その5
地図を持ち去ったカラスをひたすら追いかける恋詠と茉子。走っても走っても距離は離されるばかりです。
「返しなさ~い!」
「カラスさ~ん!」
「……はぁっ、はぁっ、もう、無理」
「見えなくなっちゃったねー。……あっ、地図引っかかってる!」
「ほんと!? よかったぁ……って、さすがにボロボロね。一応読めるけど……」
「これで一件落着! あとは学校に……ってあれ?」
「こ、今度は何よ、もう勘弁して……」
「茉子ちゃん茉子ちゃん、その看板!」
「看板? ええと……澄花高等学校……」
「着いた! 澄高!」
「ほんとだ……時間は!?」
「時間は……九時五分、まだ入学式には間に合いそう!」
「よし、体育館まで行くわよ!」
*
『──えー、であるからにして、我が校は──』
(潜入成功ね!)
「なんでそんなコソコソしてるの?」
(バカ恋詠っ、しーっ! バレたら怒られるじゃない! とりあえず適当な列に並ぶわよ)
(見えないよー)
(ぴょんぴょんしないで! 校長なんて見えなくていいでしょ!)
(そういえば、どのクラスか見てない! どこ並べばいいんだろ)
「ああもう、だから適当な列でいいって──」
「そこの二人、ちょっとこっちに来ること」
「ぎくっ」
「あ、先生、クラス分からなくて~」
(恋詠、度胸あるわね……)