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異世界で魔王になったけど、観光したい。  作者: かしあ あお
二章
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異形種討伐

 街が見えるほど近い草原が、黒く変色していく。

 そして、変色した所を辿ると一本の動く木がいる。

 桜の木に似ているが、枝の他に蔦が生えている。さらに幹は炭のように黒い。根は地面に埋まってなく、うねうねと動いている。その動きによって、進んでいるようだ。


「……気持ち悪いな」


 だが、そんな事を言ってる場合では無いような気がする。明らかに街に向かっている。


 だが、この場所では街の人に見られる可能性がある。この場所で属性魔法を使うと見られる。

 ──()()()()()()()()()()()使()()()()この世界では、見られたらどうなるか分からない。

 最悪、俺が異形種だと思われる可能性もある。


「まぁ、でもそんなこと言ってる場合じゃないよな」


 街に向かっている異形種に闇の槍を放つ。

 幹の中心に当たったが、貫けずに止まる。


「…………まじかよ。てか、撃たれた事に気付いても無いのか?俺を無視してやがる。『炎の槍、爆散』」


 再び幹に当たり、今度はそこで爆散する。

 ……だが、燃えない。植物系っていったら火に弱いべきだろ。


「どうすればいいんだこれ……そうだ、『霧』『凍結』」


 前に犬型の骨に使った、水魔法で霧を作りその霧ごと相手を凍らせる方法。


 ──一瞬動きは止まったが、氷を割って動き出す。


 前回成功したのは、犬型の骨の筋力が低かったからであって、この異形種には通じないということだ。


「…………オーバーライフブースト。『炎の柱』」


 オーバーライフブーストを使い、異形種の足元から吹き上がるように炎の柱を天に向けて撃つ。


 さすがに効いたらしく、根を激しく動かしてその場から移動する。

 そして、炎の柱から出ると同時に、こちらに向けて蔦を伸ばしてくる。闇の盾で受け止め、もう一度炎の柱を──


「さすがに気付いたか」


 兵士が門から出てくる。そして、慌てて中に戻っていく。

 火の柱が上がったから見に行ったら異形種がいたから慌てて報告、という感じか?


 とりあえず、もう属性魔法は使えない。

 何度も角度を変えて攻撃してくる蔦を闇の盾で受け止めながら、その結論に辿り着く。


「詠唱魔法で倒すか。…………攻撃系の詠唱魔法、知らないな」


 詠唱魔法は使えないか?どうする……


 悩んでいると、門から兵士が出てくる。先頭には、あの隊長がいる。

 生贄になる部隊か。なるほど、まぁ当然の対応だな。早さには驚くが。


「でも、今は困るんだよな……仕方ない。本当は殴り倒そうと思ってたけど、速攻で決める必要がありそうだしな。『我が身は天を駆けず、血を割らず。されど我は力を望む。……大いなる竜達よ、その系譜に連なる者よ。我に……ああ、もう覚えてないな。いけるか?──完全なる竜化・魂の吸収!』」


 長すぎる詠唱の最初しか覚えていないが、それだけで発動できるか?


 ──肉体がファフニールになる。発動出来た。


 結局、魔法っていうのはイメージ出来れば適当でいいのか?


「まぁ、発動出来たからいいか」


 考え事をしながら、異形種に向けて炎をぶつける。竜化したからか、口から炎を出せるようになった。結構便利だ。


 異形種は炎に包まれながら、蔦を伸ばしてくる。それも一本ではなく、何十本も。

 とっさに空に上がるが避けきれず、二本が足に絡まる。

 引きちぎれないほど強度のある蔦は、そのまま足をキツく締め付けてくる。


 突然締められる痛みが無くなる。足を切り落とされたからだ。

 ──切り落とされて無くなった足がすぐに再生する。胸を貫かれた時と同じだ。


 今は考えるのをやめてさらに炎を大きくする。魔力が減っていく感覚と、同時に増えていく感覚がある。おそらく、魔力の消費と回復はほぼ拮抗している。

 そして、炎に焼かれる異形種の姿はどんどん小さくなっていく。これなら倒せる。



 異形種が燃え尽きて灰になるまで、時間はそうかからなかった。








「……まぁ、確かに危険を感じるのも分からなくないが酷くないか?」


 異形種を倒して竜化を解いた時には、生贄になるはずだった兵士達が俺の元に着いていた。

 とりあえず、「倒したぞ!」と自慢げに行ったのだが、異形種が人の姿を真似しているのかもしれないと言われて拘束された。


「しかし人が竜化するなど神話の類いでしか聞いた事がない。詠唱魔法魔法もそうだ。どこまでが本当の話なのか検討もつかない」

「いや、そんな事言われても全部本当だからな……。詠唱魔法で竜化しただけって話だ」

「だからその竜化も、詠唱魔法もありえんと言っている!」


「さっき重力弱化見せただろ!」

「ありえんものを見せられて理解出来るか!」


 もはや逆ギレだと思うんだけど……。事実を言って、証拠を見せたら逆ギレか。もうどうしようもないな。


「貴様、そのどうしようもないものを見る目をやめろ!」

「え?そんな目してたか?悪いな、つい表情に出てたか」

「……貴様を異形種と判定する」


「命の恩人を処刑する気か?!」

「貴様は人じゃないだろう?!」


 ……完全に否定しきれないのが痛い。種族魔王になってるからな。


「…………ライ・ディテクターを持ってくる。暴れたら即、処刑だ」

「なんだそのかっこいい名前の武器は。俺を殺す気だろ」

「嘘発見器だ!そこで待ってろ!」

「そんなかっこいい名前付けるなよ……期待しただろ」


 肩を怒らせながら部屋を出ていく……尋問員?を見ながらため息をつく。


 命の恩人として迎えられるどころか異形種認定か……もういっそ属性魔法使っても良かったな。まさか詠唱魔法もそんなに凄い魔法だったとは思わなかった。

 神話の類いって、凄すぎだろ。図書空間、結構やばいところだったのかもしれない。神話の類いの魔法が使えるようになる本がある場所だからな。


 そこなら、多分別の世界にいく方法も、俺がアリアの世界に戻る方法も見つかるだろう。早く図書空間に詳しい人を探さないとな。

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