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異世界で魔王になったけど、観光したい。  作者: かしあ あお
二章
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竜骨

 飛行速度を上げる。何もしていない状態で魔力の消費と回復がほぼ拮抗する程度の速度から、ライフブーストを使って回復量を上げて、それでも消費の方が多いほどに。

 風魔法で向かい風を減らし、空気抵抗を減らすように風よけを氷魔法で作る。


 速度はかなり早く、上空から見ているにも関わらず、景色がどんどん流れていく。




 


 速度を上げて一時間ほどで森の終わりに着く。

 ……おそらく、俺が一人の時の十倍くらいの速度で飛んでいた。おかげでかなり早く着いたが、魔力がかなり減っている。


「ここからは歩こう。魔力が無い」

「……もう着いたというのか。敵に回したくは無いものだ」

「安心しろ、味方だからな」


(勝手に)手伝うと約束したからな。


「心強いものだな」

「だろう?何せ俺は魔王だからな」


 話しながら山を登る。俺は軽装だが騎士長は鎧を着ている。それもフルプレートの物だ。


「鎧着たままで登れるのか?」

「それくらいどうということは無い」

「さすが人間最強だな」


「嫌味にしか聞こえんな」

「褒めてるんだよ。素直に喜べよ……」


 俺の言葉に渋い顔をしてくる騎士長。……まぁ、最初みたいに思いっきり警戒してくるよりはいいか。



 特に意味も無い話をしながら山を登っていく。


「そろそろ寒くなってきたな。この山、上の方は雪が凄いから対策しないとな」

「一人の時はどうしていた?」

「ずっと走っては休憩を繰り返した」


 まぁ、さすがにフルプレートの鎧を着た騎士長に走って体を暖めろとは言わない。

 ……火属性魔法で暖めるか?いや、フルプレートの中は蒸し焼きになりそうだな。


「……すまないな」

「俺もそうしたくはないからな。でも、騎士長はどうするつもりだったんだ?」

「まずは山を調べ、城に戻り装備を整えた後に再度行くつもりだ」


 なるほど。あくまで様子見か。

 ……なら俺がどうにかして行けるようにすればかなり早く終わらせられるのか。


「……よし、飛ぶか」


 まずは氷の板を作り浮かせる。その上に二人で乗り、氷の板を球体に覆うように闇の結界を作る。そして火をつけて結界の中を暖める。

 さらに、その結界が動くイメージをしながら飛ぶ。そうすれば暖かい空気を結界で逃がさずに飛ぶことが出来る。


「……何でもありということか」

「いや、結構出来ないこともあるだろうな。属性魔法は、属性を使った魔法しか使えないから」


 索敵などは行えない。他にも出来ないことはある。竜化したり、自在に空を飛んだり……


「属性魔法について詳しいか?」

「まぁ、一番使ってる魔法だからそれなりには詳しいはずだ」

「ならば教えて欲しい。特性などの詳細や、弱点等だ」


「……属性魔法が七つの属性の魔法の事を指しているのは知っているか?」

「七つ?五属性ではないのか」

「いや、七つだ。火、水、雷、風、氷、闇、光の七つの属性がある」


 さて、どれを知らないのか。闇と氷、あとは火属性と風属性は使っているから説明出来るはずだ。


「光と闇など聞いた事無い。どういうものだ?」

「闇は今も見てるだろ?結界が闇属性だ。まぁ、闇属性は多分自在に形を変えられる物質だな」


 いや、でもそれはスキルの闇操作と変質の能力か?

 ……まぁ、俺はそれしか知らないからな。


「光属性は……おそらくだけどエネルギーの塊みたいなものだと思う。ビームにして飛ばしたり、矢にしたり出来る。多分、闇を攻撃的にした感じか?」

「ほほう、エネルギーの塊……。弱点はどこだ?」

「……まぁ、弱点と言えるかは使い手によっては微妙な所だけど放つのに一瞬はかかる。どの属性もそうだけど、イメージする必要があるからな」


 俺の場合、闇の槍は一瞬で作れる。よく使うからな。


「つまりイメージさせなければ使えない、という弱点か?」

「それくらいだろうな。……あとは魔力が切れるのを待つくらいしか思いつかない」


 魔法だから当然だけどな。


「ふむ……他には無いものか?」

「……弱点じゃなければ、色々話せるけど。弱点なんて考えた事無かったからな」

「ならば教えてくれ」

「おう。なんでも聞いてくれ」


 属性魔法の話は、骨の竜を埋めた場所に着くまで続いた。






「雪が積もってるな……よし、ちょっと離れててくれ」


 たどり着いたが、埋めた場所が分からなくなるほど、雪が積もっている。


「属性魔法か?」

「火属性で雪を溶かす」


「見せてくれ」

「……なら、そこから動くなよ?」


 いいながら騎士長を闇の結界で囲む。これなら大丈夫だろう。


「よし、『炎の……燃えろ』」


 詠唱がうまく思いつかなかったから、とりあえず燃えろと唱える。……まぁ、元々無詠唱でも発動するから問題は無い。

 イメージした通りに周囲の雪が燃え上がり始める。そして、溶けていく。……いや、蒸発していく。


「……属性魔法とは凄まじいものだ」

「まぁ、これは多分俺が強いっていうところがあるぞ?」


 魔力もどんどん持っていかれてるからな。


「魔王、か……魔法の王と言う事か」

「……そうなのか?」


 ただの種族名としか考えてなかったな。


「属性魔法、詠唱魔法。どちらも使えるなど、過去の勇者達にも無かったはずだ。魔王というのは勇者より強い世界に召喚された者ではないか?」

「世界に、というより神に召喚されたな。ただ、友好的な感じの召喚では無かった」


 消えてもらうとか言ってたからな。


「神敵か……?」

「……まぁ、多分俺がアリアと親しげなのが嫌だったんだろうな。そんな感じに話してたし」

「ルクセントリア王国に被害を出すことはするな」


「してないはずだから安心してくれ」


 小声でこれはまずいか?とか呟くなよ。聞こえてるんだよ……


「それよりほら、溶かし終わったから掘り返すだろ?」

「どこに埋めた」

「……確かここら辺だ。ちょっと待ってろ」


 詠唱魔法、無詠唱バージョンの捜索を使う。

 ……詠唱魔法を無詠唱で使っているが、これは詠唱魔法と呼べるのか?呼べないよな。

 よし、後で名前を考えよう。


「あ、あった。ここら辺から……ここら辺の中に埋めてある」


 地面に線を引きながら話す。これでこの中を掘ればいい。


「魔法で掘れるものか?」

「そうだな……」


 埋まってる物を掘り返すなら土を優しく掘る必要がある。と言うことは……


「よし、ちょっとやってみよう。『我は理に干渉する者。干渉し、歪める者。望むままに歪め。──重転』」


 地面が塊になって浮かび上がる姿をイメージする。

 すると、やはりイメージ通りに地面がどんどん塊になって浮かんでくる。


「……あった。ほら、これが例の骨だ」


「深く埋めたものだ。……っ!?」


 骨をみた騎士長が突然固まる。もしかして何かあったのか?


「これは、竜骨か……?」

「竜型だったな」


 そんなに驚愕したような目で見るなよ。褒めるのか怒るのかどっちかわかりやすい反応をしてくれ。

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