103 武器の製作
「その弓は俺が作ったものです。もし、良ければですが、弓を作りましょうか?」
俺のそんな言葉に弓使いの人はとても驚いた顔をした。
「え? どういうことだ? 作った?」
「ええ、俺には具現化魔法っていう魔法がありまして――」
俺は具現化魔法について説明する。
俺はフィーネに断りをいれてから一度フィーネの弓を弓使いの人に使ってもらった。
初めて使うだろう刃つきの弓だというのに、まるで長年使っていたかのように演武をする。
ただ、やはりどう見てもフィーネに作った弓では小さすぎるようだ。
弓も引き絞るのが大変そうだし、彼の身長や手の長さに合っていなさすぎる。
俺はそれを見てから、まだ体はまともに動かせないが頭の中に浮かぶイメージ通りに弓を作り上げる。
手も長いし、男性なので大きくても扱えるだろう。
弓の長さは彼の身長より少し短いくらいの長さで、緩やかなM字の形にした。
そして、弓自体を金属とカーボンで構成する。
友人がアーチェリー部だったからそのときに色々と触らせてもらったり教えてもらってたのが今すごく役立っているな。
――とはいえ、すべて同じではないけども。
粘りとしなやかさと軽さを持つカーボンで弓本体を作り、持ち手付近と弦を張る部分をミスリルで覆う。
緩やかなM字の山部分にはフィーネの弓と同じアダマンタイトの刃をつける。
当然、フィーネと同じく、剣の刃ではなくどちらかというと刀で、刃は弦側ではなく、逆側に向いているものだ。
山部分が緩やかなので、そこにカバーをつけていて、それをスライドさせれば刃を覆えるようになっている。
この部分は今思いついたので、フィーネの弓を新しくするときにつけよう。
弦は普通のものよりも強度のあるものにしている。
フィーネの木製の弓と違い、カーボンとミスリル製なので弦もしっかりしたものにしないと強度がもたないはずだ。
そこまでイメージしてから弓を具現化していく。
具現化したところでさすがに今の俺には重すぎて自身の足の上に置く形になってしまった。
固定化魔法をかけてから弓使いの人に声をかける。
「すみません、俺はちょっと持ち上げる力が今ないのでとってもらえますか」
「あ、ああ。ありがとう、えっと使ってみてもいいのか?」
「ええ、使い心地を教えて頂けますと助かります」
「ああ、いや、ありがとう、ちょっと使ってみるわ」
使い方はこれまでの弓と少し違うので、俺は分かる範囲で彼に扱い方を伝えた。
あとは彼自身がすぐにコツをつかむことだろう。
弓使いの人は何度か弦を引き絞って感覚を掴んでから、矢をあてがい弦を引き絞った。
ギリギリと弦が引かれ、放たれた瞬間、ヒュンと軽い音と共に矢がすごい速さで飛び出し、闘技場の壁にガンという大きな音を立てて当たり矢が砕けた。
若干驚いたが、そういえば闘技場には遺跡から出た結界が張ってあるというのを忘れていた。
「これは……すごいな……。今まで俺が使ってた弓はなんだったんだ……」
「どうですか? 重すぎませんか? 男性だし腕も長いし、いけるかなと思ったんですが……」
「ああ、いや、本当にすごいよ! 確かに刃が重いが弓自体は軽い。普通の弓とバランスは違うがこれも慣れでどうとでもなる。弦を引くのにかなり力がいるが、それは俺がもう少し筋肉をつければいいだけだしな。いや、本当に、俺がこれまで使ってた弓はなんだったんだと思うほどにすごいよ。ああ、この弓を問題なく自然と扱えるようになれば、俺はまた強くなれる。レオン、俺はまだ強くなれるぞ」
「おめーは前からつえーだろ。でも今以上に強くなれんなら、俺の相手しろよ」
「ああ、喜んでお前の相手をするさ」
弓使いの人が嬉しそうな笑みを浮かべ、それを見たレオンも笑みを浮かべていた。
ただ、矢が問題だった。やはり今の弓に対して矢が弱い。
普通の木製の矢だから当然ではあるのだが。
彼に聞いたところ、今のは安い鉄の鏃の矢だが、いつも使っているのは鏃がミスリルらしい。
それでも、鏃が違うだけでその他は普通の矢と変わらないそうだ。
そこで俺はどうせなら、と矢も作ってしまうことにした。
フィーネには魔法の矢があるので作らなかったのだが、まぁ、彼ならAランクだし特殊な弓と矢をもっていたところで変に思われることもないだろう。
そこで俺は彼に魔法の袋をもっているか、余裕があるかを聞いてみた。
「ん?ああ、持っているし、容量はあるが、それがどうかしたか?」
「矢も作りますよ。そこそこの数を作るので、持てない分は袋にしまっておいてください」
