守りたい、この笑顔。
「ここが最上階か」
せいぜい教室ほどの広さの部屋で、壁際に下に降りる階段がある。
天井はドームのような形をしたガラスで出来ている。
ソファとベットと椅子と、机の上にパソコンのような機械が置いてある。……デスクトップパソコンにしか見えないんだよな。でも、この世界にはそんなもの無いはずだしな……。
床は、フローリング。この部屋だけ明らかに異世界じゃないだろ。俺がいた世界だ。
ちなみにドラゴンはいない。俺だけここに転移したみたいだ。まぁ、この部屋にあのドラゴンは入らないよな……。
「まぁ、とりあえずパソコン弄ってみるか!いいんだよな?俺、このダンジョンの管理人になった訳だし。このダンジョンの中の物は全部俺の管理下にあるって事だしな」
言い訳のような事をいいながら椅子に座り、パソコンの電源を押す。
すぐに立ち上がり、パスワードを打ち込む画面が出る事もなくホーム画面になる。出ているのは、ダンジョン管理というアイコンのみ。試しに開いてみる。すると、ダンジョンの各階層の地図が出てくる。そして横には、出てくる魔物、トラップ、宝等がズラッと記載されている。凄いのは、宝の出る確率まで決められているのだ。この宝は何%、この宝は何%という感じだ。ゲームみたいだ。
画面の上に様々な機能がある。ダンジョン内部中継……クリックすると階層と場所の入力画面がでる。
ーーダンジョンの地図だが、縦横に線が引かれていて、正方形のマスごとに数字が割り振られている。上から2つ目、左から3つ目のマスはB3、上から3つ目の左から1つ目はC1という感じだ。
……さて、頼まれた魔物の強さ調整とかを見てみるか。
試しに誰もいない100階層の魔物の強さを弄ってみる。一覧になっている中から調整したい魔物を選ぶ。すると、その魔物のステータスが出てくるから、その数値を弄れるという感じだ。ふむふむ、試しに全ステータスカンストを……
「出来ないか」
ある程度上げるとそれ以上上がらなくなる。まぁ、制限無く強くなれる訳じゃないということか。
調整って言っても、俺じゃ敵わないような強さの魔物だからなぁ……。
どうしようか、と悩んでいたが、ある事を思いついた。
「これ、俺が戦う魔物をめちゃくちゃ弱くして魔石取り放題じゃね?」
最強の金策が出来るかもしれない。試しにここの1つ下の階層、ラスボスがいる階層の部屋に全ステータス最低にしたハイオークを設置する。俺が行っても、ハイオーク以外湧かないようにも設定した。
意気揚々と階段を降りていくと、重そうな両開きの扉がある。階段を降りたままの速度でその扉を勢い良く押し開けーー
「きゃ!」
扉を開けたところには、1人の美少女が尻餅をついていた。スカートだから、下着が丸見えなんだよなぁ……ごちそうさまです。
「えっと、君は誰?」
「あ、ごめんなさい!私はリュミナ・エルク・D・ソフィです」
「長い名前だな……ソフィでいいか?」
「はい!」
「ありがとう。で、君はここまで攻略して来たの?」
問題はここだ。もし、この子、ソフィがここまでダンジョンを攻略して来ているなら、ラスボスが湧いていないはずだ。俺が止めたからな。
「あ、その、おじいちゃんに魔王が働いているか監視……見守っていろと言われちゃって……」
「おじいちゃんって誰だ?」
「地竜なんだけど優しくてかっこいいの!」
……優しくてかっこいい地竜か。会ってないな。もしかしてこのダンジョン、竜が何体もいるのか?
「会ってないな」
「おじいちゃんが管理室まで魔王を飛ばしたって言っていたよ?」
「……ああ、そうか、優しくてかっこいいはお世辞だったんだな」
だって、ねぇ?ただのでかいトカゲだぜ?日本にも田んぼの近くとかによく居たよ。茶色いトカゲ。あれがでかくなっただけだった。
「おじいちゃんは優しくてかっこいいよ?」
「そうかそうか。なんでおじいちゃんなんだ?」
まぁ、優しくてかっこいいの定義が人それぞれ違う時もある。
「おじいちゃんだからだよ?」
「いや、竜がおじいちゃんな理由だよ」
「私も竜だからだよ」
「……まじかよ」
美少女(竜)だったとはな……異世界、恐るべしだ。
「ま、まぁ分かった。それで、監視って具体的に何を監視するんだ?」
「ダンジョンを悪用させるな!て言われてるの」
「……そ、そうか」
うん、たぶん今俺がやろうとしている事とかをさせない為って事だな。
……バレなきゃ犯罪じゃないという言葉がある。
「早く管理室に行こうぜ!な?」
「うん!」
わぁこの子素直で可愛い。見た感じ10歳くらいかな?恋愛対象というより愛護対象だ。可愛い。撫でたり抱っこしたりしたいな……。
管理室に戻り、すぐに弄った設定を元に戻す。証拠隠滅完了。ばれなければ犯罪ではない!
「よし……あ、俺ってもしかしてこのダンジョン攻略したらいけないのか?」
構造とか見たし、カンニングのような扱いになる。
「大丈夫だよ!だって、魔王弱いもん。攻略できないよ!」
心に刺さる。無邪気な笑顔で毒を吐かないでくれ……。
「ま、まぁ、わかった。今度攻略してみるよ」
話しながらダンジョンの設定を色々と見ていると、スマホみたいな物が通知音を鳴らす。電話のようだ。
「もしもし」
『私』
「……詐欺?」
『お願いがあるの』
「ああうん、ツッコミをスルーするスタイルなのか」
人形少女からの電話だった。まぁそれ以外の人と繋がることが出来るかもわからないけどな。
『ルナダンジョンを攻略して、管理者になって欲しい』
唐突だな……それにルナダンジョンなんて、聞いたことが無い。
「なんで?」
『管理者になったら教える』
「……まぁ、いいけど。その代わり何かしらの武器かスキルか、強くなれる物をくれないか?今の俺だとダンジョン攻略なんて出来ないだろ?」
『考えとく』
適当だなー……考えとくって、政治家の前向きに検討しておきますと同じ意味かな?
「1人で攻略しないでもいいよな?」
『構わない』
自分が強くなれないなら人に頼ればいい。俺にはレスティや血飲みの者、神託の者に強欲の者がいる。
……レスティと血飲みの者だけに声をかけて3人でダンジョン行ったらハーレムじゃないか?美人ハーレム。素晴らしい響きだな。よし、そうしよう。
「任せろ」
言いたいことは言ったのか、通話が切られる。
「魔王、忙しいの?」
「ああ。忙しくなった。ここの管理って、俺も先代魔王もいない間はどうしてたんだ?」
「私が頑張ったの!」
うむ、可愛い。……じゃなくて。
「なら、俺がいない間はまた頑張ってくれるか?」
「いなくなっちゃうの……?」
「すぐ、戻ってくる」
涙目、上目遣いはずるいと思うよ?この子、将来凄い綺麗になりそうだし今の内に仲良く…………いや、そんなことは考えていないからな?
「やったぁ!」
守りたい、この笑顔。
「じゃあ、行ってくる」
管理者権限でダンジョンの外に繋がる転移トラップを自分の足元に仕掛ける。
すぐに効果が発揮されて、ダンジョンの入口に転移する。
「いいか!ドラゴンを見つけたら即報告しろ!手を出すんじゃねぇぞ!少年の保護が目的だ!」
ジャンが、入口で大演説してた。




