その8
学校探検を続ける二人は、二年生の教室がある二階を訪れます。
「ここが食堂でー、あっちが体育館、っと」
「大体回ったね。よし帰ろう」
「まだ部室棟があるよ」
「えーいいよ、どうせ部活やんないし」
「もー、ずっとお家でゲームしてるのよくないよー」
「ゲームは日々の疲れを癒やしてくれる……あ、スタミナ溢れる前に消化しなきゃ……」
「帰ってきて礼ちゃん……。あれ、茉子ちゃんだ。おーい」
「にゃっ、なに!? ……恋詠じゃない、びっくりさせないでよね」
「そんなとこ隠れて何してるの?」
「しっ! ……やっぱり、今日は来てないのかしら。上級生は登校日じゃないだろうし……」
「知り合い?」
「ええ……一応。向こうが覚えてくれてるかは分からないけど……」
「?」
「中学のバスケ大会で会った人なんだけど、その人が……って、何ぺらぺら話してるのよ茉子! 今のは聞かなかったことに──」
「お、恋詠に礼理ちゃんじゃん。おっす」
「あ、りあちゃ──」
「りあ様!?!?」
「……りあ様?」
「あっあのっ羽園中学の五月茉子ですっあのっ一昨年に大会でお世話になってっあのっそれからっ」
「わちょ、ちょっと落ち着こう、な?」
「はあ、はあ、すみません、落ち着きます」
「茉子ちゃん茉子ちゃん、頭から湯気が出てるよ」
「ううっ、その、四堂りあ先輩、ですよね……? 一昨年の大会で試合させていただいて……」
「……ああ! 試合の後ちょっと話したっけ」
「! 覚えていただけてるなんて! ありがとうございます……!」
(勘だけど……)
「りあちゃんバスケやってたんですか?」
「うん、高校ではやってないんだけどね。これでも中学ではスタメンだったんだぜー」
「えっっっ今バスケやってないんですか!?」
「わわっ近い近い! うん、バスケ部は中学で引退。体動かすのも楽しいんだけど、他にやりたいこともあったしさ」
「そんな、もったいないです! あんなにかっこいいプレーをしてたのに……」
「はは、期待してたのならごめん……あっ、忘れてた」
「りあちゃーん……お話しする前にどっかで降ろしてー……」
「わーっ! りあちゃんの背中に雪ちゃんが!?」
「いや気づくの遅いよ」