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113 魔法の指輪

 リリーやカールとの楽しい時間を過ごしたあと、俺は宿屋へと帰った。

 いつもの席にいつものようにみんながいたので俺も腰かける。


 食事をとりながら俺は今日ギルドマスターに聞いた話をする。


「――というわけで、俺の武器が完成するまでは六十四階で皮集めで、皮が足りなくても、武器ができたら一度クレンベルの街へ行ってみようかと思う」

「はいです」

「そうね。いい職人さんがいるといいのだけど」

「だな。しかし依頼以外で遠くに行くのは初めてだなー」

「はは。確かにな」


 食事を終えて少し休憩したあと、裏庭へ行き、俺とフィーネ対ミハエルで軽く打ち合いをする。

 最近は次の日に影響がでなさそうな限りは、こうしてミハエルと訓練することにしている。


「ハァハァ……しんど」

「ふぅ」

「うし、お疲れ」


 日に日にミハエルが強くなっていってる気がするのは気のせいだろうか。

 ああ、疲れた。

 ミハエルはもう少し訓練するらしいので、俺は風呂にいくことにした。


 風呂場にいくとどうやら今日は人がいないようだ。

 風呂場に入り、体などを洗ってから湯舟に浸かる。


「あー……」


 自分でもおっさんくさいと思いはするが、風呂につかったときは大体こんな声がでてしまう。

 ミハエルなんかはあまり湯に長く浸かるのは好きじゃないようでさっさと出ていってしまうが、俺はゆっくり浸かるのが好きだ。


 風呂から出た俺は部屋へと戻りゆっくりしたあとベッドに潜り込む。

 明日は六十階でやって、物足りなければ次の階にいってみよう。




 翌日、朝食を終えた俺はダンジョンへと向かった。

 ダンジョン管理所の受付で入場タグを渡し中へと入る。


 転移柱に触れて六十階へと飛んび、ミニマップを確認したが人はいないようだ。

 剣術強化はかけっぱなしなので、身体強化だけかけておく。


 レオンとやったときは、身体強化に動体視力強化、反射速度向上、反応速度向上、筋力強化、思考加速なんかもかけたので、頭は痛いし筋肉はブチブチちぎれるしで本当に死ぬ思いだった。

 リジェネで回復はしていたが、あんなのをずっとやっていたら確実によろしくない。

 なので、次レオンとやるときは身体強化と動体視力強化以外はかけたくないのだ。

 だからこそ、早く剣術強化の経験値をためないといけない。


 ちなみに予想ではあるのだが、剣術強化を解除してかけなおしても多分ではあるが経験値はリセットされていない。

 というか魔法のスキル自体にたまっているといえばいいのか?

 まぁ、ゲーム的に言えば、魔法のスキルレベルがあがっていってるようなものだな。


 敵を倒せば経験値が貯まるというわけではなく、使えば使うだけ貯まるという感じだろう。

 ――とはいえ、可視化して見えるわけではないのでわからないが。


 そんなことを考えつつも、ケルベロスのブレスに対しシールドを張り、他のケルベロスの頭部にジャベリンを突き刺す。

 すぐにその場を離れ、シールドを上下に張ってブレスと前足による引っ搔きを防ぐ。

 アダマンタイトの剣でケルベロスの前足を切りつけ切断し、体勢を崩したケルベロスの頭部に連続してジャベリンを撃ち込み倒す。


 最後に残ったケルベロスのブレスを防いだあとはジャベリンを頭部に撃ち込み倒してしまう。


「うーん、四匹だと微妙に少ないよな。次の階層にいくか」


 俺は飛行魔法と光学迷彩をかけ、空中に上がると六十一階へ向けて飛んだ。


 六十一階についた俺は光学迷彩と飛行魔法を解除した。


「お? まじか。宝箱あるじゃないか」


 ミニマップをみると黄色く光る光点があった。

 まさかソロのときに宝箱を見つけるとは思わなかった。

 スルーする意味はないので狩りをしつつそちらへ向かうことにした。


 オーラバーンを撃ち、シールドを右側に二枚張り、孤立したケルベロスにジャベリンを撃ち込む。

 四匹かたまっているところにアイスゾイレを発動する。

 直径三メートルほどの範囲に床から氷の剣山が飛び出す。

 三匹が串刺しになって消える。


 うん、新しく作った範囲魔法だけど色々と使えそうだ。

 ま、ソロのときに使うのは訓練にはならないからダメだな。

 弱ればいいなと思っただけだったが、まさか死ぬとは。

 アイスゾイレは五秒ほどしたらパキンと音を立てて姿を消した。


 そうして狩りをしつつ宝箱へと向かう。

 昼が過ぎたあたりでやっと宝箱へとたどりつけた。


 至って普通の宝箱ではあるが、鑑定しても特に罠はないので蓋をあける。

 蓋を開けた中には、指輪が一つ入っていた。

 売り物にするには宝石もついていないのでとりあえず鑑定してみる。

 ---------------------

 魔法の指輪

 状態:良

 詳細:魔法威力向上(小) 移動速度上昇(小)

