒にあたり、棍棒は切断できたが勢いが殺されてゴブリンの肩の骨に当たり止まってしまう。
俺は慌てて剣を引きバックステップをして距離をとった。
今のは明らかに自分のミスだ。
気がせいてしまった。
落ち着け、俺。落ち着いていけば問題なく全部殺せるはずだ。
ゴブリンが取り落とした短くなった棍棒を拾いなおし改めて俺に向けて攻撃をしてきた。
今度は落ち着いてゴブリンの胸に向けて剣を突き刺した。
胸を貫かれたゴブリンは口から血を吐き崩れ落ちた。
若干震える手でゴブリンの胸から剣を引き抜き、荒れる呼吸を整える。
残りは小屋にいる五匹と、未だ何もしてこないゴブリンソルジャー、そしてまだバインドで捕えられているゴブリンのみだ。
大きく息を吸いこみ、心を無理やりにでも落ち着ける。
とりあえずは未だバインドに絡められて暴れているゴブリンを始末しよう。
もがいているゴブリンの近くまでいき、ゴブリンの背から剣を突き立てる。
突き立てた剣を引き抜くと、ゴブリンはビクリと一度震えて動きを止めた。
俺は頭の中で繰り返し、落ち着けと呟く。
死んだゴブリンから目を離し、ゴブリンソルジャーを見た。
通常のゴブリンよりも十センチは大きく、俺と同じ百五十センチはある。
手足は細く、足は短いが逆に手は少し長い、そして腹がぽっこりとでている。
目はギョロリとしていて、鼻は大きく、口は横に裂けて乱杭歯と大きな犬歯を覗かせている。
顔のあちこちにイボのようなものがあり、それがまたひどく醜悪に見せている。
ゴブリンソルジャーは少し太く頑丈そうな棍棒を握り、こちらへと歩いてくる。
小屋にいる五匹も気になるが動かないので一先ずはゴブリンソルジャーに集中しよう。
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