まんまと騙された
「魔王様、それは……」
「ん?ああ、ステータスが魔王に戻ってたから、全員分の氷像を作ってみたんだ。似てるだろ?」
「素晴らしい……細かな造形、氷の薄青色、そして溶けることのないように込められた大量の魔力。魔王様、これは大変素晴らしい」
「そ、そうか……」
魔力なら大量にあるから多めに込めただけだが、溶けなくなるのか。
しかし、竜狩りの者は彫像とか好きなのか?
「竜狩りの者も作ってみたらどうだ?」
「俺は氷属性の適正がない」
「なら、俺が代わりに何か作ろうか?」
「ふむ……なら魔王様を」
自分の氷像を作るのはちょっと……。いや、でも俺以外の全員分作ったから、俺も作るべきかと考えはしたが……。
「まぁ……そうだな、作るか」
自分の氷像を自ら作った人は、この広い世界にもほとんどいないだろうな……
夜の七時頃には全ての準備が整った。
……レスティ、血飲みの者がパトラッシュに連れていかれたのが二十分前。そろそろ、ドレスを着れただろうか。楽しみだ。
「魔王様、どうやら客人が来たのぉ」
「客人?」
「神託の者が死者を霊体として呼んだのじゃろう。八人だけというのは少し寂しいからのぉ」
霊体……もしかして、ハリー〇ッターに出てくるような奴か?まぁ、神託の者が呼んだなら大丈夫だろう。
「それで、その霊体は今どこにいるんだ?」
「正面入口で待っておるのぉ。神託の者が迎えに行くのじゃろう」
「魔王様、ここにいたか」
「どうしたんだ?竜狩りの者」
「これを」
手渡されたのは、服とマント。
……魔王です、という感じがする。なんだこの厨二病セット。
「これは?」
「魔王様の正装だ。先代の予備の物を持ってきた」
「……なぁ、一つ聞きたいんだけどいいか?」
「構わない」
「これ、女物だよな?」
「そうだが」
…………先代魔王は女だったのか。って、そうじゃなくて。女物の服を俺に着せようとするなよ。この露出度、男が着るものではない。
「普通の礼服とかにしてくれ」
「……仕方ない。持ってこよう」
「なんで俺が我儘言ったみたいになってるんだ……」
これが常識の違いというやつか?まぁ、生きてきた世界が違うから仕方ないのかもしれないけど……
まぁいい。今は三人のドレス姿を楽しみに待っていれば…………そうだ、せっかくだしアリアも呼んでみよう。友達だからな。
スマホのような物でアリアにメッセージを入れる。
『パーティに参加しないか?』
返信はすぐに来た。暇人なのか?
『私が行っても、楽しくはならない』
『いや、楽しくして欲しいというより楽しんで欲しいから来ないか?』
『……私は神。そんな簡単に地上に降りることはしない』
『つまり地上に降りてこれるんだろ?それに神として来るんじゃなくて俺の友達としてくるなら、問題無いだろ?』
……アリアという美少女に、ドレスを着せたい。毎回同じ和服姿のアリアに、別の服を着せたい。
『…………初めてだけど、いい?』
『アリアなら大歓迎だ。さぁ来い!』
落ちたな。よし、これで美少女が一人増えた。
……出来ればこのパーティでアリアの笑う顔を見たいな。まぁ、そんな簡単に見れると思っては無いが。
「……来た」
「お、アリア!ようこそ、魔王城へ」
ふむ、やはりいつも通りの和服か……。よし。
「さっそくだけど、付いてきてくれ」
「わかった」
ウェンディのいる部屋、パトラッシュ達がドレスに着替えているだろう部屋へ向かう。
──すぐに到着する。
「パトラッシュ、ドレス一人分追加出来るか?」
ドアをノックし、ドア越しに声を掛ける。
「可能です。サイズはどうされますか?」
「今ここにドレスを着る俺の友達がいるから、見ながら作ってくれ」
「かしこまりました」
「空太、どういうこ──」「さぁ行ってこい!楽しみにしてるぜ!」
部屋のドアを少しだけ開けて、アリアを中に入れる。……覗きたい気持ちは、しっかりと抑えた。楽しみは後に残しておかないとな。
