第五話
その場所は……やはり記憶に無かった。だが、何度もそこに来た事があるはずなのだ。
誰もいない何かの店。窓から中を見てみれば、喫茶店らしいが、その店名が分からない。店のどこにも、名前を現したものが無い。
自分はつい最近まで、この店の名前を知っていたのだろうなと、間上は皮肉の笑いを浮かべそうになった。
「ここで待っていれば、敵がやってくるんですか?」
隣に援軍となってくれた火比・徹也ことヒナエファイアーが、何時ものコスチュームで、他のメンバーであるサンダーとウォーターもいるため、間上だけがむしろ浮いていた。
「何もしなきゃ、単に店を覗いてる怪しい集団だろ。それじゃあ駄目さ。で、ここで良いんだよな? 俺だけじゃあどうにも不安でよ」
「丁度、この店の記憶が抜け落ちていますから、確か……かと」
サンダーが自信なさげに答えて来た。これも、ヒナエソルジャー達に助けを頼んだ理由の一つである。
この店を見つけるために、事情を知っている人間の助けが必要だった。敵を誘き出すためには、場所はこの店である必要があったのだ。
だが、その肝心の店の記憶も無くなっていた。無くなっていない方の記憶から、抜け落ちている場所を導き出して、丁度記憶に無い場所がそこだと当たりを付ける事でしか探し出せないのである。
だから、自分一人だけの記憶では心許ないと考えて、ヒナエソルジャーの記憶でも、この店が欠如しているかを確かめたのだ。
「場所がここって事だけは重要だ。多分、今回の事を仕組んだ奴らは、今の俺達を見ているはずだぜ? 自分たちがやった後の事を、じっくり観察してるはずだ」
相手にこちらの行動を見せなければ、誘き出せるはずも無いだろう。そうして、さらに重要な事は、相手が見ているところで何をするべきかだ。
「暴れでもするのか? そういう類のは、ヒーローとしては少し……」
ウォーターはそう言うが、かなり一般人とかけ離れた格好をしといて、反社会的も何もあったものではないだろう。
と言っても、種類には寄るだろうが。
「露骨に犯罪行為なんてやるつもりはねえよ。ただ、ちょっと荒事ではあるな」
「荒事ですか?」
「そうだ。こういうのはな、相手の気持ちになって考えるのが良いんだ。多分、今、俺達を見張っている程度だろうが、わざわざ姿を現すまでになるってのはどういう時だと思う?」
「どうって……どうなのか……」
ファイアーが考え始めるが、間上は躊躇しなかった。そのまま考え込むファイアーの顔を殴りつけたのだ。
「くぁっ―――な、なにを!?」
「良いねぇ。しっかり足で衝撃を逃がしてやがる! さすがはヒーローって感じだ!」
さらに続ける形で、足を上げながら足裏を叩き付けようとする。典型的なヤクザキックだ。モーションが大きいため、普段から喧嘩慣れているレッドであるからか、容易く避けてくる。
「混乱したのか!? それとも敵に洗脳されて……!」
ファイアーを庇う様に前に出て来たウォーター目掛けて、腕を払う。これも大雑把な振りだ。ブルーに受け止められ、腕を取られそうになる。これまた無理矢理に腕を振るって逃れた。
「―――!」
と、素早く接近してきたサンダーが間上を羽交い絞めにしようとして、両者の顔が接近した。その瞬間……。
「分かるか?」
「……」
間上の小声での問い掛けに、サンダーが黙って頷く。ファイアーとウォーターの表情も一瞬伺えば、同じくこちらの意図を察したらしく、真剣な表情を浮かべていた。
間上を睨んでいる様でいて、微妙に視線がズレている周囲を伺っているのだ。
「だいたいの位置は分かりました。もう少し近づいて来てくれれば」
間上がサンダーを押し返した状態から、次にファイアーが間上の背後に回り込みつつ、その体を抑え付けて来た。勿論、これまで全部、そのフリだ。