俺がそういうと弓使いの人にはとても感謝された。
ただ、弓も矢も特殊な素材で作るので、いざという時のためにこれまでの弓と矢も予備でもっているように勧めておいた。
「ああ、そうするよ。この弓を使ったあとだとちょっと寂しいが、予備がないと怖いからな」
そう言って苦笑している。
まぁそうそう壊れはしないと思うが、いつ何があるかわからないのだ。
そうして矢も百本近く作り渡した。
鏃はアダマンタイトにした。
少し矢が重くなるし、バランスも変わるだろうが、それ以上に弓の威力があるので訓練すれば問題はないはずだ。
これだけあれば多少矢が壊れても問題ないだろう。
そうして次に槍の人に声をかけた。
今使っている槍は普通のよく見かける棒の先に突きに特化した穂先をつけた槍だ。
なので、俺は両刃槍を提案した。
両刃ではないが、それと同じなのでどうしても槍が長くなってしまうが、彼は背も高く、引き締まった筋肉もしっかりとついている。
それにパッシブ魔法も槍術系なのできっとすぐに扱えるようになるだろう。
彼も努力を続ければいつかレオンと並ぶ日がくるだろう。
「俺にもいいのか?」
「ええ」
「ありがとう」
彼は俺に対して深く頭を下げる。
俺は少し慌ててしまった。
レオンと違って年上の人に頭を下げられるとちょっと困ってしまう。
そんな一幕がありつつも俺は槍を作り上げた。
片方は突きに特化した穂先で、もう片方は両刃の切ることに特化した穂先だ。
――両刃なのは彼が片刃よりも両刃の方が扱いやすいと言ったためである。
こうすることで途切れることなく攻撃を続けることが可能になるはずだ。
槍を受け取り、彼は俺に礼を言うとそのまま演武をはじめた。
突き刺し、引き抜いた勢いで切りつける。
切り払いそのまま回転して突き刺し、また引き抜いた勢いで切る。
うん、見事だ。
初めての武器に関わらず美しい舞を踊る。
さすがAランクというとこだろう。
ここまで習熟が速いということは相当訓練していて槍術のパッシブの経験値が上がっているのだろうな。
そして俺は最後に鈍器と盾を持った人にも武器を渡した。
彼がこれまで持っていたのは、普通の刃がないタイプのただの鈍器といえるものだった。
俺はそうではなく、片側がハンマー、逆側は斧の片刃にした。
打撃に弱い敵にも、強い敵にもこれで対応ができるはずだ。
ついでに盾も作った。
ちょっと特殊ではあるが、内側の持ち手部分の仕掛けをいじることで盾の縁から刃が飛び出す仕組みになっている。
縁に沿ってアダマンタイトの刃が出るので、仕掛けを使わなければ普通の盾としても使えるし、仕掛けを作動させて盾の縁で攻撃することで相手を切ることも可能になる。
もちろんタンカーである人の盾が弱くては意味がないので、少し重くなるが盾の中心から上部分、攻撃を受け止める場所のアダマンタイトを厚めにして、あとは薄くコーティングをした。
これもまぁ、漫画でみた盾だ。
カッコイイと思って覚えていたのだ。
若いころのいい思い出でもある。
父親には恵まれなかったが、友人には恵まれていたおかげだな。
盾の人は驚いていたが、確かにこの武器も盾もいいものだと喜んでもらえた。
「エアハルトさんは武器は、その杖ですか?」
彼が持っていたのは節のねじくれた魔法使いが持っていそうな木の杖だ。
「ああ、そうだね。ルカ君の言う、イメージからかな。でも一応、これも持ってはいるんだよ」
そう言って取り出したのはミスリルの短剣だった。
「正直杖よりこちらを使う方が多いね。ミスリルは魔力と親和性が高いから魔法を撃つときにあるとないでは結構変わってくるんだよ」
「そうなんですか。少しお借りしても?」
「ああ、かまわないよ、どうぞ」
「ありがとうございます」
俺は初めてのミスリル製の武器を手にした。
自身の剣はウードに打ってもらうつもりではあるのだが、それがいつになるかは分からないのでこれはありがたい。
もしこれを使って発動速度に問題なく威力があがるならエルナにも用意したい。
ミスリルの短剣をじっくりと見回し、触り確かめる。
そして魔力を流してみて驚く。
予想以上に通りがいい。
アダマンタイトは魔力との親和性が悪い、というか、魔力を通さない。
だからこそ魔法を切り裂くこともできるし、弾くこともできるのだ。
俺はミスリルの短剣の先から魔法がでるイメージでファイアボールを撃ちだしてみた。
いつも俺が発動する速度より若干遅いが、それでも威力はあがっている。
ミスリルの短剣では発動速度は落ちるが、威力はそれなりに変化があった。
