魔法って怖いな。あと執事怖い。
「攻略出来なかったな……」
結局、ルナダンジョンは101階層までしか攻略出来なかった。
スキルを貰っておいて、攻略出来なかったな……次は攻略しよう。
「魔王、まずは修行だよ」
「聖地巡礼もしたいんだけどな」
異世転の聖地巡礼をまだほとんど出来ていない。
「聖地?魔王って何か宗教に入ってるの?」
「いや、異世転に出てた場所に行きたいだけだ。……アルティアダンジョンには行ったから、次は『灰都市アザレア』に行きたいな」
異世転で主人公がアルティアダンジョンの次に行った場所だ。確か元々は普通に大きな町だったのが、悪魔に襲われて滅びたとかそんな事が異世転に書いてあった気がする。
町中が灰を被っていて、雪の中を歩いているみたいだと感動していたから、是非その灰を見てみたい。
「え……なんで、灰都市アザレアに行きたいの?」
「だから聖地巡礼だ」
「あそこは聖地なんかじゃないよ!」
レスティの表情が険しい。何故だ?異世転の主人公は中心の竜を倒しに行っていたが、その竜は異世転の主人公に既に倒されてるはずだ。
「何かいるのか?竜は既にいないと思うが……」
「…………今は、先に師匠と合流しよう?」
「え?まぁ、いいけど……」
うーん……もしかしてレスティは灰都市アザレアで何かあったのか?地雷原な気がする。
待ち合わせていた場所で血飲みの者と合流する。さて、どうするか……修行の前に灰都市アザレアに行ってみたい。けど、レスティの反応が普通じゃなかったからやめておくか。
「師匠、魔王が灰都市アザレアに行きたいって……」
あれ、俺が気を使って言わなかったのに、レスティが言うのか。
「灰都市アザレアに?魔王様、どうしてそんなところに行きたいの?」
「景色が綺麗なんだろ?見てみたいんだ」
「魔王様、灰都市アザレアは今大変な事になってるんだよ?」
「大変な事?」
「昔、灰都市アザレアには白い竜が住んでいたんだよ。もう、とっくに倒されちゃったけどね」
「知ってるぞ」
「その竜が、最近アンデットになって暴れてるんだよ」
なんということだ。……いや、でも待てよ?俺も竜を狩る目的で灰都市アザレアに行けるのか。異世転の主人公と同じ事が……。
「よし、狩りに行こう」
「今の魔王様じゃあ勝てないよ?絶対」
「絶対……血飲みの者、絶対なんて言い切れるほど竜は強いのか?」
「うん。竜は強いよ。それに、魔王様は強くないからね」
あれだけの威力の魔法が撃てても、この世界では強くないのか。恐ろしいな、異世界。
「でも、倒したいならちょうどいいよね!」
「丁度いいって何がだ?」
「竜狩りの者は竜を狩るプロだからね!師匠になってもらえば色々教えてもらえるよ?」
竜狩りの者……名前の通り過ぎるだろ。まぁ、この名前で竜を狩れないなんて事は無いだろうとは思ってたけど。
「そうか、なるほど……よし、じゃあ修行するか。竜狩りの者は今どこにいるんだ?」
「んー…わかんないから魔王城で待ってよう!」
「……まぁ、いいか。別に急いでは無いからな」
でも魔王城だと、レスティは居心地悪いだろうな……。よし、最大限レスティに構おう。
「よし、レスティ、本読もうぜ!これだけ城が大きいんだから、多分図書館みたいに本があると思うぜ!」
「レスティ、魔法の練習しないか?ほら、俺の師匠なんだろ?」
「レスティ、何かしようぜ!」
「魔王様がレスティにべったりだよ!レスティ、何したの?」
「私は何もしてないけど……」
「あ、レスティと血飲みの者。どうしたんだ?」
「魔王様、魔王城に着いてからずっとレスティと一緒にいるよね?どうして?」
「え?どうしてって……」
魔王の手下でも無いのに魔王城は居心地悪いだろうから構ってたとは、言わない方がいいな。恩着せがましく聞こえる。
「魔王様?まさかレスティの事が……?」
「……まぁ、心配だったから?」
「なんで疑問形なの?魔王様、レスティの事が好きなんじゃないよね?」