「悪いな。茶番に付き合せちまってる」
「事前の説明くらいは欲しかったかな……」
突然に喧嘩を始めた様な恰好の間上とヒナエソルジャー達だが、お互い、全力で無いことを承知している。これが間上の取った作戦なのだ。
こちらを伺う何者かが居たとして、さらに相手の興味を惹くためには、予想外の事態を引き起こせば良いと考えた。
例えば、訳の分からない争いを突如として始めたりと言った事態だ。
「こんなもので、本当に誘き出せるかは不安だがっ……!」
ウォーターが分かり易い動きで殴り掛かってきた。軽い力で羽交い絞めをしているファイアーを振り解き、ウォーターの拳をギリギリ避けたところで状況が変わる。
「ま、破れかぶれではあるんだが……ヤバい、気付かれた。追うぞ!」
と、全員の動きが、こちらを伺っていた対象が大凡居たと思われる場所へ向かう形になる。一方でまだ距離のあった相手は、背中を向けて逃げ始めた。
「あれは……神山!」
ファイアーは名を呼ぶが、一方で間上には匂いに心当たりがあった。
「ヒナエゴッドとか名乗ってたやつか」
「まだ名乗っていたんですね……」
悔しげに呟くサンダーだが、今は話を詳しく聞いている場合ではない。逃げる相手が一般人並であれば、容易く追いつける身体能力が4人共にあるものの、相手も相当に能力が高く、追いつけない。最初から、距離が離れすぎていたと言うものある。
「ここまでか」
と、間上が足を止めると、他の3人も追う事を止めた。
「良いんですか?」
「ああ、姿を現しはしただろ……あとは、記憶からいなくなっちまった誰かがやる事なんだと……俺は思うぜ」
後は野となれ山となれ。唯一消えなかった頼まれ事についてを達成した以上、間上がするべき事は無くなったと言える。
「では、後はこのまま何もせずにいる?」
ファイアーの問い掛けに対して、間上は首を横に振って否定した。
「頼まれごとが終わったってだけだ。お互い、個人的に喧嘩を売られてる状況だろ? だったら、次は個人的に動いてみれば良い」
「なるほど。なら、共闘しません? 敵は共通の様子ですから」
「おいおい。ヒーローがヤクザと共闘だって? この街らしくて良いじゃねえか」
久しぶりに、間上は可笑しくて笑った。相手が街に復讐しようとしているのだとしたら、自分達は街そのものだ。襲われた時の返し方は、ごった煮の混沌としたやり方がらしくあるだろう。
最近はヒナエゴッドと名乗り始めた神山・卓。他にも“黒”などと呼ばれており、随分と名前が増えたなと時々自嘲したくなる。
「案外、簡単に諦めたね?」
後ろを振り返りながら、神山はさらに周囲を警戒した。敵……と呼んで良いだろう追手であるが、この程度で追走を止めるとは思えなかったのだ。
こちらが堂々と喧嘩を売った相手であるから、簡単にその怒りを収めるとは思えない。
「なんだ? 何か策でも埋め込んだか?」
神山にとって、自分は策謀する側だという認識がある。もっとも、一流ではないとも思う。最近はそれを思い知らされた事件があったのだ。
事件そのものは神山が仕組んだ物であったが、最後の最後、それを台無しにされた。自分は言ってみれば二流と言う事だろう。
「だけどまあ……一流の鼻っ柱は折れたけど」
漢条・竜太。調定屋と名乗る男であったが、そのやり方は見事だと評価する。
こんな火薬庫だらけの街で、街を揺るがす大きな爆発が起きていないのは、彼がそれを未然に防いでいたから……とまでは言い過ぎだろうが、燻る火薬を、出来得る限り安全な場所で爆発させて来た男ではあるのだろう。
そんな相手を、今は消し去った。神山だけの力では無いが、気分はそれなりに良い。心残りは、そんな自分の記憶からですら、その男の存在が消え去っていると言う点だ。