「ありがとうございます」
お礼を言ってエアハルトさんに短剣を返した。
ミスリルを知れた俺はイメージをはじめる。
短剣だと結局持ち手は鉄なのだ。
どうしてもその部分で通りが悪く遅くなる。
ならばすべてをミスリルにしよう。
だけどエアハルトさんは基本的な概念がある。
短剣の方がいいと感じてはいるが、根本的には杖の形の方がイメージがあがるだろう。
ならば基本は杖の形にしよう。
だが長い杖は取り回しがよくない。
短い杖、四十センチくらいの長さがいい。
持ち手部分はねじれた感じで、杖の下側は鋭利に尖らせてエストックのように突けるようにする。
杖の上部、頭側は鈍器のような五角形の形にする。
丸っこい、いかにもな形でもいいが、殴って確実にダメージを与えれる方がいいだろう。
もちろん手が滑っても大丈夫なようにどちら側にも鍔の代わりとなる凹凸を作ってある。
――まぁ滑らないように持ち手をねじれさせたのだが。
「エアハルトさん、こちらを使ってみてください」
そう言って俺はできあがった短めの杖を差し出した。
エアハルトさんはすでに目の前で俺が何個も武器を作っているので慣れているはずだけど、やっぱり驚いていた。
「何度みてもすごいね」
俺としてはなんとも返事に困るので、苦笑するしかできない。
エアハルトさんは杖を受け取ると人のいない方に向かって普段よく使っているであろう魔法を撃った。
魔法を撃ったエアハルトさんは目を見開いて驚いている。
「どうですか?使ったことがないのでなんともなんですが」
「ルカ君、これはすごいよ。君も一番慣れている魔法を撃ってみるといい」
そう言われて俺もミスリルの杖を受け取って魔法を発動してみた。
発動の速さに俺は驚いた。
せいぜい俺の発動速度と同等になるかと思ったが、明らかに速い。
それでも、コンマ数秒の違いではあるのだが、俺たち魔法使いにとってはかなり大きい違いだ。
「エルナ、君も撃ってみるといい」
俺はエルナを呼んで魔法を撃つように促した。
エルナはミスリルの杖を受け取ると魔法を発動した。
「わっ すごいですね! いつもより発動がとても速いし、威力も強くなっています!」
「ああ、俺もさっき撃ってみて驚いた。エルナには少し大きいからあとでもう少し短い杖を作るよ」
「はい! ありがとうございます!」
俺に杖を返したエルナは笑みを浮かべてフィーネのところへ戻っていった。
俺はエアハルトさんに杖を返した。
「ありがとう。彼女もすごいね。君ほどの魔力量はないみたいだけど、それでもすごい量だ」
「そうですね、本来であれば俺も彼女も爆散して死ぬはずでしたから」
俺の言葉にエアハルトさんは疑問を浮かべていたので、俺は簡単ではあるが理由を説明した。
「なるほど。そういうことか。私は感知しかできないから、体内の魔力の塊というのは感じ取れないな。少し残念だね」
そう言って苦笑する。
「そうですね、俺が外から揺さぶれるならするんですが、魔力はつかめても塊はどうも本人にしか気づけないようで。すみません」
これについては一度ミハエルに許可を貰い魔力の塊を探したので事実だ。
誰しも基本的には体内に魔力の塊を持ってはいるはずなのだ。
今まで魔力を持たない人間を見たことがないので、確実だと思う。
というのも、俺が幼い頃に魔力の塊を追っていたときに気づいたのだが、魔力の塊から魔力が生まれていたからだ。
魔力の塊があるうちは、魔力だけが塊以外から生まれることはなかった。
――塊に触れたあとはどこからかぼこぼこ魔力が湧いているけども。
「いやいや、それは仕方ないことだよ。でもそうか、爆散して死ぬ子供たちはみんな、その魔力の塊に触れてしまった子なんだね……」
「多分そうだと思います。可能なら助けたくはあるのですが、今のところどうすればいいのかはわかりません」
「そうだね、直接ルカ君が手掛けないといけないとなると難しいところだね」
「ええ……」
いずれは俺やエルナのように爆散せずに生きていけるようにしてあげたい。
だが、今はまだその方法が思いつかないのだ。
「私は特に何かできるということはないと思うけれど、聞くことだけはできるから。いつでも話て」
「はい、ありがとうございます」
「うん、これ、大事に使わせてもらうよ、ありがとう」
そうしてエアハルトさんと話していると、レオンが割り込んできた。
「もういいか? つかルカ、俺も作ってくれよ」
「レオンはその大剣でいいだろ」
「なんだよー、あいつらには色々作ったじゃねぇか」
「さすがに大剣は俺はその形状以外だとあんまり思い浮かばないぞ」
