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異世界で魔王になったけど、観光したい。  作者: かしあ あお
二章
53/54

奇跡的な偶然

更新日の間隔を四日に一度の頻度にします。大変申し訳ありません……

 付いて行った先にあったのは、取っ手のないドア。


「『我は王の血統。正しきを通す力の為に』」


 王が扉に触れて詠唱すると、ドアが開かれてる。

 厨二チックでいいな、このドア……


「この中には資格のある者しか入れぬ。待っているといい」

「わかった。……覗くだけなら大丈夫だよな?」

「危険は無い。本が好きか?」


「好きだ」

「ならばきっと入りたくなろう。しかし、決して入ってはならぬ」

「わかった」


 入ったらどうなるのか、気になるな。

 とりあえず中を覗く。……作りや雰囲気が図書空間と同じだ。


「……そういえば、図書空間に入る時に鍵を渡されたよな。あの鍵を持ってれば入っても平気か?」


 まぁ、もし危険だったとしても平気だろう。よく分からないが、謎の再生能力を得ていたからな。死にはしないだろう。


 扉の向こう側にそっと右足を入れる。

 何も起こらない。そのまま、体も入れる。何も起こらない。

 ……本当に、あの鍵でよかったみたいか?


「おーい。……ここが図書空間ならむやみに動かない方が良さそうだな。迷子になる」


 広いし、どこも同じような景色だから多分迷子になる。

 入ったはいいけど、何も出来ないし出て待つか……。




「これが異なる世界に関する本か」

「読んで構わん」

「なら遠慮なく」


 題名は「異なる世界に関する考察─救済─」となっている。救済……?



 …………読み進めていくと、この本は勇者召喚の方法をまとめてある事がわかった。

 特殊な魔法陣といくつかの道具、そして王の魔力が必要であるとかなんとか。


「なぁ、勇者召喚して異形種狩ってもらえばいいんじゃないか」

「魔法陣と道具は揃うのだが、王の魔力が足りなくなってしまう。そもそも、一人の人間が持てる魔力量では召喚できぬ仕様となっている」


 なるほど。つまり王一人では魔力が足りないが、王の魔力である必要がある為無理というわけか。


「なぁ、俺も魔王……一応は王だから出来ないか?」

「…………ふむ、試してみて貰えるとありがたい」

「俺もやってみたいしちょうどいいな」


 王の先導で城の地下へ降りていく。魔法陣が地下にあるのか?




 地底湖。言葉は知っていたし、鍾乳洞で見たあれも多分そうなのだと思うが、ここは違う。

 地底湖の底に何か光る物が沈んでいるのか、魔法が掛けられているのか、地底湖全体が淡く蒼く光を放っている。幻想的なその光景に、思わず言葉を失って見とれる。


「美しい場所だろう?ここは神聖なる場所、神との対話の場として使われる。本来は王家の者以外入れぬ」


 そんな場所に何も言わず俺を連れてきたのか……まぁ、別にいいけど。むしろ素晴らしい景色を見られて満足している。


「なるほど。それで、召喚の為の魔法陣と道具は?」

「この湖の対岸にある」

「湖って呼ぶには小さい気がするけどな……」


 直径二十メートル程の綺麗な円形の地底湖。まぁ、湖の定義を知らないからなんとも言えないな。


「……確かに、そうかもしれぬ。持ち帰って議題の一つとしよう」

「そ、そうか……」


 原初の三体と思われる異形種がここ、王国に向かって来ているかもしれないのに余裕だな……。




「これか……どうすればいいんだ?」

「魔法陣の前に立ち、詠唱すれば発動する。その本に載っていよう」


 ぱらぱらと捲ると、詠唱が載っているページが見つかる。なるほど、これを唱えればいいのか。


「じゃあ、始めるぞ。『偉大なる英雄、その霊体達よ。其方等が認めし英雄の気質を持つものをここに呼び出せ。我らが危機を脱する為に』」


 だいぶ短い詠唱だが、問題なく発動する。

 体から魔力がどんどん吸われていく感覚がある。

 ……これは、持たないか?

 オーバーライフブースト。


 魔力の自然回復量を高めるが、減る方が多い。いったい俺は何を召喚しているんだ……?





 ★




「あっ!魔法陣が……っ!」

「どうやら割り込みを始めたようね……」


 本来発動するはずのない召喚割り込みの魔法陣。だが、空太が発動したのは普通の召喚では無かった。

 いや、ただの勇者召喚の魔法であっても割り込みは発動しなかった。


 発動したのは、空太の『闇』という、魔力が消費される時に変換されるそれにあった。

 そもそも闇とは、性質的に魔力を吸収し、闇に変える。そうして増えていく。だが、空太のイメージ通りに魔法は発動する。

 闇には魔力が持つ性質と、魔力を吸収する性質がある。魔力の性質として空太のイメージ通りの魔法が発動するが、同時にその闇によって発動した魔法は魔力を吸収する性質も持つ。


 空太が使った勇者召喚の魔法は、召喚者の魔力、道具の持つ魔法的性質、そして魔法陣に込められた魔力、効果によって成り立つ。

 しかし、闇によって魔法陣の魔力は無くなり、効果だけが発揮される。その時点で発動しなくなるのが普通だが、空太は詠唱しながら勇者召喚をイメージしていた。


 まぁ、自分が行う行動の結果をイメージしてしまうのは仕方が無いだろう。だが、空太のイメージに魔力、闇が反応して勇者召喚を魔法陣の魔力無しで続ける。

 さらに、空太にとって勇者はウェンディの事だ。


 ……つまり、闇は空太のイメージ通りに、ウェンディを召喚する。そして、その為に足りない魔力を補う手段として召喚割り込みの魔法陣に干渉する。

 その結果、勇者召喚をすると割り込みが発生し、ウェンディと、一緒にいたレスティが召喚された。という風に見える。



 …………この奇跡的な偶然に気づく者は誰もいない。

湖の定義

四方を陸に囲まれた、水深五メートルより深い湖沼より広いものを指す。(wiki)


ようは陸に囲まれた水深五メートル以上の広い水溜まりを指します。

一応、空太の見た地底湖は水深五メートル以上なので、湖でいいかと思います。

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