胎動1
もういっちょ。
とある場所、応接間のようなその空間で―――
「では、そろそろ始めましょうか。世界もだいぶ温まってきているようですし」
不意に男の背中から声が聞こえる。
声をかけられた男はあらかじめ知っていたのか慌てることもなく背後にこたえる。
「そうだね。もう少し待ってもよかったけど…」
しばらく考え、肩をすくめる。
「まぁ、覚醒は未だだけど、それで死ぬのならそれも運命だったということだね。あの悪運にかける価値があるとは思ってはいるから」
すぐに画面のスイッチを入れる。
「君たちはどう思う? この『ゲーム』の行方は?」
その瞬間、男の正面から次々に周囲の画面に明かりが灯っていく。
「私は『未羽』にするわ」
「ふん、その『駒』をチョイスした理由は?」
別の画面からも声が聞こえる。
いずれも『SOUND ONLY』と表示されたディスプレイは、機械で合成された音声のみを発し続ける。
各自がそれぞれの部屋から画面でつながっていた。
「……なるほど。しかし、大事な役者をわすれてはいませんか?」
「ん…? だれかな?」
男は身を乗り出す。
「志穏ですよ。実際、能力的に彼以上は存在しないでしょう」
その言葉にディスプレイ間の空気は納得したものに変わる。
「マップは何でしたっけ?」
問いかけたのは『菜摘』をチョイスした女。
その言葉に、先ほどまで文字しか表示されていなかった各自のディスプレイにマップが表示される。
そして、マップが二種類表示され―――
「これだ。まぁ、日本と、中世ドイツといったところか? よくしんないけど。これが途中で切り替わる予定だから、各自目を通しておいてくれ。確定したら改めて再送するよ」
『塔矢』をチョイスした男の言葉に、『菜摘』は無言で肯定する。
その後も似たようなやり取りが行われ、各自の業務連絡が終わる。
「では…そうですね。『ゲーム』は来週よりスタートしましょう」
「来週の指定の時間までに皆、『例の部屋で』」
「そして始めよう。ゲーム『エデン』を」
動き始めたのは…
そもそもこの世界は…
「エデンで」とそろそろリンクさせようかな…