「どんなのだよ?」
レオンが我儘を言うので仕方なくミニチュアで何個かデザインの違う大剣を作った。
レオンの持っている大剣は本当にシンプルな幅広の剣の形をした大剣だ。
俺が作ったミニチュア大剣は四角い形の大剣と、先端に向けて細くなるレオンの大剣と似た感じのシンプルな二本と、片側がノコ状になっている大剣、両刃がノコ状になっていて先端に向けて細くなっている形と、とりあえず思いつくだけで機能性がある四つを作った。
「俺が思いつくのはこのくらいだな」
「ほお、いいねぇ。シンプルなのからクセのありそうなのまであるじゃねぇか」
「どれか一本作ってやるよ」
「一本だけかよ。二本にしてくれよ」
「あーはいはい。作ってやるから選べよ」
面倒くさくなった俺はそう言った。
エアハルトさんが苦笑しているが特に何か言う気はないらしい。
結局レオンが選んだのはシンプルな二本ではなく、少しクセのある大剣二本だった。
「それでいいのか?」
「おう、クセがある方が予想外の動きができんだろ。それにおもしれぇからな」
子供のように楽しそうな笑みを浮かべるレオンに俺は苦笑してしまう。
「じゃあ作るぞ」
「おう、頼むわ」
俺はイメージ通りに大剣を作っていく。
もちろん持ち手の部分はレオンが愛用している大剣の持ち手と同じにしてある。
作り上げた大剣を見たレオンは嬉しそうな顔をしていた。
――さすがにまだ振り回すほどの体力はないので、見ているだけではあるが。
「あ、でもこれ俺、全部持ち歩けねぇじゃん。おお……どうすっか……」
真剣に悩むレオンにミハエルがニヤニヤ笑いながら声をかけた。
「おまえもルカにアイテムボックス作ってもらえば? 白金貨一枚くらいで作ってくれるぜ」
「は? 白金貨!? つかアイテムボックスってなんだよ」
「便利だぜぇ?」
ニヤニヤと笑いながらミハエルはアイテムボックスについて説明する。
俺は苦笑しながらそれを見ていた。
まぁ別に作るのは何も問題はない。
というかレオンに作るなら全員に作るいい口実になる。
さすがに俺から言い出すのもなんだか調子乗ってる感じで言い出しにくかったんだよな。
「なんだよ! それめっちゃ便利じゃねぇか! くっそたけぇけど、白金貨一枚でそれ作ってくれんのかよ?」
ミハエルが実に楽しそうな笑みを浮かべている。
レオンは気付いていないが、、周囲の人はどうやらミハエルがレオンを揶揄っているのは気づいているようだ。
だが誰もそれを教えようとはせずにちょっとニヤついている。
エアハルトさんも苦笑しながらも楽しそうに見ていた。
みんな実に意地悪なようだ。
「わかったよ、ルカ、支払うから作ってくれよ」
さすがにAランク、白金貨を持っているんだな。
とはいえレオンが可哀そうなので、もういいだろうと、苦笑しつつ俺は言った。
「お金はいらないぞ、それミハエルの嘘だから」
「なんだよ! 嘘かよ! くっそ、ミハエル覚えてろよ!」
「わりーわりー、悪気はあったけど本気で信じるとは思わなくてよ」
「悪気あんじゃねぇか! つか、んなすげぇもんだったらメンバーでもなんでもねぇ相手にならそのくらいとるだろが」
「俺はそこまであくどくないぞ」
レオンが不貞腐れた顔でそっぽをむいてしまった。
俺は苦笑しつつ五個の指輪を作り、アイテムボックスの付与をした。
「レオン、できたぞ」
その声にさっきの不貞腐れた顔はどこへいったのやらと、普通に俺をみた。
「おう、すまねぇな。んあ? 五個? まさかうちのメンバーの分か?」
「ああ、俺から言うのもちょっとあれだしな、ミハエルが言ってくれて助かったってとこだな」
「いいのかい?ルカ君」
エアハルトさんが驚いた顔で見てきた。
「ええ、かまいませんよ。というか、ギルドマスターにも強請られて渡してますしね」
「おう、めちゃくちゃ便利だぞ」
悪びれることなく、笑いながらギルドマスターがそう言った。
「そういうことなので、気にせず受け取ってください」
「そうか、ありがとう。何から何まで本当に助かるよ」
こうして俺とレオンの体力がある程度回復するまでアイテムボックスの使い方などを教えたり、元気なメンバー同士で模擬戦をしたりして時間を過ごした。
『シュラハト』のメンバーとは中々にいい関係を築けたと、そう思う。
きっといずれ彼らはSランクとなるだろう。
それはそう遠い先の話でもないとそんな風に思うのだ。
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