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異世界で魔王になったけど、観光したい。  作者: かしあ あお
一章
17/54

まぁ、分かっていたことだ。

「レスティ、魔王城の中を探索しようぜ!」

「……いいけど、どうして?」

「楽しそうだから?行こうぜ」


 さて、どこに行こうか。……どこに行こうか?


「どうしたの?」

「いや、探索って言っても、どこ行けばいいんだ?」

「言い出したの魔王だよね……」


 …………あ、そうだ。


「最上階とか行ってみないか?」

「最上階?ええっと、多分お風呂しか無いよ?」


 風呂?あったのか。……俺、異世界に来てから風呂に入ってないな。体を濡れた布で拭いてるだけだ。魔王だからなのか、汗とか無いんだよな。


「よし、風呂行こう。探索は風呂入ってからだ」

「私今朝入ったばっかりだよ」

「何回入ってもいいだろ。行こうぜ、レスティも暇だろ?」


「……まぁ、いっか」

「よし、決定だな。じゃあ、タオルとか準備するか」

「魔王様、こちらを。」

「……どこから出てきた、神託の者」

「柱の裏からにございます」


 なんで隠れるんだよ……。まぁ、影の中にいるよりはましだな。


「ありがとう。……レスティの分もあるのか」

「全て影の中に収納していますので」

「でも、レスティの着替えはレスティに渡そうな?……(神託の者、この中に下着は入ってるのか?)」

「申し訳ございません。(入っております)」


 小声で聞く。レスティの下着がこの中に……て、なんで神託の者がレスティの下着を?

 …………執事怖いな。


「魔王様、私も入る!」

「……どこから出てきた、血飲みの者」

「柱の裏だよ!神託の者と一緒に隠れてたよ」


 隠れる事が魔族の間で流行ってるのか?普通に出てきて欲しいんだけどな……。


「なら、もう4人で入るか。神託の者、全員分あるか?」

「こちらに。」


 影の中から服とタオルが出てくる。

 ……高スペックな執事というより、ドラ〇もんだな。きっとあと影は4次元に通じているのだろう。


「やった!早く行こう!私に触って?テレポートするよ!」

「わざわざテレポートしないでも歩いて行けるだろ」

「いいから、魔王様もこっち来て?えいっ!」


 血飲みの者に手を掴まれる。そしてすぐに恋人繋ぎになる。テレポートする時は必ず恋人繋ぎしている気がする。嬉しいからいいけど。

 全員が血飲みの者に触れたので、目を瞑る。


「魔王様、もう着いたよ?」


 声を掛けられてから目を開ける。

 ーー目を疑う光景があった。魔王城はヨーロッパにありそうな、城の上部、先端が尖った形になっている。つまり、上に登ると狭くなるはずだ。

 ……いやもう、ここ絶対に魔王城の上じゃないから。だって、()()()()になってるし。広さも千人くらい入れそうな広さだ。いくつも種類があって、どの風呂もそれなりに広い。


「師匠……ここは?」

「お風呂だよ!」

「レスティ、ここって魔王城じゃないよな?」

「うん。師匠が別の場所に転移したみたい」


 じゃあ、ここはどこだ……?


「魔王様、ここはどうやら隔離された空間のようです。おそらく、先代魔王様が残した物かと」

「先代魔王は何を造ってるんだ……」

「魔王様、お風呂ならここでもいい?」

「ああ、いいけど……これ、男湯はあるのか?」


 これだけの広さだ。2つも造れるのか?