今、調定屋という男の立場も名前も、消え去った後から、再度、付け加えたからこそ考えられる。正面から顔を合わせた相手でもあったはずだが、その顔がどんなものだったか……神谷ですら思い出せない。
「まったく、面倒くさい術を使うな、“虫”も。しかも、敵がそれでいなくなったわけでもない。また、こっちに意趣返しをしてくるかもね。やり方は幼稚だったけれど」
観察対象の店の前で、突然に喧嘩を始めた時は何事かと、不用心に接近してしまったものの、すぐ意図に気が付いて良かったと思う。策謀に関してもそうだが、戦闘能力に関しても神山は二流なのだ。一流相手に、正面から戦える力はない。
「まったく。僕も僕だ。この後にどうすれば良いか。一流相手に聞いておく方が良いかな」
呟き、神山は足をある場所へと運ばしていた。その場所とは、日苗市警察署。門に立っている警備員に頭を下げながら、堂々と入っていく。
怪しく無い市民を装ってさえいれば、誰だってその警察署には入る事ができた。例えばテロリストだって、警察のど真ん中にはやって来ないだろう。重要な場所で無い限りは、身体チェックも行われない。
「いや、重要な場所だって、警備は杜撰か」
署内のエレベーターに乗り込み、5階を押す。最上階であり、幾つかの会議室と署長室が存在している階だった。
あまり人は歩いておらず、外部の人間がいるのはさすがに怪しいと思われる場所だ。出来る限り人には出くわさない様に努めながら、神山は目的の場所へ到着する事ができた。
この階で目的地があるとすれば署長室くらいなのだから、そこが神山の目的地である。
「失礼、入りますよ」
ノックもせずに扉を開く。果たしてそこには広々とした部屋と、その中心からやや奥にある大きなデスク。さらにさらにデスクの奥には、厳つい顔をした老年の男が、高そうな椅子に座っていた。
「“黒”か。何かあったか?」
目の前の男。違えるはずも無い男の名前は、毛島・正平と言う。神山と違い、この場所にいたところで何のおかしくも無い男。日苗市警察署の署長である。
「いやはやボス。火種があちこちで暴れまわり始めてる様子で。僕らの方にも飛び火しそうになっていたので、ちょいと相談にと伺った次第です」
ボス。そう、神山にとって目の前の男を表現するには、ボスと言うのが相応しいだろう。
神山は警察署員ではないから部下ではない。一方で、彼とは対等な関係では無いし、むしろ目上だ。そうして、手を組んでいる相手でもある。神山や魁峰を“黒”や“虫”と第一に呼び始めたのも彼なのだ。
「混乱が広がるのは良い兆候だな……ふんっ。良くはない。むしろ悪いか」
「そうですねボス。僕らは悪い事をしている。悪人だ」
「表立って出来ない事のすべてが悪い事ではないだろう?」
毛島はそう言うが、本人にしてみたところで、正しい事をしているとは思ってはいないはずだ。その仏頂面からは感情が読み取れないものの。
「何にせよ、反感を呼んでますよ。僕たちはね。どうします? 実は監視を命じられていたあの店……名前も忘れてしまいましたが、あそこで街の混沌を担っている奴らに追われました。逃げ切ったと思いますが、完全に敵視されてますね、これは」
「それも想定している。計画に不足はまだ無い」
神山がへらへら笑いながら報告しても、毛島は一切表情を崩さない。彼は神山のふざけた雰囲気にすら感情を動かされないらしい。
「じゃ、僕はこれから仕事に戻れば? 一度発見された以上、かなり警戒されてると思いますけども」
「いや、店の方はもう良い。何かあるかもと思ったが、むしろ向こうから……」
毛島の言葉が止まった。こういう事は珍しい。彼は寡黙な方であるが、だからこそ、用があれば最後まで話を続ける。
「何か?」