ドアの向こうから、レスティと血飲みの者がアリアに話しかけている声が聞こえる。まぁ、パトラッシュとウェンディも含んだあの四人ならアリアとも仲良くなるだろう。
全員、見た目もそうだが性格も良いからな。
「魔王様、礼服だ」
後ろから話しかけられる。竜狩りの者だ。
「わざわざここまで探して来たのか?悪いな、ありがとう」
「強欲の者に場所を聞いただけだ」
「なるほど。じゃあ、着替えてくる」
手渡された礼服は、燕尾服だった。……まぁ、女物のあれよりはましだ。
「着方、これであってるよな……」
「魔王様、私が着せてあげるよ!」
「血飲みの者?!いつの間に来たんだ?」
「魔王様が苦戦しながら着てる時だよ!」
後ろを、着替える為に入った部屋のドアの方を向く。
──天使がいた。白い髪と対照的な黒いドレスを身に纏った、血飲みの者がいた。
「……………………」
「に、似合うかな?」
「……………………ありがとう。本当に、ありがとう」
知ってるか?本当に尊いものを見た時、人間はただただ感謝の言葉しか出ない。俺は、今知ったよ。
「えっと……魔王様、別の感想が欲しいかな……」
「似合ってる。最初に見た時天使かと思った。今はむしろ人を狂わせる悪魔かもしれないと思ってる。だが俺は狂わされてもいい!いやむしろ狂わされたい!」
「ま、魔王様?」
「……と、いう感じに狂うくらい似合ってて可愛い」
あまりの魅力に変なスイッチが入った。危うく危険人物になるところだった。
……しかし、本当に綺麗だ。吸血鬼って、みんなこんなに綺麗なのか?もし綺麗なら、会わない方がいいな。多分正気を失う。
「そ、そんなに似合ってるかな?」
「ああ。最高だ!」
「ありがとう!じゃあ、魔王様も着替えよう?」
「そうだな。……頼む」
「任せて!」
血飲みの者に任せて平気だろうか?……まぁ、いざとなれば神託の者に頼めばいいか。
──血飲みの者の着付けは、完璧だった。
何故男物の服を完璧に着せることが出来るのか、気にはなるが聞きたくない気もする。まぁ、気にしないでおこう。
「魔王様、全ての準備が整いました。いつでも始められます」
「よし、なら始めるか!……神託の者、もし俺が正気を失いそうになったら止めてくれ。あと、鼻血が出たら治癒を頼む」
「お任せ下さい」
さて、美少女達のドレス姿を見るか!
大広間の扉に手を掛け、押し開ける。
「「「魔王様、邪竜討伐おめでとうございます!」」」
──え?
「魔王様、実はウェンディちゃんの復活をお祝いするだけじゃなくて、魔王様の邪竜討伐もお祝いしようって事になったんだよ!」
「……はははっ!そういうことか!」
「空太、どう?驚いた?勝手に私だけを祝おうとなんてさせないわよ!」
なるほど、ウェンディ発案か。
「まんまと騙されたよ。……けどまぁ、ありがとな、ウェンディ」
「本来なら私より空太が祝われるべきだもの。礼なんていらないわよ」
……すごいな。まさかこんなドッキリを仕掛けられるとは。
「それより、ほら。言うことがあるでしょ?」
「ん?ああ……そのドレス、最高に似合ってるぜ!無理にでもドレスにさせた甲斐があった」
「……まぁ、悪い気はしないわ」
ウェンディのドレスは、深い青色の短めのスカートのドレスだった。髪にはドレスと同じ色の薔薇の髪飾りを着けていて、これを作ったパトラッシュの極めて高いファッションセンスが伺える。
黒い髪に深い青のドレス。よく似合ってる。そして何より、普段は胸当てのせいで隠れている胸が今はドレスによって強調されている。……うん、着痩せするタイプだったんだな。多分Cよりは大きいと思う。サイズに詳しくは無いけど。
「さて、レスティはどこにいるんだ?」
「あの子ならとっくに食べ物の所に行ったわよ」
「……ありがとう。会ってドレス姿を見てくる」
「…………はぁ。いってらっしゃい」
「おう」
二人のドレスは完璧だった。あとはレスティとアリアだ。絶対、最高に可愛いんだろうな……早く会いに行こう。