「ここ、混浴だよ?」

「ありがとう先代魔王。……まじで?いいのか?」

「うん!魔王様、一緒に入ろう?」

「もちろん喜んで!」


 思わぬ幸せが舞い込んできた。ラッキースケベありがとう。


「師匠、私は?」

「一緒に入ろうよ!」

「魔王と神託の者がいるのに?」

「だめ?」

「うーん……」


 レスティが、混浴に来るのか……!?落ち着け、落ち着くんだ俺……。よし、冷静に考えよう。

 レスティと混浴の風呂。血飲みの者と混浴の風呂。よし、現状整理出来たな。……はは、俺今日死ぬかもしれない。幸せすぎて。


「レスティ、こんな機会もう無いよ?最初で最後のこのお風呂だよ?入ろうよ!」

「師匠がいればいつでも入れるんじゃないの?」

「魔王様がいないとこのお風呂に入らないよ。だって、ここは魔王様のお風呂だからね」


 先代、が抜けてるな。魔王ならいいのか?いいのか……。


「…………うん、私も入る」

「じゃあさっそく脱ごう!レスティ、こっち!」


 血飲みの者は楽しそうだな。俺も楽しみだ。……さて。


「神託の者、俺たちは服をどこに置いておけばいいんだ?」

「私が影の中に収納致します」

「ありがとう」


 服を脱いでいく。

 すぐに脱ぎ終わり、シャワーのあるスペースへ行く。

 ……レスティと血飲みの者はまだかな。早く来ないかな。あ、でも実際来たらまずい気がする。下半身と鼻血が。

 よし、魔法を使おう。

 闇を腰に巻き付ける。イメージはバスタオルだ。……そして問題の部分は闇のイメージをベルトにして足の間に固定する。

 鼻血は……そうだ。


「神託の者、俺が合図したら俺に治癒魔法を掛けてくれ。鼻血を止める程度でいいから」

「かしこまりました」


 準備は万端だ。さぁ、いつでも来い!いや、早く来い!レスティ、血飲みの者!



「お待たせー!魔王様、どうかな?」

「最高。ありがとうありがとうありがとう。俺はもう死んでもいい……」


 大きめの、バスタオルサイズのタオルを巻いた血飲みの者とレスティが来る。

 迷わず神託の者に合図(後ろにいるので、背中に隠して手招き)する。回復魔法のおかげで、鼻血が出ない。下半身は、痛いがまぁレスティと血飲みの者には分からないだろうから問題無い。


 ……さて、血飲みの者の作り物じみた美しい体を堪能したところで、レスティだ。

 レスティは、多分俺と同年齢くらいだが、胸は大きめだ。……どうやら、服を着ると胸が小さく見えるらしい。レスティの胸は予想より大きい。

 バスタオルだから普段見えないところが見える。太ももが、鎖骨が、エロい。ああ、これ治癒魔法無かったら鼻血で死んでたかもしれない……。


「魔王、そんなに見ないでよ……」

「お、おお……。レスティ、ありがとう。本当にありがとう。俺は今幸せだ」

「最低……」


 さて、幸せを噛み締めたところで……そろそろ入浴するか。8種類の風呂があるから、全部入ろうかな。

 とりあえず、1番近かった深めの風呂に入る。


「なんか、ぬるいな……」


 お湯の温度がぬるい。このくらいの温度なら、1時間くらいは浸かっていられそうだ。


「魔王様、サウナもあるよ」

「サウナか。どこにあるんだ?」


 ここは壁に囲われている。その中に建物のようなものは見えないのだが……。


「あそこの壁がドアになってるよ。そこから行けるから、行こう!」

「よし、行こう!」


 まさか美人と混浴の風呂に入って2人でサウナに入る事が出来るとは。人生分からないな。いや、魔王生か……?




 壁の1部がドアになっていて、そこを開けると個室になっていた。サウナだ。


「……魔王様、お願いがあるの。聞いてくれる?」

「お願い?いいけど、何か言い難い事なのか?」

「うん……私を、魔王様がいた世界に連れて行って!先代魔王様も、その世界にいるよね?」


 ……ああ、そういうことか。


「悪いが、俺には出来ない」

「そっか」

「あっさり諦めるんだな」

「無理だと思ってたからね」


「……俺には無理だけど、出来ると思われる人に覚えがあるから、聞いてみるか?」

「お願いします!魔王様、その人って誰?!」

「ええと……闇の神アリアだっけ?確かそう名乗ってた」


 人形少女って呼んでるけどな。心の中で。


「……あはは、魔王様凄いね」

「何がだ?」

「神様と面識があるなんて凄いよ!」

「面識というか、メッセージでやり取りしてるけどな。まぁ、その人が本当に神様か分からないぞ?」


 俺をこの世界に連れてきて、魔王にして、強い能力をいくつも渡すところを見ると神様みたいだけどな。


「魔王様に聞いてみて良かった!」

「…………そうか。」


 血飲みの者の嬉しそうな笑顔は、今まで俺と一緒にいたどの時よりもずっと楽しそうだった。つまりまぁ、そういうことだろう。



 俺ではなく、先代魔王の事が好きだということだ。俺は、先代魔王の代わりなのだろう。

 まぁ、分かっていたことだ。

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