「まぁ嫌いではないぞ?レスティは可愛いしな」
「魔王様……私とレスティのどっちが好きなの?」
「え?どっち……2人とも仲間みたいに考えてるからな……」
美少女ハーレムでダンジョン攻略、なかなか楽しかったな。なかなか出来ない体験だった……。
「むぅ……魔王様、私の事を恋愛対象に見てないの?」
「恋愛対象か……美人過ぎて偶像崇拝みたいに考えてるな」
「美人過ぎて……。魔王様、私はどうすればいいの?!」
「いや、どうすればって……レスティ、血飲みの者はどうしたんだ?なんか今日はやけに絡んでくるんだけど……」
「魔王が私とずっと一緒にいたからだよ」
つまり、一緒にいたから俺がレスティのことを好きなんじゃないかと思ったのか。
……別に嫌いではないし、好きか嫌いかの2択なら迷わず好きだと言えるくらいはレスティのことは好きだけど。
まぁ、血飲みの者が好きか2択で答えろ。という質問でも迷わず好きだと答える。当たり前だ。あんな美人を嫌いになるはずがない。
「なんというか、血飲みの者って性格が可愛いな。なんというか、性格も言葉も見た目も全てがあざとい」
「どうしたの、急に……魔王、ちょっと気持ち悪いよ?」
レスティのゴミを見るような目は、心に刺さるな……。
「魔王様、ありがとう……!良かった、安心した!」
「安心?」
「私、可愛いんだよね?」
「ああ。間違いなく可愛い。綺麗で可愛くてあざとい」
「やったぁ!」
あざといは褒め言葉なのか?まぁ、いいか……。
「師匠、どうして自慢げに私を見るの?……魔王、私は可愛い?」
「可愛い。美少女最高ありがとう」
「……魔王は、さらっとそういう言葉を話せるよね」
「ありがとう?」
「可愛いとか、美少女とかだよ」
「事実だからな」
「……はぁ」
なんでため息をつくのか……。
「そういえば、魔王城に着いてからまだ神託の者と強欲の者に会ってないな」
「神託の者ならずっと魔王様の影の中にいるよ?」
「は?……え、影?」
すぐに自分の足元、影を見る。……普通だ。
「何も無いぞ?」
「神託の者、出てきなよ」
「私は魔王様と闇の神アリア様の命令しか聞きませんぞ」
血飲みの者の言葉に返事をする為になのか、影から人が出てくる。神託の者だ。
……いや、なんでいるんだよ。いつからいるんだよ。影の中って、魔法か?
「……神託の者、色々と疑問があるんだがとりあえず今後俺の影の中禁止だ」
「かしこまりました」
「それで、いつから影の中にいた?」
「魔王様が魔王城を出発なされる直前からにございます」
ああ、つまりダンジョンに入っていた時もずっといたのか。
「なんで影の中に入っていた?」
「魔王様の身の回りのお世話をする為にございます」
……そういえば、こいつに好きにしろって言った気がする。いや、言ったな。あー、なるほど好きにしたということか。魔法って怖いな。あと執事怖い。
「……強欲の者は?」
「強欲の者なら大書斎の奥に居たよ?」
「え、どこら辺にいたんだ?」
「ええっと、奥の方に……魔王に強欲の者がいるよって言ったよ?」
「言ってたか?もしかして俺が本を読んでる時に言ったのか?」
「そうだよ?」
「ああ、ごめん聞き流してた」
「……」
本を読み始めると集中し過ぎる癖があるんだよな……
「魔王様は2人に用事があるの?」
「いや、どうしてるのかと思っただけだ。竜狩りの者はいつ頃魔王城に来るんだ?」
「……神託の者、聞いてる?」
「申し訳ございません……っ!私が竜を狩っていいと言ってしまったばかりに……!このミス、私の命を持ってーー」 「待て!別にいいから!待ってれば来るんだろ?」
「はい。魔王様が魔王城に来たことは連絡してあるので、必ず魔王城に来るはずでございます」
「助かる。連絡か……」
この世界の遠距離連絡手段は何だろうか?スマホ、は無いしな……電話とかあるのか?魔王城の中を探してみるか。暇な時に。
……あれ、ほとんど暇だな。よし、今日はもうそろそろ寝て、明日魔王城を探索しよう。




