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35 リバーシを作ったらなぜか商売の話しになった

 学校を卒業した翌日、俺はウードの伝手で仕事を開始していた。

 もちろん期間は三年間だけだ。

 雇い主もそれは了承してくれている。


 俺もミハエルもこの三年の間に金を貯めておかねばならないのだ。

 武具は俺が用意するので金銭的にはかなり楽にはなるが、最初は最低ランクから始まるので大した報酬は望めないというのがある。

 暫くはこの街を拠点に冒険者活動をするが、親元でぬくぬくしながら活動をするというのが俺的にはないので、自立するための資金を稼ぐのだ。


 俺を雇ってくれたのは木工職人のバルドゥルさんで、かつて俺が提案してウードと木工職人とで子供用の椅子を作ったのだが、その時の木工職人がこの方だ。

 実に気さくで、ウードとは幼馴染の関係らしい。

 仕事を始める前にウードと共に挨拶に伺った時、豪快に笑いながら親父に似なくて何よりだと言ってウードと殴り合いの喧嘩を繰り広げた方でもある。


 今はウードとの喧嘩の傷跡である青痣を顔に作りながらも、俺に仕事の指導をしてくれている。

 とはいえ、俺は本格的な職人をするわけではないので大したことをするわけではない。

 俺の主な仕事は仕入れなどの品目の整理と管理、後は帳簿などである。

 ただ、暇な時などにこうして簡単な木工技術を教えてくれるのだ。


 俺が今作っているのはリバーシで、別に具現化魔法でいくらでも作れはするが、あれは自分では作れない物だけにしようと一応、思っている。

 なので、せっせと木を削ったりしているのだ。

 それに手作りの方が愛が伝わるはず!


