表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で魔王になったけど、観光したい。  作者: かしあ あお
一章
10/54

男として、こんな美人と噂になるのは誇らしい事だ。

「おーい、何だこれ?何かあったのか?」


 ジャンに後ろから声を掛ける。


「ドラゴンに冒険者が……って!ガキじゃねぇか!」

「ガキが名前みたいになってないか?!」

「無事なのか?!」

「無事も何も……ああ。うん、大丈夫だ。()()帰って来れた」


 ダンジョンの管理者になりました。なんて言えないよな。なった理由も先代魔王がやっていたからだし、説明しようとすると俺が魔王だと言うことになる。


「偶然……まぁいい」


 釈然としてないような口調だな。でも、最後のまぁいいって俺が無事ならいい、という意味だよな?やっぱりジャンは優しいな。ほぼ初対面の俺のためにここまでしてくれるとは。


「なぁ、この10人くらいいる冒険者って……」

「ガキ……空太を探索しろって依頼が出てんだよ。ったく、勝手に依頼出しやがって……タダじゃ置かねぇ……」


 ああ、パーティーメンバーの誰かが俺の捜索を依頼として出したのか。それでジャンは受けてリーダーをやっている、という事か。

 言葉の割にリーダーとして率先して俺を捜索しようとするジャン、良い奴だな。本当に良い奴過ぎる。何かしらのお礼をしないとな……。


「あの、これで依頼達成になりますか?」


 冒険者の1人が心配そうにジャンに聞いている。確かに、探すまでもなく自分から出てきたからな。


「達成だ。さっさと撤収するぞ!」

「「「はい!」」」

「ありがとう、ジャン。心配してくれて」

「あ?違ぇよ。ただ依頼をこなしに来ただけだ」


 ツンデレ?さすがにムキムキのおっさんのツンデレは需要無いな……。






 ジャンと一緒に冒険家ギルドに行くと、酒場でレスティと血飲みの者が座っていた。テーブルにはコップしかないので、食べに来た訳では無いな。さて、2人をルナダンジョン攻略に誘うか。


「な、少し話いいか?」

「そういうのはーーって、魔王……空太じゃん。大丈夫なの?」

「おう。何も無かったからな」


 俺が怪我するような事は何も無かった。


「魔王様ー!もう、昨日また明日って言ったのにひどいよ!」

「あ……ごめん。早く金返したかったから」

「むぅー……明日は一緒に入ってもいいよね?」


「もちろん!」


 俺から誘う手間が省けたな。


「やったぁ!」

「……で、明日なんだが、一緒にルナダンジョンに行かないか?」

「ルナダンジョン?いいよー!」


 悩まず即決か。理由とか聞かないでいいのか。


「私も行く!いい?」

「レスティも戦えるんだよな?」

「空太よりは強いと思うよ」


 ……美少女名前で呼ばれるのって結構いいな。


「まぁ、俺の師匠だもんな。じゃあ、是非一緒に来てくれ」

「うん!ルナダンジョンかぁ……師匠のテレポートで行けるの?」

「行けるよ。行ったことあるからね」

「じゃあ、すぐ行こう!夜になる前に入らないと!」


 夜になる前に入らないといけないのか?


「じゃあ、人目の無いところに行こう?ここでテレポートすると目立っちゃうからね」

「まぁ、そうだな。どこに行ってテレポートする?」

「トイレでいいんじゃない?」


 トイレか……この世界は男女同じだから入れなくは無いけど……


「師匠、トイレはちょっと……周りの人に変な誤解されるよ?」

「魔王様は、私と噂になるの嫌?」

「全然問題無い。むしろ誇るべき事だな」


 男として、こんな美人と噂になるのは誇らしい事だ。


「じゃあ行こう!ほら、レスティも行くよ」

「……私は良くないんだけど?」

「レスティ、そんなにキレるなって。大丈夫、人の噂なんてすぐ消えるから」

「まぁ、そうだけど……」


「師匠として命令します!レスティ、おいで?」

「師匠……分かったよ。もう、しばらくこのギルド来れない……」


 2人と一緒に3人でトイレに入る。周りから注目を浴びたが、ここなら誰にも見られずテレポート出来るだろう。


「レスティは手を出して?魔王様は、私の好きな所に触って?テレポートするからね」

「好きな所……だと!本当にいいのか?」


 やはりここは胸一択か?!それとも太ももに縋り付くか?いや、それは変態過ぎるな……やはり胸か!よし、胸にーー

 胸に手を伸ばそうとしたところで、レスティと目が合う。いや、正確には、レスティが心底軽蔑したような目で俺を見ている事に気がつく。

 ……レスティが繋いでいる手と反対の手を握る。レスティの目が、少し優しくなる。

 ーーせめてもの反抗として、繋ぎ方は恋人繋ぎだ。このくらいならレスティに許されるはず。いや、許されてほしい。


「魔王様、好きな所に触っていいんだよ?」

「い、いや、まぁ、俺は手で充分だ。ほら、行こうぜ!」


 血飲みの者がチラリとレスティを見て、察したのか少し笑ってからテレポートを使う。


 目の前にアルティアダンジョンとは別の、どこか似ている天高くそびえる建物が現れる。

 ……正確には俺達が建物の前に現れたんだけどな。


「じゃあ、さっそく入ろうよ!」

「レスティはやけに楽しそうだな」

「ルナダンジョンだよ?」

「ルナダンジョンだな」


 ルナダンジョンって楽しいダンジョンなのか?


「魔王様、ルナダンジョンは景色が幻想的に綺麗な有名なダンジョンなんだよー」

「景色が幻想的か……いいな、楽しみになって来た」


 魔法のある世界の幻想的とはどんなものか、気になる。相当綺麗なんだろうな……。


「私はこっそり入るから、2人は普通に入ってていいよ!」

「こっそり?」

「私、指名手配されてる魔族だからね……」


 ああ、確かに魔族、魔王と人間、勇者は敵対しているからな。バレたらまずいのか。


「じゃあ、行くかレスティ」

「もうレスティは行っちゃったよ?」

「ちょっ!待って、クソ、足速いなレスティ

 ……!」




 ルナダンジョンの入口まで、レスティに追いつく事は無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