(終)俺は普通だったが日常は普通ではなかった。
「意外と望月さんって楽しい人だね、もっと冷たい人なのかと思ってたよ。」
「私も普段はそうかもしれないわ。でもあなたとだと楽に話せて楽しいかもね。」
「そっかぁ、なんか照れるな」
俺は顔が少し熱るのを感じていた。
「ねぇ、会田さん。私の友達になってくれない?
あなたとなら仲良くやっていけそうだし」
「えっ、いいの?」
「別にいいわ。どうせあなただって友達少ないんでしょ?牧野さんとなんかあったようだし。」
「えっと……、見てたの?」
「いいえ、勘ってやつよ。」
「そっか……」
俺は望月さんと昼を一緒に済ましたあと教室に戻り、いつもの授業を受けて一人で家に帰っていた。
俺が帰っている途中、何がいつもと違うような気がした。一人で帰っているからとかではなくて、もっと違うような、危険な感じがする。
しばらく歩いていると、誰かに尾行されているのに気づいた。
後ろからゆっくりとこっちに近づいてきているような気がして怖くなってきたのでさっさと早歩きで家に帰ろうとした。
すると後ろからその誰かがこちらに走ってきているような足音になった。
俺は後ろを振り向かず、急いで家に帰ってドアを閉めた。
これで大丈夫だろうと思い、俺は一息ついた。
「はぁ、はぁ、何だったんだ今のは!?」
俺って誰かの恨みでも買ってたのか?
いや、それはないかもな。
ストーカーみたいなやつかもしれん。
俺は誰も入ってこられないように一応全ての出入口と窓を閉めた。
「よし、これで大丈夫なはすだ。」
俺は安心して妹の結衣と一緒に夕飯を食べていた。
「ねぇ兄貴、今日なんかあったの?」
「いや、別に。」
「わざわざ嘘つくな。わかるから。」
あ、わかっちゃうんだ……
俺は雪子のことと今日の帰りの出来事を話した。
「ふーん、雪子さんのこと振ったんだ。意外だね。」
「別に雪子のことが嫌いでもないし大切だとは思ってるけど、何か違うっていうか……」
「まぁ、兄貴のことだからそれでもいいと思うよ。それにあたし、雪子さんとそんなに話したことないし。」
「そうだよなー」
「そんなことよりストーカーの方が心配だよ!あたしが兄貴のボディーガードになろうか?」
「いや、それはいいよ」
さすがの俺も妹が柔道ができて強いからといっても女の子に危ないことをさせるのは駄目だと思う。それに俺の妹だ。
「そっか、じゃあ兄貴、明日から本当に気をつけなよ?」
「おう、わかったよ」
そのとき、家のインターホンが鳴った。
「あっ、通販で注文してたやつ届く日だった!」
何を注文していたのかは知らないが表情からして余程楽しみそうであった。
のんびり夕飯を食べようとしたそのとき、
「ぎゃああああぁぁぁっ!」
結衣の叫び声だった。
俺は急いで玄関に走った。
床には真っ赤な血のようなものが広がっていた。
結衣を見ると腹から大量に出血していた。
「あぅ…、兄貴……、痛い、痛い…痛い、うぎぃ……兄貴ぃ…痛い……」
「おい、結衣っ!しっかりしろ!」
玄関を、見てみるとそこには俺のよく知る人物が立っていた。
「あ、秋くんこんばんはー」
意味がわからない。何故そこに雪子がいる?何故雪子真っ赤に染まった包丁を持っている?何故だ?結衣がこんなに苦しがっているのに何故雪子は平然としている?
意味がわからない。わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない
わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない
これは何が起こっているんだ?
「私ねー、秋ちゃんのこと大好きなの。好きで好きで堪らないの。今日望月さんと一緒に話しているのを見ていたらムスムズしてきて望月さんの存在が邪魔で邪魔で仕方がなかった。だからこの世から消えてもらっちゃった!」
そういって持っていた鞄の中から何かを取り出した。それを見たとたん俺は膝から崩れ落ちた。
その鞄の中から望月さんの首がゴロゴロと転がっていた。
「何でだよ……」
「ん?何でって?」
「何で……何で望月さんと結衣がこんなことにならなくちゃいけなかったんだよ……」
「いやー、自分で言うのも恥ずかしいんだけど、私って秋ちゃんに振られたじゃん?それで何でかなーって思ったの。それでね、よく考えたら秋ちゃんの周りって余計なものが多いと思ったんだよ。だからそれを消しちゃえば全部解決っ!これ完璧でしょ!」
雪子は望月さんの首を持って狂った笑みを浮かべていた。
「兄貴ぃ、早く逃げて……」
「もう喋らなくていい、俺がすぐに救急車読んでやるからな。」
すると雪子がこっちに近づいてきた。
「あぁー、邪魔。すごい邪魔。私は秋ちゃんと話してるの黙っててくれる?」
雪子は包丁を振り上げた。
そして一気にその包丁は結衣の首に向かって突き刺さった。
「あぁっ! ……………………………… カヒュ、カヒュ……」
「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
頭の中がぐちゃぐちゃで俺はおかしくなりそうだった。
「もー、喉刺したくらいで大声出しすぎだよー。」
「俺はどうすればいいんだよ……」
「ねぇ、秋ちゃん。邪魔者はいなくなったよ?これで秋ちゃんは私だけをみてくれるよね?」
雪子は何をいっているんだ?
ここに結衣が死んでるんだよ。
なんでそんな幸せな顔ができるんだよ。
全部お前のせいだ
お前のせいだ
お前のせいだ
お前のせいだ
お前のせいだ
お前のせいだ
「なぁ、雪子。包丁貸してくれ。」
「えっ、うん。いいけど……」
俺はもう生きる気力がなかった。
それならいっそ死んでしまえばいいと思った。
そして俺は一気に自分の腹を目掛けて力一杯刺した。何度も何度も何度も。
「うぐっ、ぐぇっ!ぐはっ、うぅ……」
「ちょっと……、秋ちゃん何やってんの!?」
「こんな……こと…な、ら……死ん、だ………方がマ、シ……」
俺は何度も何度も腹を突き刺さした。
何度も刺していくうちに握力が無くなって倒れた。
そこから俺は意識を手放した。
「あーあ、秋ちゃん死んじゃった。せっかく一緒になれると思ったのに……
まぁいいや。一緒に死ねばいいことだよね。」
雪子は秋人の体を引きずって隣のマンションの6階に上った。
「じゃあこれで天国でも一緒だね。」
次の日、この事件は全国で報道された。
読んでいただき、ありがとうこざいました。




