16 ただいま!
ストックが溜まり過ぎた為、本日も2話更新しています。
町へ帰ってきた俺は裏路地に下りてから周囲に人がいないのを確認して魔法をすべて解除した。
とりあえずはさっさと家に戻ろう。
もう太陽が結構真上に出てるので昼をちょっと過ぎてるかもしれない。
裏路地から出た俺は大通りを通って我が家を目指した。
途中で見つけた猫じゃらし草をなんとなく引き抜いてぷらぷらと揺らしながら歩く。
なんとなく獣人さんを見つつ歩いていると、時折こちらをチラチラ見る目があった。
なんだろう?と思って見ていると、こちらを見てる獣人は全員猫さんだ!
俺じゃなくて、俺の持ってる魅惑の猫じゃらし草を見ているのだな。
飛びつくほどではないが、やはりこういうのは猫の獣人さんは気になるんだな。
俺は上機嫌に猫じゃらし草を揺らしながら歩いた。
家が見えてくると、玄関の前にマリーが立ってキョロキョロとしていた。
俺は笑みを浮かべて走り出した。
「ママー!」
俺の声で振り向いたマリーが笑みを浮かべてしゃがみ、俺に向けておいでと手を開いている。
俺はそのままマリーの胸に飛び込みしがみついた。
マリーは俺をぎゅっと抱きしめる。
「おかえり、ルカ。お昼を過ぎても帰らないからママちょっと心配したのよ」
「ごめんなさい。楽しかったから」
「いいの、無事に帰ってくれてママ嬉しいわ。さぁおうちに入ろうね」
「うん」
俺は少しだけ前世の母を思い出していた。
俺が小さい頃はこうして母はよく家の前で俺の幼稚園からの帰りを待っていた。
親父がうるさくて、母は俺を幼稚園にお迎えには来れなかったから、せめて、と家の前で待っててくれたんだよな。
でも、本当は他の子みたいに迎えに来てほしかったなぁ……。
俺はマリーに抱っこされながらそんなことを思い出していた。
家に入った俺は手を洗い、お昼ご飯を食べることになった。
マリーが野菜の炒めた物とスープ、パンを出してくれる。
正直に言うと、慣れたけどぶっちゃけ美味しくない。
味が驚くほど単調で代わり映えしない。
ああ、前世はなんと驚く程豊かな食生活だったか……。
それでもこれしか食うもんがないので食べる。
そんな俺をマリーはニコニコしながら見ている。
「今日はどんなことをしたの? ルカ」
マリーの質問に俺は飯を食いながら考える。
デーモンスパイダーをぶち殺して村人さんを助けました! なんて言えるはずもなく……。
俺は当たり障りない発言をする。
「あのねー、獣人のおねーさんに手を振ったりねー、あとはー、六本足の変な生き物を見たりねー、色々したんだー」
「そう。楽しかった?」
「うん!!」
本当は町の外まで出てブイブイいわせたわけだが、楽しかったかと言われればそりゃもう楽しかった!
魔法の研究もまだまだ足りないしな。
次はゴブリン相手に闇魔法を使ってみたい。
殺すのはちょっと無理かもしれないけど……。
でもここで生きていくんだしいつかは殺せるようにならないとな……。
飯を食い終えた俺は自室に戻ってお昼寝タイムである。
本当は魔法の研究をしたいのだが、マリーは俺を抱っこしてゆらゆらし、子守歌を歌い始めた。
俺はこれを聞くとどうにも眠気が来る。
ママの子守歌は絶大なのだ。
俺はマリーの歌声を聞きながら、段々と意識を薄れさせていく。
「おやすみ、ルカ。愛してるわ」
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