その1
日本の都心の郊外に、花と木々に包まれたのどかな町がありました。
住宅街の一角にそびえ立つのは、窓とバルコニーのついた大きな樹の家。
シェアハウス「スイートツリーホーム」には、今日も穏やかな春の朝が訪れようとしています。
*
シェアハウスの一室。おっとりとした黒髪少女と寝ぼけまなこの金髪少女が、こたつを挟んで団欒しています。
「春ねー」
「ふぁぁ……」
「りあちゃんりあちゃん、今日何の日か知ってる?」
「んむ……眠い日……」
「違うわよりあちゃん! 今日は新しい子が来るのよ!」
「うるひゃい雪……静かにして……」
「こうしちゃいられないわ、歓迎の準備しなくちゃ! どんな子かしら、仲良くなれるかしら」
「…………こくっ」
「……もう、春休みだからってぐーたらして。お布団で寝ないとぶたさんになっちゃうわよ?」
「……………………はっ!?」
「あら、やっと起きた」
「今何時!?」
「い、今? 八時……十五分?」
「ぎゃーーっ! 予定あるから起こしてって言ったじゃん雪ーー!!」
「起こしてって、起きてたじゃない」
「起きてないもん! もー、また遅刻して怒られちゃう~!」
「お……お……」
「着替えて、化粧して……間に合うかなあ。ごめん雪、適当でいいからご飯用意してくれる?」
「お……起きなさーーい!!」
「うるへー! もう起きてるわーー!!」
毎週金曜日夜更新予定。