 今は、平ぺったい丸い円形で大体厚さ二ミリ、直径三センチ程の木の石と、縦横四十センチの盤を作っているところだ。

 盤は簡単にすぐ作れはしたのだが、木石を作るのが大変難しい。

 中々綺麗な円にできないのだ。

 今のところ大きさは全て不揃いに出来上がっている。


 とはいえ、これは家でカールと遊ぶための物なので多少歪でも構わないのだが。

 これまでも平ぺったい石なんかを見つけたりしておはじきのようにして遊んでいたのだが、さすがにカールもそれで喜ぶ年齢ではなくなってきた。

 でもお兄ちゃんとしては一緒に遊びたいのでこうして遊べるおもちゃを作っているのだ。

 リバーシならルールも簡単だし、四歳の子供でもできなくはない、はずだ。

 いまいちだったらまた何か考えればいいだけである。


 まぁ、リバーシも突き詰めれば物凄く頭を使う戦略ゲームではあるのだが、簡単に遊ぶ分にはお手軽なのだ。

 そんなことを考えつつ俺が木の石をせっせと作っていると、バルドゥルさんが不思議そうな顔をして見ていた。


「ルカ、ずっと気になってたんだが、そりゃ何作ってんだ? なんか縦横の線を描いた板作ったと思ったら今度はそんな丸っこいの作ってよ」

「ああ、これはリバーシです。弟と遊ぼうと思いまして。でもこの木の石が難しいですね。中々綺麗な円にならないし、大きさが一定になりません」

「ほん? リバーシ?――ああ、そりゃこうするんだよ、ルカ。貸してみな」


 俺が悪戦苦闘していた木の石は見事に同じ厚みの綺麗な円で同じ大きさの物が数個作られた。

 ――さすがは職人である。


「おお、凄い! やはり職人さんは凄いなぁ」

「はっはっはっ! もっと褒めていいんだぞ! なぁ、お前ら!」


 俺の純粋な称賛にバルドゥルさんは豪快に笑い、同じ場所で作業していた他の職人の皆に声をかけた。


「そうっすね!」

「いやーそうやって一々ルカが驚いて褒めてくれるからこっちも気分が上がるんだよなぁ」


 職人の皆さんは口々にそう言って笑みを浮かべてくれる。

 さすがの俺も少し恥ずかしくなり、頬を赤くしてしまった。


「んで、あれだ。なんだっけ? リバーシだっけか。それはどうやって遊ぶんだよ?」


 バルドゥルさんの疑問に、俺は一つ頷いてから答えた。


「ああ、それは――ちょっと待ってくださいね、分かりやすくするために色を塗るので」


 そう言って俺はとりあえず二十個ほどの石の片面を黒く塗りつぶした。

 本来なら白黒にしたいが簡単に説明するだけなので問題ないだろう。

 暫く乾くのを待ってから、バルドゥルさんに説明を始める。

 最初は首を傾げていたバルドゥルさんだったが、何度か俺とやり合ううちに声をあげることになった。


「こりゃ面白ぇな! ルカ、俺にこれの販売権利売ってくれ! もしくは共同販売でもいいぞ!」


 俺が無料でいいと言うと、バルドゥルさんは俺に軽い拳骨を落として俺を(たしな)めた。


「ルカ、それはいけねぇことだ。お前が考えたもんを無料で他人に渡すのは愚か者のすることだ。自分の知識や技術にはそれなりの対価を求めなきゃなんねぇ。まぁお前は賢い子だ、分かってくれんな?」


 俺は大いに反省をした。

 確かにリバーシなんて前世であったものだし、俺が考えた物ではない。

 だから俺は気軽に無料でいいなどと言ったが、その記憶だって今は俺の財産ということなのだ。

 職人が己の技術で作り上げた作品を無料でふるまうなんてことは絶対にないし、してはいけない。

 俺のは自分の技術というわけではないが、記憶はいわば、職人の技術と同等の価値ということだ。


「はい、すみません……」


 俺の言葉にバルドゥルさんはニッと笑うと、俺の頭をわしゃわしゃと撫でて商談を開始した。


「さて、そんじゃ商談といこうか、ルカ」

「はい!」


 バルドゥルさんは俺に対して二つの提示をした。

 俺のこのリバーシというゲームの製作販売権利をバルドゥルさんに売ること、もう一つは共同販売という形で、毎月、売れた分の二割を俺の利益として計算し、それを毎月俺に支払う方法。


 前者は権利を売るので、俺は最初の権利分のお金のみで後は稼ぎには関わらないというもの。

 後者は、売れた分のうち二割だけ俺の取り分になるというもの。

 二割なのは、資材や製作自体はバルドゥルさんたち職人さんが手掛け、販売は別の人が行うからだ。

 とはいえ、そのうち真似されるのでそこまで長期の売り上げは見込めないだろうということだ。

 この世界では著作権など、製作者が作った物を保護してくれる制度などはないのである。

 ――もちろん複雑な工程が必要な物なら秘匿して守ったり、貴族や国が自身の儲けのために保護したりはあるが。

 まぁ、俺としてはどちらでもいいといえばいいのだが、それでももう少し詳しく聞くべきだろう。


「確認したいことがいくつかあるのですが、構いませんか?」


 俺の言葉にバルドゥルさんはニヤリと笑う。


「おう、俺の提示だけで安易に決めなかったな。いいぞ、ルカ」


 どうやらバルドゥルさんは俺を試していたらしい。

 もし俺がバルドゥルさんの提示で決めていたらきっとまた叱られていただろう。

 職人さんなのにこういった商売方面も得意なのか。凄い人だ。


「ありがとうございます。それで確認したい点ですが、まずは幾らで販売しようと考えていますか?」


俺は板とペンを用意して話をし始めた。


「ふむ、そうだな……。まぁすぐ真似されちまうだろうが、それでもそれなりに稼げそうだからな、大銅貨五枚ってとこか」

「販売に際してはどのような形態で売り出す予定ですか?」

「俺の知り合いに商人がいる。その商人とは以前ウードと合作で作った子供椅子あっただろ? あれを売った時に手を組んだやつでな。その時の伝手であいつはかなり広範囲に販売することができるんだ」

