出逢い2
菜摘は、一言でいうならばお嬢様だった。
成績は優秀で学校でトップ。
それどころか運動神経もよく、芸術コンクールでの表彰経験もあり、さらには会長を務めている。
容姿には触れずとも、学生の大半の得票を得て会長に当選し、校内にファンクラブがあることからも推測できる。
人によって好きなところは違う。
あの黒くて長い髪がいい、という人もいる。
あの目がいい。目を見ればその人の心のありようがわかる。それでいて菜摘さんの目はこれまでにない目をしている。一体何を考えているのだろうか。などという人もいる。
むしろ彼方がこれまで菜摘の存在を知らなかったのは奇跡といえるような状態であった。
「………で、なんで自分が雑用をしているんですか?」
彼方が菜摘に言われるまま来ると、忙しくて手が離せないから、と雑用を次々と与えられてその日が終わった。
その日だけならまだしも、次の日も、その次の日も、そのまた………
「いいではないですか。どうせ暇なのでしょう?」
「……菜摘さんって、腹黒いって言われたことは?」
「まったく? 私もあなたと同じように基本的に猫を被っていますので」
これがファンクラブのできるような、圧倒的得票数で生徒会長になるような人だよ
と、彼方は1人呟く。
たぶん誰1人この人の性格なんて理解しちゃいないんだろう。
「…そうですか。それで、これはこっちでいいんですよね?」
「ええ。やっぱり肉体労働者が1人いると違いますね。捗ります」
どうやら菜摘は彼方を徹底的に挑発して彼方という人間の底を図りたがっているらしい。無理難題に近いものを押し付け、菜摘はその間何もしてなかったりする。
ほぼ間違いないだろうと思い、だったら乗らないでいようと考える彼方もまたそれなりの性格をしていた。
そういえば、と彼方は思う。
「ほかに生徒会の役員とかはいないんですか? ここで手伝いをさせられて2か月になりますけど、菜摘さん以外に見たことないですよ」
「もう1人いるにはいるのですけれど、彼、学校に来ないですから」
登校拒否?
彼方がそう疑った直後、思わぬ言葉が菜摘の口から吐かれる。
「彼、ここの学生ではありませんし」
「えっ!?」
「まだ……という意味です。そのうち来ますよ」
「来る前から生徒会に決まってるんですか? …まぁ、でも、これで自分はこの雑用係から解放されるわけですね」
菜摘は逡巡した後首肯する。
「そうですね。あと3か月です。早いものですね」
「ながっ!?」
「まぁいいじゃないですか。 ……仕方ないですね。またどこか行きましょう。どこがいいですか?」
彼方はため息をつく。
「仕方ないって………何回目ですか。毎週末どこか行ってますよね」
「そうでしたか? まぁいいでしょう。次はどこにします?」
「いいでしょう…じゃなくて……もういいですよ」
苦笑する。
この人に。
この関係が気持ちいいと感じている自分に。
といいつつ少し書く。人物描写。
髪が黒いくらいは普通でしょ?