30話
――村の片づけも終わり、怪我人の治療や物言わぬ存在になった盗賊達の回収も終わりに近づいた頃
力を使い切った魔法使いは村の前で荒い呼吸を繰り返し、まだ余力のある魔法使いは他に壊れたものがないかの確認も行っていた。
「そういやアクオス、おまえあれだけの魔法使ったのに疲れてないよな」
「セイルもそれほど疲れてるように見えないけどね」
「あったりまえだろー! オレ、体力は自信あるし!」
そう言って満足げな表情のセイルにアクオスは慣れた感じに言葉を返して、ただじっと村の方を見つめ、小さく呟いた。
“間に合ってよかった……”と
それが何に対してなのかと問われれば、彼が魔法を使う前に見えた盗賊に襲われそうになっていた女性のことで。
直接は対面してないが、彼女達が傷ひとつないという事実をすでに別の村の者から聞いていた。
「後衛部隊にいた学生組は帰還するから整列してくれ」
その時、前線部隊の本部がある方から聞こえてきたのは魔法使い達を案内してくれた人の声でそれに気づいた学生達はぞろぞろと近づいていく
そしてもちろんその中にはアクオスもいて。
「こちらが今回の依頼者であり責任者だったレクルト様だ」
レクルトと紹介された金髪碧眼の青年はにこりと笑みを浮かべて軽く手を振ったが、決して言葉を発しようとしなかった。
そもそも王族はよほどのことがない限りそうそうに一般の者と言葉を交わすことがない、というのが常識だったので誰も気にはしていないが。
「レクルト様、こちらへのサインをお願いします」
案内人がレクルトに1枚の紙を差し出すと彼はひとつ頷きさらりとガラスで出来たペンで名を記した。
これが依頼完了の証だった。
「それでは帰還する!」
その一声で整列した学生達はゆっくりと前進していくその中で一瞬、アクオスとレクルトの視線が絡んだ気がした……
――アクオス達が初めての依頼を受けてから数日、3人は細かい依頼をちょこちょこ受けながらお金を稼ぐことを学んでいた。
そしてその日はなんの依頼も受けていないし、学校の授業も休みの日で……
「こんにちは、アクオス・オウ・ヒセント君」
「え、あ、レクルト様?」
「うん、レクルト・ラル・セオ・サイラアスです」
それが彼らの2度目の会合。
キラキラと輝く金色の髪はゆっくりと風に靡かせ、レクルトはにこにこと笑みを浮かべてその学校の敷地に立っていた。
「……何か用ですか……?」
「君と話がしたいと思っていたんだよ、アクオス君」
だから今回はただのレクルトに付き合ってくれるかい?
彼はそう躊躇いもなしに言ってのけた。
そんな彼の後ろには本来いるはずの護衛もおらず……アクオスはとりあえずめんどくさいことに巻き込まれたと察したのだった。
王子はフリーダム。
なお、彼自身の戦闘力は皆無です。
でも指揮能力は強い