「どのくらいの規模ですか?」

「少なくとも、この領地にある街には伝手があるし、子供椅子のお蔭でこの領地以外にも足は広がってるみてーだな」

「凄いですね。 では、権利販売だと俺にいくら払うつもりですか?」

「そうだな…………まぁ金貨二枚ってとこだな」

「なるほど。少し考えさせてもらっても?」

「おう、いいぞ。俺はちょっと仕事やってくっから、悩んどけ」

「はい」


 そうして俺は考える時間を貰った。

 正直権利販売の額にはかなり驚いている。

 金貨二枚ということは二百万だ、それだけの価値をリバーシに見出したということである。


 とりあえず前者であれば確実に金貨二枚を手に入れることができるわけだ。

 が、後者の場合はそれ以上も、それ以下にもなることになる。

 この街の人口が約八千人いるが、買うのは精々千人もいればいいとこだろう。

 販売額が一つで大銅貨五枚で売るということは、千人が買えば金貨五枚の売り上げになる。

 その二割だと金貨一枚を貰えるわけだ。


 これだけを考えれば前者の方がいい気もするが、販売者である商人は前回の子供椅子で実績を積んでおり、広く伝手があるということになる。

 仮にこの街と同規模の街三つで販売して、同程度売れれば俺の利益は金貨三枚となり、前者の報酬を上回ることになる。

 ――単純計算なのでそううまくいくわけではないだろうが。


 このシュルプは一般的な都市で言えば人口八千人だと中の上の規模と言える。

 領主が住む街は人口は一万を超えているはずだ。

 そして領主が治める領地内には、領主の住む首都と、シュルプと同等の街が一つ、シュルプより小さい人口三千から五千人の街が八個、あとは小さな村などがたくさんある。


 街だけを考えても、シュルプとシュルプと同等の街と首都だけで俺には大体金貨三枚から四枚が手に入り、さらに小さい街も入れれば、上手くいけば、多くて金貨九枚から十枚が手に入ることになる。

 ただバルドゥルさん曰く、この領地外にも足を延ばしていることから売り上げはもっと見込めるかもしれない。


 まぁ、仮に売れなくて権利だけの方が良かったとしても、俺にとってはどちらでもあぶく銭に近いものはあるので、それなら後者を選んでも面白いかもしれない。


 俺は仕事から戻ってきたバルドゥルさんに理由を軽く説明して後者――売り上げの二割を取得する――を選択することを告げた。

 バルドゥルさんは俺の回答に満足したのかニヤリと笑うと俺の頭をワシャワシャと撫でた。

 バルドゥルさん的に正解の答えだったようだ。


 その後しっかりとした高級紙で契約を交わし、仕事を終えて帰宅した。

お読みいただきありがとうございます。

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大幅に修正 

・権利販売の価格を金貨五枚から二枚に変更しました。


・この街の人口が約八千人いるが、買うのは精々三千人もいればいいとこだろう。

三千人を千人に変更しました。


・日本円表記を一部を除き省きました。


・二千人だとしても金貨二枚は貰える。

上記文章を削除しました。


・二千人×三つの街でも利益は金貨六枚で、やはり上回る。

上記文章を削除しました。


・ 街だけを考えてどこも約四割程度が買うとしても、シュルプとシュルプと同等の街と首都だけで俺には最大で大金貨一枚が手に入り、さらに小さい街は平均して千人としても、金貨八枚が手に入ることになる。

上記文章を以下に変更しました。

街だけを考えても、シュルプとシュルプと同等の街と首都だけで俺には大体金貨三枚から四枚が手に入り、さらに小さい街も入れれば、上手くいけば、多くて金貨九枚から十枚が手に入ることになる。

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闇の世界の住人達

前作になります。まだ連載中ですが、すでに最後まで書き終えています。

もし良かったら↑のリンクから見てみて下さい。

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