「状況については変わった。それは認めるか……。“黒”。次の指示は追って出す。それまでは身を隠しておけ。君もまた、必要な存在だ」
「はいはい。了解ですよ。いやあ、面白くなってきたと言えば、不謹慎ですかね?」
「不謹慎ではあろうさ。だが、咎めはしない」
その返答を聞いてから、神山は笑い、部屋を去った。そう、面白くなってきたと思う。神山は徐々に起こり始めた街の変化を好ましく思っていた。
一人残された……と言えば良いのか、自分の仕事場である署長室で、毛島は部屋の隅を見つめていた。暫く視線をそこへ向けていたが、埒が開かぬとばかりに口を開く。
「見えているぞ。私にはな」
「と……言う事は……やっぱり……あなたが黒幕ってところ……ですか」
部屋の隅。神山はまったく気付いた様子が無かったが、一人の男が座り込んでいた。息を荒くし、額に汗をぐっしょりと掻いたその男の顔を、毛山は知っている。名前もだ。
「漢条・竜太。直接会うのはこれが初めてだな。まさか、存在を消される術を逆に利用して、尾行をするとは思いも寄らなかった。やはり、“黒”はどうにも手がぬるい」
「ははは……人並み外れた身体能力相手に尾行も大変でしたよ。久方ぶりの全力疾走です。それにしたって、多分、目的地が日苗市警のどこかだと予想を付けてなければ不味かったですけど……」
漢条が座った状態から、なんとか立ち上がってくる。それでも、その背中は壁に預けたままだ。全力疾走を通り過ぎて、体力の限界まで達していると思われた。それ程に、相手も必死と言う事でもある。
「警察署内に仲間がいるとは事前に分かっていたのだろうが、どう思う? その仲間が、まさか署内のトップだったと言うのは。ほんの興味本位での質問だがね」
「興味を現すなら、もっと顔を変えた方が良いですよ。そうですね……びっくりですけど、まあ、そういう事もあるかなと。こんな街だ。ほんと……こういう事もある」
「分かっているのなら、やる事は二つだろうな。諦めるか反抗するかだ」
「あなた方は、後者の方ってわけだ」
なるほどと納得する。“虫”に消去を命じさせて良かったとも思う。“黒”が警戒していた男だが、警戒するだけの意味が確かにあった。
「どれくらい……我々の事を予想している?」
「何時だって、この街にはあなた方みたいな考えを持つ人間がいる。そう思うのは予想じゃなくて覚悟って言うんですよ」
「この街を正したい。なるほど、そう思う輩はどこにでもいるな」
本心の言葉だった。この地位……日苗市警察署署長。大した立場ではないが、その立場としての責務は感じる。
警察とは、その地域の治安を守る存在だ。だが、この街においては守るべき治安すらも暴走している。いや、混沌としていると言うべきか。
「この街はな……どこかおかしい。悪意すらも見放す様な、不気味な方向性を感じる。ただひたすらに成長をし続け、混沌という害を振り撒き続ける。そんな街だ」
「人口は伸びているけど……そう表現しますかね。で? だからあんな、危険人物を仲間に引き入れた? まさか本気で、街の一つを壊すつもりつもりなのか、あなたは」
「ははは。冗談じゃあない。私は警官だぞ? 破壊なんてテロリストのする事だろう? 元に戻す。それだけだ。本来、混沌は長続きしない。吹き荒れる嵐は何時か止むものだ」
表現は独特だが、自分は当たり前の事を言っている。あるべき物はあるべき様にならなければならない。
「あなたは、街のバランスをわざと崩すつもりだと?」
「良く分かっているじゃないか。この街はな、混沌が維持されるという不気味な状態なのだよ。私は街の外出身で、一方で街の中での仕事が長かった。だから気づいたのだ。そう、この街は、あえて混沌とした状況が、ずっと意図的に作り出されていると」
