92話
――シルバーウルフのシウとギンを連れて世俗から隠れたアクオス、そんな彼の元を訪れたのは金色の獣を連れたあの学校で一番偉いはずの存在だった……
「さすがに、ボクもここに来客があるとは思いませんでした……」
「まぁ、そうでしょうね。でもここのような場所なら私だけではなくあなたもよく知る者達もおそらくは容易に来ることができるでしょう」
彼らの場合はまだ契約が残ってるからこれないでしょうけどね、とその人はつけ足していたが。
それから、金色をした獣である金孤を軽く撫でてからその人は真剣なまなざしでアクオスを見た
「この世界はもともと実験用として作られた箱庭だったんですよ」
「はこ、にわ……?」
「はい。私達3人を柱として生体が居座ることができるか……確かそんな理由だったと思います」
彼はゆっくりとだが、確実にアクオスへと告げる。
この世界の話を……
「アクオス君、君は気づいているんじゃないんですか? それが私の他に■■と△△だと」
「……え、っと……今なんと……?」
「あぁ、さすがに彼らが自分で隠しましたか……」
「マギキャットさんとブレイブさんですよね? もしかしなくても」
「はい。ただ彼らは柱としてこの地に降り立って間もなく唯一国王として存在していた者とうっかり契約を交わしてしまったんですけどね」
うっかりだったのか……アクオスは思わずそう小さな声で呟いてしまったが、その人もそのことに関しては呆れているのか、小さく苦笑いを浮かべていた。
「まぁ、私も彼らのこと言えないんでしょうけど」
「あ、あなたは何を……」
「柱としての権限をこの金孤にあげただけですよ。この子にそもそも同種が現れることがないってわかってましたし」
それからいろいろと旅行してみました、という言葉に金孤は少しだけ怒ってることをアピールするかのように尾で床を叩いていた
だって、その旅行はこの世界の中だけなんて誰も言っていないから……
「その旅行の途中でした、突然ある声が私の耳に届きました。もっともそれは直接耳に聞こえたわけじゃないですけど……“彼女達のいない世界で自分じゃない何かになりたい”……そんな言葉が」
その言葉を聞いた瞬間アクオスは思わず立ち上がった
だってそれは……かつて自分が茜だった頃に、意識が遠のくあの瞬間に願った事柄だったから……
アクオスのそんな表情を見ていたその人は小さく笑みを浮かべた
「だから私は君をこの世界に連れてきたんですよ。アクオス君……いいえ、茜さん」
そして、だからこそ君の家族もまたこの世界で生まれ変わったんですよ、とつけたされた言葉にアクオスは瞳を揺らした
自分の願いのせいで家族を巻き込んでしまったのではないかと……
「あぁ、勘違いしないでください。それは君の家族達の願いでもあったんですよ。君とまた話がしたいという……いいご家族だったんですね」
「っ……」
アクオスの柔らかい頬をひとつの雫が伝い落ちる……もっともそれを流した当人も目の前でそれを見てる人物もそれには触れないが
「さて、この場に私の権限で必要最低限でないものはない状態にしますね。1人と2匹の時間は長いでしょうから」
「……あの、ありがとうございます……」
この世界に転生させてくれて、友と呼べる人達と出逢わせてくれて、家族に逢わせてくれて……
それらの意味を含めてアクオスは精いっぱいの言葉を彼に告げた。
彼はそれに応えないが。
「たまに私も遊びに来ますね。きっとあの2人も遊びに来たりするんでしょうけどね……」
――世俗から切り離された森の奥にある小さな家には、見た目の変わらない少年の魔法使いととても大きなシルバーウルフの2匹が暮らすと言う……そしてその魔法使いの名は……
次回、エピローグ!(終わりとは言ってない)




