102 戦いの終焉
俺とレオンの間で大きな爆発が起きた。
俺は爆発の瞬間にシールドを一枚だけ張ることができた。
それでもさすがに爆発の強さにシールドはすぐに割れ、俺は吹き飛ばされる。
だけど俺はレオンから視線だけははずさない。
吹き飛ばされるレオンに向け、俺はさらにイラプションを撃ち込んだ。
レオンはさらなるイラプションの爆発にさらされ、闘技場の壁まで吹き飛ぶ。
俺はそれを最後まで見ることなく地面に叩きつけられるように落ちた。
「グッ ガハッ」
肺から空気を押し出される苦しみを感じつつも、俺はすぐにレオンが吹き飛ばされた方へ視線を向ける。
口の端から流れ落ちる血を手の甲で拭いながらも視線は闘技場の土煙が起きている壁付近からはずせない。
さすがの俺ももう限界で、レオンが起きてきたら対応できない。
土煙が薄れた向こう側、煙の中に黒い影が見えた。
「まじかよ……」
ぽつりとそう呟いてしまう。
土煙が晴れたそこには、大剣を地面に突き刺し、肩で息をしている血まみれのレオンがいた。
俺もなんとか起き上がるが、その場から動くのはもう難しい。
リジェネの効果はまだ持続しているし、傷自体はもう治っているが、疲労が限界だった。
アダマンタイト剣を持ち上げることすらできない。
レオンはその場で荒く呼吸を繰り返しつつも俺を睨んでいたが、急に大剣を放り出すとその場に大の字に転がった。
「あー、無理。もう無理。俺の負けだ。体中いってぇ」
そんな声がレオンからあがる。
その直後、観客席からギルドマスターの声があがった。
「勝者、ルカ・ローレンツ!」
その声を聞いた俺も崩れるようにその場に座り込んだ。
なんとか勝てたらしい……。
それを合図にしたかのように、観客席に座っていたそれぞれのメンバーが壁を飛び越えてやってくる。
エルナには無理なのでミハエルが抱きかかえていたけど。
こんな時までイケメンである。おのれ。
それを見た俺はその場にレオンと同じように仰向けに倒れ込んだ。
心底疲れた。
疲れたけど、その疲れが不思議と気持ちいい。
ミハエルが俺のそばにやってきて、ニッと笑みを浮かべた。
「やったな、ルカ」
「おう、ぶっとばしたぞ」
俺はそう言って、震える拳を少しあげた。
ミハエルはしゃがむと、そんな俺の拳に軽く自分の拳を打ち付けた。
「お疲れ様、おめでとう、ルカ」
「ああ、ありがとう、フィーネ」
「おめでとうございます! ルカさん! 凄かったです!」
「ありがとう、エルナ」
少しして俺はなんとか上半身を起こすと、メンバーに肩を貸してもらったレオンがこちらへと向かってきているのが見えた。
レオンは平気そうな顔をしているが、全身血まみれで、あちこちに切り傷や打撲に欠損がある。
回復ポットをかけたようではあるが、深い裂傷や欠損の治癒はできていない。
俺はそんなレオンにグレーターヒールをかけた。
レオンの体が緑色に輝く。
『シュラハト』のメンバー全員が驚いた顔をしていたが、光が収まったあとのレオンをみてさらに驚いていた。
それでもレオンの疲労まで回復できたわけではないので、肩を借りたままではあるが、レオンが驚きの声をあげていた。
「おお? 痛みもなくなったし、腹の穴もあいてねぇぞ?」
ウインドバレットに突っ込んだ時の傷のことだろう。
あの時レオンはウインドバレットに突っ込み、脇腹に穴をあけていたのだ。
考えれば、よくそんな状態で俺と戦いを続けたものである。
そのままレオンは肩を借りたままこちらへ来ると、俺のすぐそばで地面に座り込んだ。
そして、俺に向けて拳を向ける。
俺は自然と力の入らない拳をあげ、それに打ち付けた。
「楽しかったな、ルカ」
「バカ言うな、めちゃくちゃ疲れたわ」
「おう、めちゃくちゃ疲れたし、しんどいし、いてぇし。でもそれ以上にクソ楽しかったな!」
「まぁ……そうだな、楽しかったのは否定しない」
俺もレオンも笑みを浮かべた。
そんなレオンの頭をポカリと叩くのはエアハルトさんだ。
「何すんだよ、エアハルト」
