7話
わんわんの続き
――大きなシルバーウルフの足にぶつかったアクオス、それに慌てたのがウィントだったが……
「……え?」
その眼前に広がった光景はそれこそ驚きしか出てこないのはおそらく仕方のないことだろう
シルバーウルフからすればほぼ確実に一口で絶命させることも容易なはずの幼い少年であるアクオスに鋭い牙や爪を向けることなくそのまま足で受け止め、まるで気づかうように顔を寄せていた
「ありがとー」
アクオスが礼を言えばシルバーウルフはそれに応えるように一鳴きしてから
小さいシルバーウルフにさっさと水を飲めと促すように尻を鼻で押していた。
「あ、にいさましるばーうるふ、おみずのみにきたんだって」
「そ、そっか。じゃあ少し避けてあげようか」
「うん!」
2人は小さなシルバーウルフが水を飲んでるのを少し眺めてからウィントがアクオスの手を引いて家の方へと戻って行った。
その時、大きなシルバーウルフがじっとアクオスを見ていたことにも気付かずに……
その日もいつもの足湯で兄は森であったことを両親に話をしていた。
「まぁ……シルバーウルフが……」
「はい、しかしまさかアクオスがあそこまで警戒しなかったことには驚きました」
「しるばーうるふ、きれいでかっこよかったです!」
そんな会話をした翌日、幼いアクオスは1人、ウィントと歩いた場所をなぞる様に森の奥に向かっていた。
「これはダメなので、これはおみずで……」
何をしているのかと言えば前日の復習。それから……
「あ、こんにちはーしるばーうるふ」
シルバーウルフに会うこと、それが彼の一番の目的だった。
大きなシルバーウルフはアクオスの挨拶に一鳴きを返してからその場に伏せて、小さなシルバーウルフを自由にさせながらチラリとアクオスを見た。
その視線は、アクオスにこちらに来いとでも言ってるようで……
疑いなど何一つ持っていないかのようにアクオスは呼ばれるままにシルバーウルフに近づき
そして、モフりと抱きついた。
抱きつかれたシルバーウルフはやはり嫌そうな顔もせず、ただゆらりと尾を揺らし、また小さく一鳴きした。
「けーやく?」
アクオスの耳にはそう聞こえた気がした。
シルバーウルフの一鳴きに含まれていたのはそのたった一言だけ……
要訳すれば
――自分と契約をしよう、身と心の揃わぬ者よ――
と、いった感じのことを。
そしてまた、アクオスにその言葉を拒否理由も意味もなかった。
(契約……ていうかシルバーウルフはボクがわかったっていうこと……?)
「【ボクは、けものしゅしるばーうるふとけいやくをつなぐことをのぞむ】」
アクオスは契約についても書庫にあった本ですでにやり方を学んでいた。
ただ、まだ言葉はうまく話せていない為にどこかたどたどしさはあったが
「【ボクのなは、“アクオス・オウ・ヒセント”なんじにあたえるなは“シウ”りょうしょうならばこれをもってけいやくとする】」
アクオスがそっと右手を差し出すと、大きなシルバーウルフはひとつ遠吠えをしてそのアクオスの小さな手に右前足を軽く乗せた。
それが契約了承の合図。
アクオスと“シウ”と名付けられたシルバーウルフの間に見えない何かが繋がり、一瞬、重なった手と前足の間にも光が走り、契約はいともあっさりと完了された。
その後、“シウ”と名付けられたシルバーウルフと一緒にいた小さなシルバーウルフともアクオスは契約を行い、そちらは“ギン”と名付けられた。
「よろしくねーシウ、ギン」
と、いうことでわんわんことシルバーウルフ2匹と契約したアクオス少年(5歳)
……あれ、12歳上が17歳なら5歳でいいんだよな……?
ちなみにシウとギンは親子だけど……性別どっちにしよ……