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異世界で魔王になったけど、観光したい。  作者: かしあ あお
二章
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召喚魔法割り込み

「竜骨っていうのはやばいものなのか?」


 難しい表情をして考え込んでいる騎士長に聞く。


「竜骨そのものは無害だ。だが、竜骨が動いていたのならば危険だ」

「もしかしてまだ動くのか?」

「竜骨を操る異形種がいる。原初の三体の一つ、『死喰らいの不死王』。奴は死体を操り戦う最悪の異形種だ」


 死体を操る……ネクロマンサーってやつか?

 なるほど、俺の闇と相性最高だな。闇が触れれば相手は動かない死体に戻る。


「問題無いな。それより原初の三体ってなんだ?」


 原初の三体。最初に現れた三体の異形種とかか?


「……初めて現れた異形種の名だ。異形種の中でも格別に強い。勝てはしない」

「俺でもか?」

「数え切れぬ数の死体を倒し辿り着くことは不可能である『死喰らいの不死王』。天から無数の光が降り注ぎ、地上は無数の獣が走り回り殺される『不可侵の領域王』。姿も能力も不明、だが纏う霧に触れるだけで全てを殺す『死の王』」


 ここで一度言葉を区切り、続きを聞くか?と言うような目で見てくる。


「続きは?」

「……どれか一つでも勝てる相手などいない。魔王だろうとだ」

「なるほど、つまり戦うなってことか?」

「……勝手にしろ」


 優しいな。危険だから戦うな、か……。

 そもそも俺が安全だと決まったわけでも無いのに。本当ならダメ元でも俺に戦って欲しいと思うんだが。


「まぁ、そうだな。とりあえずどこにいるのか教えてくれるか?その三体、見るくらいなら出来るだろうからな」

「領域王は王国より南西、百キロほどの草原地帯だ。死の王は不明、おそらく海底とされている。不死王は不明」


 ……つまり、領域王にしか会えないわけか。


「じゃあ、その竜骨を少し持って王国に戻ったら、見てくるとするか」


 掘った穴の中に入り、頭骨を拾い戻ってくる。サイズは大きいが、両手ならば持てる。


「ほら、これでいいだろ?じゃ、さっさと飛んで帰るぞ」

「十分だ。……頼む」

「任せろ。──よし、じゃあ帰るか」


 板の上に二人で乗り、移動を始める。暖を取るために張った結界も一緒に動かしていく。寒いからな。


「にしても、異形種ってどうして出てきたんだ?元からいた訳じゃないだろ?」


 異形種がいたら、人間は文明を発展させる前に消えているだろう。


「突然だ。突然現れた」

「理由は不明か……」


 もしかしたらワールドエネミーかもしれない。だとしたら、というかまぁ違くても、討伐しておきたい。

 さらに出来れば、騎士長みたいなこの世界の人にトドメを刺してもらいたい。

 騎士長みたいに恨みも持っている人が多いはずだから、復讐の機会も欲しいだろう。それに、騎士長を手伝うって言ったからな。俺が一人で倒してしまう事を多分望まないだろう。


「……まぁ、とりあえずは城に戻ろう。それを持ち帰れば俺も例の異なる世界に関する本が読めるからな」


 帰りの空の旅では、殆ど会話は無かった。







「……今すぐ民達に通達せよ。新たなる異形種の発生。原初の三体の可能性ありと」

「……ハハッ!」


 城に戻ってすぐに王の元へ向かう。そして、竜の頭骨を見せて騎士長が骨の竜の話をする。


「なぁ、例の異なる世界に関する本を見せて欲しいんだけど……」

「すぐに持って来よう。……空太よ、どうか我々ルクセントリア王国から依頼を受けてはくれぬか?」

「原初の三体の可能性がある異形種の討伐か?」


 俺の問いかけに短く「その通りだ」と頷く。


「いいけど、俺はタダ働きか?」

「もちろん報酬を出そう。金貨千枚でどうだろうか?」

「いや、金は別にいらないな。だったら俺が帰るのに全力で手助けするっていうのはどうだ?」


 俺は帰りたいからな。この世界の金は必要性を感じない。

 まぁ、金を払えば帰れるならいくらでも払うけど。


「それだけで……いや、わかった。我々も空太の帰還に全力で力を貸そう」

「よし!そうと決まればまずは例の……異世界の本を読ませてくれ」

「今取りに行こう。付いてくるとよい」

「わかった」


 王が自ら取りに行くという事は、もしかして王しか入れない禁書庫みたいな感じか?

 楽しみだな……。





 ★





 サンドイッチを食べ終え、二人は真剣に話し合いを始めていた。


「私達だけでは、まず不可能だわ」

「うん……でも、助けたいよ」

「私だってそうよ。……そこで、空太に召喚してもらうのはどうかしら?」

「召喚?」


 召喚。召喚魔法、それは異なる場所から転移させるように魔法陣を使い呼び出す魔法だ。


「そう。空太が召喚魔法を使ったら、割り込むのよ。それならきっと行けるわ」

「でも、魔王は召喚魔法使わないよ?それに、行けても帰って来れなくなるんじゃ……」

「私達が行けば空太が変な事して命の危険に晒される可能性も減るわ。空太なら、自ら死地に赴きそうじゃないかしら?」


 ウェンディの言葉に納得するレスティ。信頼されていると言ってもいいのだろうか?


「でも、召喚魔法使うかな?」

「使う可能性に掛けるしかないわ。早く割り込みの準備を始めましょう」

「う、うん」


 召喚魔法に割り込む。この方法には不可能な点がある。

 一つは、世界を渡るほどの魔力を相手が、空太が注ぎ込んで召喚魔法を使わなければならない。

 二つ目は、そもそも普通の召喚魔法は使い手の魔力量によって割り込みやすさが変わる。空太のように強大な魔力量の相手に、レスティとウェンディだけで割り込む事は不可能だ。


「よし、これで魔法陣は完成よ。レスティ、空太の魔力が篭ったものを何か持ってないかしら?なんでもいいわ」

「ええっと……持ってないよ」

「なら、空太の物を持ってきましょう。髪の毛があれば最高ね」


 空太の髪の毛を入手する為に空太が使っている部屋へ向かう。

 辿り着くと、迷わずベットへ向かい枕を探る。だが、パトラッシュの完璧な掃除により残っていない。


「掃除の完璧さが今は腹立つわね」

「うーん……魔王の髪の毛なら、もしかしたら本に挟まってるかも?」

「それよ!探しましょう」


 空太は本が割と好きだ。だから、枕元には数冊積んであって、いつでも読めるようになっている。二つに分かれている所を見ると、片方は未読、片方は読み終わっているといったところだろう。

 二人は本を1ページずつめくり、髪の毛が挟まっていないか探す。


「あった!」

「本当?!……うん、これでいいわ。早速魔法陣まで戻るわよ!」

「そうだね!」


 髪の毛を大事そうに握りながら走るウェンディと、その後ろを走ってついていくレスティ。出来るはずのない割り込みのために、二人は必死になっていた。

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