その3
今夜はスイートツリーホームで恋詠の歓迎会。先輩の雪は、礼理と一緒にシチューを作っています。
「ふんふんふ~ん。まずはじゃがいもをコロコロにして~」
「三森先輩は、よく料理するんですか?」
「もう礼理ちゃん、雪ちゃんって呼んでって言ったでしょ?」
「はい、雪先輩」
「むー、ガード堅いわね。……料理は昔から趣味なの、実家が民宿で」
「それはいいですね。うちは両親共働きで、冷凍食品なことも多かったです」
「今は伯母さんのところに下宿しているのよね。よかったら料理教えてあげたいわ」
「教えて……もらうには、いささか独特な調理に見えますけど……。適当に切ってますよね、それ」
「食べられればいいのよ、ゴロゴロしてた方が楽しいでしょ?」
「あ、美味しさじゃないんですね」
「じゃあ、礼理ちゃんには人参切ってもらおうかしら。大きさは適当でいいわ」
「えーと、ピーラーあります?」
「あら、皮は剥かなくていいのよ? 皮に見えるけど、本当はここも身なの。豆知識~」
「それは知らなかったです。タメになります」
「でもせっかくの恋詠ちゃん歓迎会だし、きれいに剥いた方が見栄えもいいわよね」
「いやどっちなんですか。ってか、そのじゃがいもは皮剥かずに切ってるじゃないですか」
「じゃがいもの皮は美味しいからいいのよ」
「分からん……」