表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で魔王になったけど、観光したい。  作者: かしあ あお
一章
20/54

オーバーライフブースト

 食事の必要が無くて、汗もかかないから風呂もそんなに入らなくていい。魔王って、便利だな。まぁ、寝る必要はあるけど。


「しかし、あるのは骨と石だけか……お、これって宝石の原石か?」


 壁に青い半透明の水晶のような石が埋まっている。

 とりあえず、闇の槍を小さめに作って水晶の周りに刺しまくり水晶を取り出す。


 軽い。それに触った感じだと硬度も高そうだ。まさかダイヤモンドか……?試しに闇の槍を打ち込んでみる。

 ──変化無し。今度は闇でナイフを作って表面を削ってみる。削れない。

 ……5センチ程度の大きさなので制服のポケットに入れておく。これだけの硬度だから、もしかしたら良い物なのかもしれないからな。


「それを置いて行け」

「ん?……あ、人?こんな場所にも人がいるとは」


 異世界凄い。人がいるってことはどこかに登れる場所があるかもしれない。俺みたいに降りたのかもしれないが。


「私は魔獣王だ。まさか知らずにここにいるわけではあるまい?」

「……いや、さすがに無理あるだろ。仮にそうだとしたら()()()()になるだろ」


「……人間の肉体というのは便利なものでな。このように狭い場所でも自由に動ける」

「まぁそうだな。……その言い方、もしかして人間じゃない?」

「魔獣王を知らぬとは……まぁよかろう。その石を返せば見逃してやる」


 ポケットに入れた水晶みたいな石は、相当価値があるみたいだ。

 ……何なのか気になるな。


「これ、なんなんだ?」

「それすら知らぬとは、いったい何をしにここへ来た」

「上から落とされた。来たくて来た訳じゃない」


 竜狩りの者に投げ落とされた。何故こんな事をするのか。


「落とされた……?ふ、ふふふ、ふはははは!そうか、殺されたのか!なるほど、これは面白いな!」

「いや、そんなに笑うなよ……それに殺されたって、俺は生きてるぞ」

「ならば殺人未遂だろう?……人間であってるか?」

「魔王だ」


 種族が魔王になっているからな。人間ではない。


「魔王が落とされたか!これは傑作!しかし今代の勇者は魔王をここに落として殺そうとしたか……」

「いや、落としたのは竜狩りの者っていう魔族だ。修行を始めるとか言って、ここに放り投げた」

「……っ!はははっ……!魔王が魔族に……!」


 笑い過ぎだろ。そんなに腹を抱えて笑わなくても……


「今代の魔王は面白いな。よし、修行というなら私と戦っていくか?」

「え?いや、さすがに女性相手に戦うのはな……美人に攻撃なんてしたくない」


 緑色の髪に緑色の瞳の、エルフっぽい美人。ただ、耳が猫耳だからエルフじゃないだろうな。


「美人?ああ……なら、これでいいか?」


 一瞬姿がブレる。──俺と全く同じ見た目の誰かが、魔獣王のいた場所に立っている。


「……まさか、幻覚?」

「肉体変化というスキルだ。こんなの使える生物は沢山いたただろう……」

「初めて見たけど?」

「自慢げに言うとは。今代の魔王はやはり変わっている」


 褒めてる?貶してる?……こういう時は、褒められてると思っておこう。精神衛生上、その方がいい。


「まぁ、俺とは声が違うからいいか……それで、戦うってことはどこか広いところがあるのか?」

「こっちに来な。勝ったらその石はやるよ」

「この石、何に使えるんだ?」

「……アダマンタイトの使い道を知らないとは言わないな?」


「知らない」

「はぁ……魔力を生産する石、それがアダマンタイト」

「つまり自動で溜まる魔力倉庫?」

「まぁ、そうだよ」


 微妙だな……魔力ならライフブーストで──これ使えば風魔法だけで登れるか?!

 ……勝たなければ。





 少し歩き、壁に空いていた穴の中に入る。

 ──広い地下空間だ。高さは30メートルくらいあるか?めちゃくちゃ高い。横の広さにいたっては300メートル以上ある。いったい何のためにこんな空間が……。


「私が魔獣王である理由を見せてやる。魔王よ、私を見くびると死ぬぞ?」


 言葉と同時に体がブレる。……一軒家くらいの大きさはありそうな黒い狼になる。うーん、赤い瞳に黒い毛並みが綺麗だ。出来ればもう少し小さくて弱そうならな……。


「魔王よ、これが私の姿だ!」

「めちゃくちゃかっこいいぞ!撫でていいか?」

「……戦わないのか?」

「ええ……よくよく考えるとさ、俺って勝ったらアダマンタイト貰えるけど、負けても何も無くないか?フェアじゃないし、戦わないでいいかな?と、考えているんだが……」


 こんな強そうな狼と戦いたくない。


「なら、負けたら魔王の全てを貰おうか。それでどうだ?」

「いや、俺の全てがアダマンタイト一欠片ひとかけらと同価値なのか……」

「ならば私の全てでどうだ?」

「…………くそっ!欲しいけど勝てる未来が見えねぇ!」


 魔獣王の全てを貰える。つまり、人権(魔獣権?)も貰えるわけだ。そして肉体変化のスキル。……もう、分かるよな?


「……今代の魔王は、本当に面白いな」

「どうしたら勝てる……ライフブーストだけじゃ火力が足りないな……更に上……スキルオーバーブーストか?いや、でもスキルは2つだけだし……そういえば魔法技にも使えるのか」

「独り言が長い……」

「魔法技……ライフブースト?まさか、出来れば……」

「魔王、そろそろ──」

「よし!やるぞ魔獣王!お互いの全てを掛けて勝負だ!」


 ライフブーストをスキルオーバーブーストして戦う。どれだけ強くなるか分からないが、相当強くなるはずだ。


「よかろう!魔王よ、すぐに戦闘を初めても構わぬか?」

「……最初に準備時間をください!どうか、ハンデとしてでも!」


 使う前に倒されたらどうしようもない!という事に気づいてなかった。危なかった……。


「自らハンデが欲しいと頼むとは……今代の魔王は本当に面白い!好きに準備していいぞ!最初の一撃も魔王にやろう。好きな時にかかってくるがいい」

「ありがとう!──ライフブースト。スキルオーバーブースト、ライフブースト。」


 スマホのような物を開き、ステータスを見ながら強化していく。

 ライフブーストにスキルオーバーブーストをかけると、さらに新しい魔法技が出てきた。どうやら、スキルオーバーブーストのようにライフブーストをスキルオーバーブーストしないと使えない魔法技みたいだ。


「オーバーライフブースト」


 スマホのような物のステータス表示に大量のスキルや魔法技が増える。ステータスも、見た事の無いような数値になっている。

 ……オーバーライフブースト、どれほど寿命を消費しているのだろうか?


「早く決めればいいか」


 闇の槍をイメージする。サイズは長さ10メートル程。

 オーバーライフブースト状態なら、魔力も足りる。


「スキルオーバーブースト、オーバーブースト。オーバーブースト」


 闇の槍がさらに大きくなる。打ち出す前の時点で、この空間に収まりきらないほどに。

 どれだけ強くなってるんだよ……寿命がどれほど減ってるのか気になる。


「ま、待て!私の負けだ!魔王よ、私の負けだ!」

「俺の勝ちだな?」

「そうだ!魔王の勝ちだ!」


 オーバーライフブーストを解除する。闇の槍はすぐに霧のように消えてなくなる。

 同時に、意識が遠のく。反動か?…………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