「お前普通にしてるけど、すごい魔法かけてもらったんだぞ」
「何だよ?」
レオンが疑問符を浮かべた顔をしているのをみてエアハルトさんは溜め息をついてから俺を見た。
「あれは回復魔法、だよね?」
「ええ、俺はグレーターヒールと名付けています。効果は部位欠損含む治癒魔法ですね」
「やっぱりか……。すごいね、ルカ君は。それにあの魔法の数々、私が使えそうな魔法はほとんどないのだろうけど、あれを見れただけで私は本当にこの場にいれたことを感謝するよ」
「そうですね、残念ながら俺しか使えない魔法も多々ありますが、エアハルトさんに教えたい魔法は一つありますよ」
「それは何だろう?」
「ジャベリンです。ただ、失礼ながら多分エアハルトさんの魔力量ではそんなに撃てないと思います。だから切り札的な使い方になりますね」
「なるほど、教えてくれと、言いたいところだけど、バレットも安定していないうちから教えてもらっても訓練に支障がでそうだね」
そう言ってエアハルトさんは苦笑した。
さすがAランクになるほどの人だ。
知りたいだろうに、まずはバレットという新しい魔法を安定して撃てるようになることを優先している。
「そうですね、バレットが安定して撃てるようになった時、ジャベリンについて教えたいと思います」
「うん、そうしてもらおうかな。ありがとう、ルカ君。私はまた強くなれそうだ」
俺は座り込んだままではあるが、エアハルトさんと和気あいあいと会話した。
その間、割り込まれたレオンは不貞腐れていたけど。
その後、立ち上がる気力がまだ出なかった俺は、『シュラハト』のメンバーに俺の考察を話た。
パッシブ魔法の経験値のことだ。
というのも、『シュラハト』のメンバーもやはりというかなんというか、それぞれパッシブ魔法を所持していたのだ。
基本的に武器や攻撃に関するパッシブを持っていて、それに見合った武器を所持し、努力を重ねられる人はこうして冒険者として台頭してくるのだろう。
パッシブ魔法がない人はやはりどうしてもDランク、よくてCランクまでがせいぜいとなると思う。
エアハルトさんの魔力感知も、感じ取れるだけとはいえ、感じ取れるということは自身の魔力の残量や、敵がどの程度魔力があるか、発動タイミングなども読めるということだ。
そして感じ取れるならそれに付随して魔法の操作もそれなりにできるはずなのだ。
その感知を鍛えればさらにもっと感知が強化される。
そして、俺の教えた魔法や、既存の魔法もイメージを強く持ち、何度も撃てば経験値がたまって威力や精度も上がってくる、はずだ。
俺のアースバレットも、最初のころは二発かかった敵が一発でよくなったりもしている。
始めは、それがただイメージが固まってきただけと思ったが、今になって思えばそれは魔法の経験値があがっているのだと思う。
あとは強い相手との訓練が一番効果があると、そう思う。
「――なので、レオンと訓練するのが一番自身を強化するのに早いですよ、きっと」
俺の言葉に槍を持った人が呟いた。
「そう、だな。いつまでもレオンに引け目感じてても仕方ないよな。俺は弱い。同じ前衛としてレオンの横に並べないのは正直悔しいし辛い。だからこそ、レオンと、強い相手とやって己を鍛えないといけないよな」
「そうだね、私もレオンが満足できないだろうと打ち合いを避けてきたけど、それが逆に自身の成長を妨げていたのかもしれないね」
エアハルトさんがそう言い、鈍器と盾を持った人も頷く。
「俺もそうだよな。弓だし近接とはやれないなんて言い訳していたが、そこの彼女の弓みて考え直したわ」
そう言う弓使いの人はフィーネの背に背負われた弓を見ていた。
あれは俺が作り上げた刃つきの弓だ。
「その弓は俺が作ったものです。もし、良ければですが、弓を作りましょうか?」
俺のそんな言葉に弓使いの人はとても驚いた顔をした。
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