レーヴァテイン
「この道であってるのか?」
「あってるはずよ。多分」
「信用出来ないな……」
森で道が分からなくなってかウェンディの道案内は信用出来ない。まぁ、俺も一緒に森で迷子になっていたが。
「魔王様!魔王様ー!」
「ん?……血飲みの者?なんでここにいるんだ?」
「え?あ、えっと、探してきたんだよ!」
……なぜ少し不思議な声を出したのか、聞かない方がいいのか?
「竜狩りの者と魔獣王もいるよ!」
「あの二人も?……謝らないとな。どこにいるんだ?」
「んーと……あ、いたよ!」
どこにいるのか聞いて、まず空を見上げた事に違和感を感じる。血飲みの者のテレポートで来たのなら、空にいる理由が思いつかない。
あ、空から探していたのか?多分そうだな。……何故、空から来ないで地面に降りて歩いて来てるんだ?
「魔王様……いや、弟子。魔王城に向かっているか?」
「ああ、向かってる。……いきなりいなくなって悪かったな。アリアに勇者の事を頼まれてな。パトラッシュも悪かったな。心配させて」
「いえ、大丈夫です。ご主人様かご無事で安心しました」
ミニスカメイド、目の保養になるなぁ……ウェンディの服装は、まぁ、絶対領域が見える程短いズボンに半袖と、悪くは無いんだけど、胸元に着けた軽装鎧がな……。
「……どうかされましたか?」
「何でもない!何でもないから、気にしないでくれ」
「そうですか」
女性は視線に敏感って本当なんだな……て、パトラッシュを女性と言ってもいいのか?
「空太、その三人は誰なのかしら?」
「ああ、ウェンディは会ったことないよな。この三人は俺の部下と……ペット?メイド?まぁ、そんなところだ」
「ペット……?いったいそのメイドに何をしているのかしら?最低ね」
「誤解だ。パトラッシュは人間じゃないから、多分狼だからな?」
誤解されるよな、そりゃそうだよな。メイド兼ペットとか、アウトだろ。しかもミニスカ美人メイド。
「いえ、狼ではありません。私はただのご主人様のメイドです」
「……やっぱり最低じゃない」
「誤解が深まった!?パトラッシュ、お前の本当の姿はあの大きい狼じゃないのか?」
パトラッシュの一言で、誤解が深まった。
「いえ、あれもこの姿と同じく作ったものです」
「なら、本当はどんな姿なんだ?」
「そうですね……私の本当の姿というのを、最初の私の姿の事を指すのなら不定形です」
不定形……定型、ちゃんとした形が無いって事か?
「……霧みたいなものか?」
「はい。私は、元々はただの魔力の塊ですから」
衝撃発言だな。どう反応するべきなんだ?
「ちょっと、空太。そのメイドは魔物なのかしら?」
「ああ。魔物というか、魔獣か?魔獣王、パトラッシュだ」
「……魔獣王の谷にいると言われる、幻獣の事、かしら?」
「幻獣なのかは知らないけど、多分そうじゃないか?あ、パトラッシュっていうのは俺が付けた名前だ。いい名前だろ?」
悲劇の犬っぽい事以外、いい名前だと思う。悲劇を知らないウェンディなら、普通にいい名前だと思うはずだ。
「やはり、魔王というのは規格外なのね……。その二人も何か特別なところがあるのよね?」
「私はハーフヴァンパイアだよ!」
「俺は死王の騎士だ」
死王の騎士?アンデット系なのか……。それで鎧を外さないのか。
「……私は、勇者ウェンディよ。危害を加える気は無いわ」
「魔王様に危害を加えない限り私たちも何もしないよ!」
「…………わ、わかったわ」
長い間があったのは、恐らく俺と戦ったことを思い出したのだろう。危害を加えない、だからセーフだと思うけど。言うなら、既に危害を加えた、だからな。
まぁ、俺は怪我一つしてないが。
「じゃあ、さっそく魔王城に転移しよう!」
「そうだな」
「そうしてください」
「助かる」
「お願いします……え、転移?!」
「私に触っててね?はい、魔王様も手を貸して?」
「ああ。頼む」
恋人繋ぎは当たり前だ。転移だからな。
「────もういいよ。到着!」
「帰ってきた……。レスティはここにいるのか?」
「うん。いるよ!」
レスティに会いに行くか。
「じゃ、探しに行くか」
「空太、先に私の剣を弁償してくれないかしら?」
「あー……血飲みの者、宝物庫の中の剣を1本使いたいんだけどいいか?」
「もちろん!魔王様の物だからね。テレポートする?」
「頼む」
流れるように恋人繋ぎをする。
血飲みの者とウェンディと三人で宝物庫に着く。
「ええと…………あったあった。これだ」
「ま、魔王様、それは……」
……前回もだが、何故血飲みの者はこの剣に過剰反応するんだ?
「だめか?」
「…………ううん。魔王様の物だから、だめじゃないよ」
「そうか。……ウェンディ、この剣なんだが、終わったら返してくれ」
「分かったわ。いわく付きの剣なのかしら?」
多分、何かしらあったのだろうが、何があったのか分からないからな……。
「まぁ、性能は高いはずだ。使ってみるか?」
「そうね。……この剣は、火属性の魔力を持った剣みたいね。鑑定出来る道具は無いかしら?」
鑑定……あ、解析ってアプリがあったはずだ。
「…………終末の剣、レーヴァテイン。ええと、これ見てくれ」
終末の剣
レーヴァテイン
耐久--
魔力122/9999
スキル
全転換・火─空間魔力転換、身体転換・炎
火属性適性+3
火属性完全吸収・魔力─治癒能力向上
終末の炎操作
消費魔力軽減─魔力消費無効・火属性
魔法技
終末の炎
「読めないわよ」
「……一言で言うと、この剣は俺よりも強い。多分世界滅ぼせるレベルの強さだ」
「は?……はぁ?!」
「いや、俺もここまで強いとは思ってなかった。まぁ、強い分にはいいだろ?」
これならワールドエネミーだろうと余裕だろう。スキルなんて俺より多いし、魔法技の終末の炎って、ラグナロクって神話のあれだよな?
使ったら世界終わるんじゃないか?いや、その為のスキル、終末の炎操作か。つまり、世界を滅ぼせるような炎を自在に操れるのか。
……強過ぎるだろ。異世転の主人公はなんて剣を作ったんだよ。恐ろしい。
「能力をみたいのだけれど、どうしたら見れるのかしら?」
「そうだな……俺が紙に書き写すか。それなら読めるだろ」
「そうね。お願いするわ」
「ああ。あと、とりあえずこの剣を振るのはまだやめといてくれ。強すぎる」
「世界を滅ぼせる剣を振りたくは無いわね……」
「なら、やめとくか?」
「あの竜を殺せるなら、何だってするわ。世界を滅ぼしてもいいわ」
「それはやめてくれ。とりあえず、待っててくれ」
「分かったわ」
さて、どうするかな……。この剣、使って大丈夫なのか?強すぎるし、何か副作用的なものが無いといいんだが……。まぁ、今更か。何だってするって言うなら、問題無いだろう。




