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異世界で魔王になったけど、観光したい。  作者: かしあ あお
一章
14/54

何で急に…………

 結局、基本的にレスティが魔物を処理しながら進む事になった。俺の魔法は、強いが魔力の消費が多すぎる。さらに、慣れてないから近接戦闘は危険だから、闇のナイフで戦う事もダメだと言われた。

 ……まぁ、実際ナイフ1本で狼と戦うのは嫌だが、魔王スペックなら大丈夫な気がするんだよな。


「魔王は今どのくらい強いの?」

「ん?どのくらい……これくらいだ」


 スマホみたいな物の自己ステータスを見せる。どのくらいと言われても、比べる対象がいないからな。


「……読めないよ」

「あ、そうか……」

「魔王様、その文字、もしかして魔王様の世界の文字かな?」

「日本語だ」


 数字もあるが、まぁいいだろう。どうせ分からないんだからな。


「先代魔王様が、似ている文字を使ってたよ。懐かしいなぁ……」

「先代魔王も日本人か」


 異世界転移は日本人だけなのか?まぁ、俺と先代魔王だけが日本人なだけかもしれないが。


「あ、レスティ、右の丘の奥に狼が3匹いるよ?」

「師匠が狩ればいいと思うよ……?」

「レスティ、俺が行ってもいいか?」

「まだ魔力回復してないでしょ?私が行ってくるよ……」


 魔物と戦いたいんだけどな……。魔力吸収も試してみたいな。やらせてくれないけど。





「1階層上がるのに2時間くらいか……。200階層まで上がるのにはあと300時間以上かかる計算か。だいたい12日と半日だな」

「魔王、それだと休む時間が無いけど……」

「……そうだな」


 結構かかるなぁ……異世転の聖地巡礼したいのにな。


「血飲みの者、なんとか早く200階層まで着けないか?」

「んー……走る?」

「……何も無いんだな」

「私が魔王様を背負って行こうか?私はこう見えても力あるんだよ?」

「いや、それは死にたくなりそうだからやらなくていい」


 お姫様抱っこされた時は本当に死にたくなったからな……。


「死にたくなるの?」

「ああ、死にたくなる」


 …………地道に歩いて行くか。それしか無さそうだ。




 途中、安全な階層で夜を明かしながら進んでいく。


「やっと、100階層か……」

「ここから、魔物が強くなるから私が戦うね?」

「レスティじゃ倒せないのか?」

「倒せると思うよ?けど、今までみたいに瞬殺は出来なくなっちゃうからね」


 つまり火の玉で焼かれたり氷の槍で貫かれたり風の刃で体を切断されても瞬殺されないのか……。


「まぁ、結局は血飲みの者が瞬殺するから変わらないな」

「あ、そろそろ強い魔物と戦うから魔王様とレスティは後ろに下がっててね?」

「強い敵?どこにいるんだ?」

「んー、確か101階層に上がる階段の前にいるよ」


 ボスか?ゲームでいうところの中ボスか?





 それから5分程歩くと、血飲みの者が言っていた魔物が見えた。


「あれは竜か?青い綺麗な鱗だな」


 そしてかっこいい。イケメンだ。なんというか、キリッとしている。


「うん。前に来た時は竜狩りの者がすぐに倒したから、どのくらい強いのか分からないんだよね」

「なら弱い可能性もあるんじゃないか?」

「竜狩りの者が強いって言ってたから、強いはずだよ?」


 竜狩りの者ってまだ会ったことも無いんだよな……。


「まぁ、分かった。なら任せる」

「師匠、竜相手に1人で大丈夫なの?」

「行ってくるねー」



 ……結論から言うと、血飲みの者は勝てなかった。

 魔法無効化というスキルを持っている事が俺のスマホみたいな物で分かり、撤退したのだ。いや、よく考えたら俺達3人は全員が魔法使いなんだよな……。


「とりあえず、次は俺が全力で魔法を撃ち込んでみる。無効化しきれないという事があるといいんだが……」

「まぁ、他に出来ることも無いからね。魔王、頑張って」

「おう」


「魔王様、勝てたらレスティと私を好きにしていいよ!」

「師匠?!」

「……本気を出す時が来た」


 やる気に満ち溢れすぎて体から力が漲ってくる。これなら……っ!




