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異世界で魔王になったけど、観光したい。  作者: かしあ あお
一章
32/54

レーヴァテイン

「この道であってるのか?」

「あってるはずよ。多分」

「信用出来ないな……」


 森で道が分からなくなってかウェンディの道案内は信用出来ない。まぁ、俺も一緒に森で迷子になっていたが。


「魔王様!魔王様ー!」

「ん?……血飲みの者?なんでここにいるんだ?」

「え?あ、えっと、探してきたんだよ!」


 ……なぜ少し不思議な声を出したのか、聞かない方がいいのか?


「竜狩りの者と魔獣王もいるよ!」

「あの二人も?……謝らないとな。どこにいるんだ?」

「んーと……あ、いたよ!」


 どこにいるのか聞いて、まず空を見上げた事に違和感を感じる。血飲みの者のテレポートで来たのなら、空にいる理由が思いつかない。

 あ、空から探していたのか?多分そうだな。……何故、空から来ないで地面に降りて歩いて来てるんだ?


「魔王様……いや、弟子。魔王城に向かっているか?」

「ああ、向かってる。……いきなりいなくなって悪かったな。アリアに勇者の事を頼まれてな。パトラッシュも悪かったな。心配させて」

「いえ、大丈夫です。ご主人様かご無事で安心しました」


 ミニスカメイド、目の保養になるなぁ……ウェンディの服装は、まぁ、絶対領域が見える程短いズボンに半袖と、悪くは無いんだけど、胸元に着けた軽装鎧がな……。


「……どうかされましたか?」

「何でもない!何でもないから、気にしないでくれ」

「そうですか」


 女性は視線に敏感って本当なんだな……て、パトラッシュを女性と言ってもいいのか?


「空太、その三人は誰なのかしら?」

「ああ、ウェンディは会ったことないよな。この三人は俺の部下と……ペット?メイド?まぁ、そんなところだ」

「ペット……?いったいそのメイドに何をしているのかしら?最低ね」

「誤解だ。パトラッシュは人間じゃないから、多分狼だからな?」


 誤解されるよな、そりゃそうだよな。メイド兼ペットとか、アウトだろ。しかもミニスカ美人メイド。


「いえ、狼ではありません。私はただのご主人様のメイドです」

「……やっぱり最低じゃない」

「誤解が深まった!?パトラッシュ、お前の本当の姿はあの大きい狼じゃないのか?」


 パトラッシュの一言で、誤解が深まった。


「いえ、あれもこの姿と同じく作ったものです」

「なら、本当はどんな姿なんだ?」

「そうですね……私の本当の姿というのを、最初の私の姿の事を指すのなら不定形です」


 不定形……定型、ちゃんとした形が無いって事か?


「……霧みたいなものか?」

「はい。私は、元々はただの魔力の塊ですから」


 衝撃発言だな。どう反応するべきなんだ?


「ちょっと、空太。そのメイドは魔物なのかしら?」

「ああ。魔物というか、魔獣か?魔獣王、パトラッシュだ」

「……魔獣王の谷にいると言われる、幻獣の事、かしら?」

「幻獣なのかは知らないけど、多分そうじゃないか?あ、パトラッシュっていうのは俺が付けた名前だ。いい名前だろ?」


 悲劇の犬っぽい事以外、いい名前だと思う。悲劇を知らないウェンディなら、普通にいい名前だと思うはずだ。


「やはり、魔王というのは規格外なのね……。その二人も何か特別なところがあるのよね?」

「私はハーフヴァンパイアだよ!」

「俺は死王の騎士だ」


 死王の騎士?アンデット系なのか……。それで鎧を外さないのか。


「……私は、勇者ウェンディよ。危害を加える気は無いわ」

「魔王様に危害を加えない限り私たちも何もしないよ!」

「…………わ、わかったわ」


 長い間があったのは、恐らく俺と戦ったことを思い出したのだろう。危害を加えない、だからセーフだと思うけど。言うなら、既に危害を加えた、だからな。

 まぁ、俺は怪我一つしてないが。


「じゃあ、さっそく魔王城に転移しよう!」

「そうだな」

「そうしてください」

「助かる」

「お願いします……え、転移?!」


「私に触っててね?はい、魔王様も手を貸して?」

「ああ。頼む」


 恋人繋ぎは当たり前だ。転移だからな。


「────もういいよ。到着!」

「帰ってきた……。レスティはここにいるのか?」

「うん。いるよ!」


 レスティに会いに行くか。


「じゃ、探しに行くか」

「空太、先に私の剣を弁償してくれないかしら?」

「あー……血飲みの者、宝物庫の中の剣を1本使いたいんだけどいいか?」

「もちろん!魔王様の物だからね。テレポートする?」

「頼む」


 流れるように恋人繋ぎをする。

 血飲みの者とウェンディと三人で宝物庫に着く。


「ええと…………あったあった。これだ」

「ま、魔王様、それは……」


 ……前回もだが、何故血飲みの者はこの剣に過剰反応するんだ?


「だめか?」

「…………ううん。魔王様の物だから、だめじゃないよ」

「そうか。……ウェンディ、この剣なんだが、終わったら返してくれ」

「分かったわ。いわく付きの剣なのかしら?」


 多分、何かしらあったのだろうが、何があったのか分からないからな……。


「まぁ、性能は高いはずだ。使ってみるか?」

「そうね。……この剣は、火属性の魔力を持った剣みたいね。鑑定出来る道具は無いかしら?」


 鑑定……あ、解析ってアプリがあったはずだ。


「…………終末の剣、レーヴァテイン。ええと、これ見てくれ」




 終末の剣

 レーヴァテイン


 耐久--

 魔力122/9999

 スキル

 全転換・火─空間魔力転換、身体転換・炎

 火属性適性+3

 火属性完全吸収・魔力─治癒能力向上

 終末の炎操作

 消費魔力軽減─魔力消費無効・火属性


 魔法技

 終末の炎(ラグナロク)





「読めないわよ」

「……一言で言うと、この剣は俺よりも強い。多分世界滅ぼせるレベルの強さだ」

「は?……はぁ?!」

「いや、俺もここまで強いとは思ってなかった。まぁ、強い分にはいいだろ?」


 これならワールドエネミーだろうと余裕だろう。スキルなんて俺より多いし、魔法技の終末の炎って、ラグナロクって神話のあれだよな?

 使ったら世界終わるんじゃないか?いや、その為のスキル、終末の炎操作か。つまり、世界を滅ぼせるような炎を自在に操れるのか。

 ……強過ぎるだろ。異世転の主人公はなんて剣を作ったんだよ。恐ろしい。


「能力をみたいのだけれど、どうしたら見れるのかしら?」

「そうだな……俺が紙に書き写すか。それなら読めるだろ」

「そうね。お願いするわ」

「ああ。あと、とりあえずこの剣を振るのはまだやめといてくれ。強すぎる」

「世界を滅ぼせる剣を振りたくは無いわね……」


「なら、やめとくか?」

「あの竜を殺せるなら、何だってするわ。世界を滅ぼしてもいいわ」

「それはやめてくれ。とりあえず、待っててくれ」

「分かったわ」


 さて、どうするかな……。この剣、使って大丈夫なのか?強すぎるし、何か副作用的なものが無いといいんだが……。まぁ、今更か。何だってするって言うなら、問題無いだろう。

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