放っておけば爆発する火薬庫みたいとも言われる日苗市。それが何故、大爆発を起こしていないのか。やはりそれは、誰かがそうならない様に努めているからだ。
「調定屋……か。まさに、街を混沌とさせたままにする元凶の一つだ。自分でもそうは思わないかな?」
「それが、僕が直接狙われた理由ですか。あくまで副業だったんだけどな……」
「君だけではないだろうさ。言ってみれば、街の機構そのものが、街の維持を望んでいる。だが、本質は違うのさ。この混沌が何時までも続いて欲しくない。終止符が欲しいと望む者も多い」
「そんなのは……勝手な想像でしょう?」
「そうかな? “虫”の術については理解しているかね? あれは人々の想念を力に変えるものだ。才覚もあったのだろうが、街への復讐に心を向けされるだけで、飛躍的にその力を増大させた……つまりはそういうことだ」
思いが力になっているのだとすれば、日苗市には日苗市そのものを崩壊させたいという意思が確実に存在し、それは決して弱く無いのだ。
毛島はその弱く無い意思に対して従っていた。誰でも無い、それもやはり街の意思だ。一人の公僕として、その意思に従う。それが毛島と言う男の有り方だった。
「飾った言い方をしてるが、あんたのやろうとしている事は、害を周囲に振り撒くだけじゃないか」
「そうだよ。その通りだ。まったくもって、こんな奴をそれなりの立場に就けた奴は誰なのだろうな? これもまた、街の悪意か? 何にせよ、まず君が邪魔者として目についたから、君から消す」
「僕はまだ……消えちゃあいない」
「“虫”の術でな、私には変化が分かる様に仕組んでもらっていたから、それだけの猶予があった。ところで、この術の行き着く先は、君や店自体の消去だよ。時間は掛かるが、もうじきだ」
目の前の男が消え始めている。手足の末端から、少しずつ透明になっている様に薄くなり、彼自身の息も荒くなっている様に見えた。
「ぐっ……」
手足が無くなっていくのだから、立ってもいられないだろう。漢条は膝を突く様に倒れるも、その膝すらも無くなっていた。
「まだもう少し話してみたかったがね。君を調べて行く中で、どうにも君自身には謎が多い。詳しく聞いてみたくもあったが……消えてしまったのだから、致し方ない」
何も無くなった署長室の床を見る。変わらぬ何度も踏まれて固くなった絨毯だけがそこにあった。
見風・妙はその空き地を見つめている。
仕事が終わり、何時も通りの帰宅の途上。何の気無しに足を止めて、その空き地へと……。
「あれ?」
やはり首を傾げた。何故、この空き地へと足を運ぶ必要があるのか。空き地になど用は無く、何時もはもっと、仕事終わりを楽しむため、もっと落ち着ける場所で。
「おお、お客さんかね?」
「あ……え?」
何も無い空き地。だと言うのに、どこからともなく老人が現れた。知っている老人だ。何時もここで……いや、ここは空き地で、こんな場所でこの老人と良く会っているはずがない。
何時も確か……確か、どこだったろう?」
「あ……す、すみません」
老人の顔を見た瞬間、どうしてだか無性に悲しくなり、目から一筋の涙が零れ出た。
本当に、良く分からない。何でこんなに悲しくなったのか。
「いや、すまんのはこっちだよ。なるほど、欠けた記憶を無理にでも埋め合わせれば、感情も混乱するだろうて。ほんとうにすまんかったの」
「そ、そんな。頭まで下げなくても」
涙を拭いながら、目の前で頭を下げ始めた老人を止めようとする。実際、老人は頭を下げ終わり、じっとこちらを見つめて来た。
「あの……そういえば、顔は知っているんですけど……お名前を知りませんでしたね。私、見風・妙と申します」
「妙さんですか。良い名前ですなぁ。私は七南・平蔵。昔は調停屋なんぞをしておりました」
老人は穏やかそうに笑い、見風にそう答えた。




