その1
春の日の朝、今日は恋詠の入学式。
大きな樹のシェアハウス「スイートツリーホーム」のキッチンでは、雪が朝ごはんの用意をしています。
「遅刻遅刻~!」
「朝から元気ね、恋詠ちゃん。今日は制服でお出かけ?」
「雪ちゃんおはよう~。今日入学式なんですー! アラーム直すの忘れちゃって」
「あら! 時間大丈夫なの?」
「あと一時間で式始まっちゃうから……ええと、歩いてどれくらいかかりますか?」
「三十分もあればつくわ。道は大丈夫?」
「多分大丈夫です! 朝ごはんの時間あるかな……」
「ふふ、それならすぐ作るわね」
「いえいえ、大丈夫です! 自分のミスは自分でなんとかしてみせます!」
「そう? 今日から恋詠ちゃんも高校生だものね」
「はい! ……えーと。何があるかな~……冷凍ごはん……卵……よし、目玉焼きにしよう!」
「フライパンはこれ使ってね」
「ありがとうございます! 卵を割ってー、かき混ぜてー」
(かき混ぜる……?)
「あ、間違えちゃった! どうしよう……」
「それじゃあ、卵焼きかスクランブルエッグでもいいんじゃない? お塩を振ればおいしいわよ」
「ぐるぐる……あ、とろけるチーズも入れたらおいしそう!」
「いいわね。フライパンに焦げ付かないように注意してね」
「あ、チーズにご飯絡めたらおいしそう!」
(おいしそうではあるけど……)
「お肉とネギ入れたらチャーハンになるのでは!?」
「もう、時間ないのに創作料理しないのー!」