3話
まだ魔法は使えませんの図。
――それは、アクオスがメイラを連れていつものように書庫へ来た時のことだった。
もちろん……と言っては問題があるだろうが、メイラはアクオスが本を読みだして1分経たないうちに堂々とうたた寝に陥っていたのは言うまでもなく……
だからこそ、アクオスはチャンスだと思っていた。
(確かあのページはこの辺に……あった)
彼はいつも開いている魔道書の初級項目を開き、それからそこにある魔力感知のページを一字一句読み間違えないように真剣に熟読して
何度かメイラが起きてないことを確認してから一度深呼吸をして魔力感知の実験を始めた。
目を閉じ、ゆっくりと呼吸をしながら周囲の音に耳を傾ける
耳に入ってくるのはメイラの寝息に鳥の囀り、廊下から聞こえる人の歩く足音にささやかな生活音
木々の葉が揺れる音やそれを揺らす風の音、それらが全て当たり前にあるはずに妙にはっきりと聞こえてくる
次にアクオスは周辺に意識を向けていく
そこにある生き物が持つ気配、空気中に漂う存在それらすべてを認識するように……
そしてゆっくりと目を再び開いて行った時、アクオスは自分の身の内にも力のようなものを感じた。
それが俗に言う“魔力”という存在なのだと気づくにはそう時間もかからず……
(ボクにもある……のかな?とりあえずしばらく感知の練習繰り返してようかな)
――アクオスは、それからルウリが呼びにくるまで何度も魔力感知の練習を繰り返して2日後くらいには呼吸をするように感知することができるようになっていたのは彼だったからか……
アクオスが魔力感知を覚えてから1年と少し、彼は父親から家の敷地内だけではあったが初めて外出の許可をもらい、外でも感知の練習をするようになっていた。
とは言え、傍から見ればそうとはわからないが。
(うん……把握と感知はだいぶ出来るようになってきたかな。でも、どうやれば使えるのかな……)
家の庭には小さな池があり、アクオスはその池の水を両手で掬いながらそんなことを考える。
魔道書の初級項目にはきちんと感知からの活用方法も載ってはいたが、アクオスにはそれがどうにもしっくりとはいかなかった。
それ故に彼は早く魔法を使ってみたいと思いながらもそこで躓いてしまっていたのだった……
そもそも、彼は自分が扱うことのできる属性をまだ確認していない。
というのも魔法を未だ発動させることができていない理由だということさえまだ気付いていなかった
そしてまた、自身が扱うことのできる属性を確認する方法は魔道書の初級項目にしっかりと記されていたのだが、彼はまだそこまで読めていなかった……
「アクオス、そんなところにいたら落ちてしまうよ?」
「あ、にいさまー」
小さな池であっても溺れる危険性はあるから、とウィントは軽々とアクオスを抱き上げ家の方へと戻って行くのだった。
アクオス自身、ある程度はこうなることも予測はしていたが少しだけ、兄を過保護に思いつつはあったけど。
――その後、アクオスはすぐにウィントと別れていつものように書庫に籠って魔道書を読み進めてようやく扱える属性の確認をすることを知り、ある意味の衝撃を受けていたのは言うまでもない……
てことで次回には属性確認ですかね。一応こんな魔法使わせる的なのはある程度ありますけど。