「で、だめだったのね」

「なんだあれ……全力で雷叩き込んだのにかき消された」

「魔王様、次頑張ろう!」


 ああ、レスティと血飲みの者を好きに出来る権利が……。


「とりあえず、今日は休もう?魔王の魔力が無いからね」

「……ここ、100階層なのに魔物がいるから、休むなら90階層まで戻ることにならないか?」


「101階層が安全な階層になってるよ?」

「じゃあ、行くか!って、竜が邪魔で行けないから戻るんだろ?」

「魔王様は、魔法以外に武器は無いの?あ、私は無いよ!」


「自慢げに言うなよ……ええと、闇のナイフは魔法か?スキルで作っているけど」

「あ、それなら通るかもね!」


 かもねって、確証は無しか。だいたい、ナイフ1本で竜と戦うとか無理だろ。ナイフもあるって言ってみただけなんだけどな。


「魔王、それってナイフ以外に作れないの?」

「いや、何でも作れるな」

「なら、弓はどうかな?」

「当てる自信が無い。むしろ外す自信がある」


 使ったことすら無いからな。作り自体は知ってるから作れるだろうけど。


「なら私が撃つよ」

「使えるのか。なら、作るか…………」


 あ、魔力が無い……さっき張り切り過ぎたな。


「魔王?」

「いやぁ、魔力が無くて作れない。悪いな」

「……役立たずだね」


 酷いな……まぁ、割と事実ではある。

 なんとか名誉挽回したいな。……そういえばーー


『ライフブースト』

「魔王?」


 ライフブーストを使って、魔力を確認する。

 ーーどんどん回復していく。1秒につき1は魔力が回復する。これならすぐに弓を作れる。


「魔力を回復してる」

「便利だね……」

「寿命を過剰に消費してるけどな」

「ちょ、魔王?!止めなよ!そんなスキル使っちゃダメだよ!」


 ええ、なんでそんなにキレてるんだよ……。


「魔王様、ごめんね!後でレスティの胸揉ませてあげるから!」


 血飲みの者が謎の宣言をするのと同時に、突然意識が遠くなる。ああ、魔法か?何で急に…………。




「師匠、最後の一言必要だった?」

「だって魔王様、私よりレスティの事が好きみたいなんだもん。羨ましいなぁ……」

「師匠……私は魔王の事は好きじゃないから、胸を揉まれるのは嫌だよ?」


「魔王様は私よりレスティの事が好きみたいだから……ね?」

「ね?じゃないよ……師匠?なんで自分で言ったことに傷ついてるの……」

「だって……」


「師匠、めんどくさいよ……。それより、竜はどうするの?いつまでも魔物が出るこの階層にいるわけにも行かないよね」

「私が魔王様の力を借りて竜を倒すよー。それが1番早いからね」

「力を借りる?今は師匠が気を失わせているけど……」


「私は吸血鬼と魔族のハーフなんだよ?血を吸って、少し魔王様の闇を一緒に借りればいいんだよ!」

「でも、それだと魔王は……」

「うん、多分ステータスが少し下がっちゃう。だから、レスティが胸を揉ませてあげて?」


「なんでそうなるの?!師匠の方が大きいんだから、きっと師匠の胸でも喜ぶよ?」

「胸が大きくても魔王様は私よりレスティが好きなんだよ……?」


「……もう分かったから、師匠、私に嫉妬しないで?別に私は嬉しく無いからね?」

「む、なんかむかつくよ?」

「師匠めんどくさいよ……」

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