 ---------------------

 お、中々にいいな。


 エルナのローブほどの性能ではないようだが、指輪だけでこれならばかなりいい物だ。

 俺は指輪をつけてみる。

 エルナのローブもそうだったが、マジックアイテム系は装備すると装着者のサイズに合わせて変化するらしい。


 実際エルナのローブもエルナが着たらピッタリのサイズになっていたし、この指輪も少し大きかったのに装備したらピッタリのサイズになった。

 なんとも便利である。


 それにしてもあのローブにしろこの指輪にしろ、どういう仕組みなのだろうか。

 一度指輪をはずしてじっくりと見てみるが、特に何かがありそうな気もしない。


 だがダンジョンが作っているのならば人の手でも作れるはずなのだ。

 ローブでは試さなかったが、この指輪は具現化魔法で作れるだろうか。


 そう思って作ろうとしたが、視界の隅にあるミニマップに赤い光点たちがこちらへ移動してきているのを確認してしまった。

 作るのはあとにして狩りの続きといこう。

 指輪を嵌めなおし、俺は赤い光点に向かって歩き出した。



 夕方近くまで狩り兼、訓練を終えた俺はダンジョンから脱出した。

 受付で入場タグを受け取りダンジョン管理所を出る。


 一旦宿屋の自室へと戻った俺はソファーに座ると指輪をはずした。


「さて、試してみるか」


 そう言ってから頭の中で今持っている指輪を強くイメージする。

 付与されているスキルも含めて、だ。


 なんとなくうまくいかない気はしたが、指輪は一応できた。

 俺は自身で作った指輪を鑑定してみる。

 ---------------------

 壊れた魔法の指輪

 状態:悪

 詳細:魔術回路が壊れていて機能しなくなった指輪。価値はない。

 ---------------------

 魔術回路?

 この指輪のどこにそんなものが……。


「ふむ、魔力を流せばわかるか? 試してみるか」


 指輪を見つめながらゆっくり魔力を流してみた。

 すると、指輪の内側が薄っすら青く光った。

 それをじっくり見ると、内側に何やら細かい紋様のようなものが描かれており、それは途中でプッツリと切れている。


「もしかして、これが魔術回路か?」


 俺は作った指輪ではなく、宝箱から出た指輪をはずして魔力をそっと流してみた。

 先ほどの俺の作った指輪とは違い、指輪の内側全ての細かい紋様が青く光った。


 ちょうど壊れていた部分は複雑な描かれ方をしており、それを確認してから再度指輪を作ってみたがそれは同じ部分で途切れてしまいどうやら具現化魔法では作れないらしい。


「まぁ、そううまくいくわけもないか」


 とはいえ、魔術回路についてはもう少し知りたいな。

 俺はスマフォを発動させ、魔術回路について調べた。


 魔術回路は錬金術で使うもので、魔封じの腕輪なども魔術回路が描かれて作られているらしい。

 簡単なものから複雑なものまであるが、錬金術師は基本的にその技を秘匿し公開はしないそうだ。


 確かに金になるのだろうが、秘匿するから錬金術が発展しないのだろうな、とも思う。

 ただ、最近は錬金術に力をいれている国などが養成学校のようなものを作って育成に力をいれているところもあるようだ。

 ――この国では学校はないようではあるが。


 いつか魔封じではなく無害な魔力に変換して放出する腕輪を作りたい。

 そうすればもっと生きられる子が増えるはずだ。


 魔封じの腕輪はいつ作られたのだろうか。

 もしその製作者が生きているなら……。


 スマフォで調べてみたが、その望みは薄かった。

 魔封じの腕輪が作られたのは今から八十年ほど前。

 当時四十歳だったゴットロープという錬金術に人生を捧げていた人物が作り出したらしい。

 その魔術回路は複雑で、コピーはできるが、未だそれを理解できている人はいない、と書かれていた。


 ただ、その一人息子が錬金術に長けていた、ともある。

 が、スマフォではそれ以上を調べることはできなかった。

 スマフォも万能ではないということだな。


 いずれにしろいつか錬金術、というか魔術回路について調べるか習うかしないといけないだろう。

 俺は大きく息をついてスマフォを消し、指輪を嵌めなおした。


 どちらにしろ今の俺にできることは少ない。

 それでも情報を集められるだけは集めておくべきだろう。


 俺は立ち上がると宿屋の食堂に向けて移動をはじめた。


 明日からは皮集めの日々になる。

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闇の世界の住人達

前作になります。まだ連載中ですが、すでに最後まで書き終えています。

もし良かったら↑のリンクから見てみて下さい。

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