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エデンの向こうへ  作者: 懸時哀斗
1-3 流転
31/65

菜摘4

長い、夢をみていた





遊園地


―――お化け屋敷―――


「ひゃっ」


私は驚いて急に声を漏らす。周囲に何もいないことを不思議に思った彼方に、私はくびすじに触れたそれを差し出す。


「これは?」

「こんにゃくです」


私は憮然として二本の指でそれをつまんだまま。


「…こわかったんですか?」

「これって、使いまわし…ですよね?」


二人で想像するのを躊躇い、急ぎ足で出る。




―――ジェットコースター―――


「これって速いんですか?」

「さぁ? 速いとは書いてありましたよ。あと、」

「あと…?」

「高いって」


次の瞬間二人の身体は急降下し始める。


「わぁー………」

「…………?」


彼方の様子が何かおかしい。


「あの……まだ、ですか?」

「だから高いって」




―――ゴーカート―――


「彼方、負けたほうが勝ったほうにジュースで」

「へーい」


二台同時スタートができ、コースもなかなか長くてうねうねしていて面白そうな…

ということでいつの間にかレースをすることになっていた。おあつらえ向きにスタートの信号もある、けど。


「位置について―――」

「え? 菜摘さん…あそこに信号が―――」

「あれは偽物だから。ゴー」


信号を待っていたであろう彼方に差をつけることができ、


「えーーーっ」


勿論勝ったのは言うまでもない。




―――観覧車―――


とんとんとん―――


「つまらないの?」

「いや……」


彼方はすぐに返答をする…が、

とんとんとん―――


「じゃあなに?」

「観覧車って景色を見るためのものですよね?」

「はぁ……つまり―――」

「飽きた」


肩をすくめる―――と、

ちょうどてっぺんにつき、海が―――見えた。


「あっ、海ですよ。菜摘さん、海が見えますよっ」


子供のような反応に苦笑する。





水族館


「わぁっ、彼方。あれはなんですかっ?」

「…その、いかにも自分が知らないお嬢様みたいな展開をどうしろと? 一応言っとくけど、あれはサメです」

「それは知ってる」

「さっき、何を聞きました?」

「あれはなんですか?」


彼方は私の指さす先を追い―――


「もしかしてあの海藻?」

「そう、その海藻」

「何を聞きたいんでしたっけ?」

「あの海藻の名前」

「知ってるとでも?」

「欠片たりとも」

「菜摘さん…」



―――みやげ―――


「やっぱり水族館といえばお土産はセットですね」

「わからなくもないですけど、そんなこと誰が決めたんですか?」

「今私が」

「…………」

「あっ、これにしましよう。ペンギンのキーホルダー」

「……。……? ペンギンなんていましたっけ?」

「いました」


必死で思い出そうとする彼方に、私はにやにやしながら告げる。


「ほら、これっ」

「いや、これは……」


とは言いつつも、彼方も笑っている。





正直、くだらないやりとりばかりだった。そう思う。なんでこんなことで笑う自分がいたのか今でも全く分からない。


それでも暖かかった。






と―――夢が醒めた。


少しぼんやりとする。そういえば、彼方と二人でいる時はたまに敬語が抜けてるときもあったっけな。ついそうなっちゃうんだろうな。次はどこに―――



思い出す



「あ……」


私は、殺そうとした。

彼方を。

そして、死んだ。

それでよかった。

殺さずにすんだ。

終わった。

はずだったのに。


「なんで……」

「気がついたか。といっても半分くらいは無理やり覚醒させたようなもんだが」


声のしたほうを見る。

と、そこには


「蓬莱……興世」

「正解。久しぶりなのによく覚えてんなぁ。正直俺はお前のことがよくわからん。というか、確信が持てん。この数年で変わりすぎだろ」


菜摘が追い求めていた復讐の根源。その男がそこに。


「あなたの…あなたのせいで……」

「んー。多分だがそれは勘違いだ。とりあえず、その話をする前にしなくちゃなんねぇことがある」

「………?」

「お前の命は残りわずかだ。わかっているとは思うが、槍で身体貫かれてんだ。急所は外れていたが、とはいえ出血多量。今生きてんのも奇跡に近い状態だ。機械つなげて無理やり生かしているとはいえな」


その言葉に菜摘は自分の身体を眺める。

道理で首しか動かないはずだ。

全身が動かず、変なチューブが何本も自分の身体に挿してあるのが見える。


「で、聞きたいことがあるからその状態にしてある」

「聞きたいこと? あんたを殺したいのなら答えはイエス」

「おいおい。もうちっと丁寧な言葉遣いしてくれよ。救世主かもしれないだろ」

「何が聞きたいの?」

「ずばり、生きたいかどうか」

「っ!!」


さっき意識が戻った時、自分はなぜ生き返ってしまったのだろう、そう思った。


でも、また、あの日々に戻れるのなら戻りたい。そう思った。


沈黙を続ける菜摘に興世は、


「時間がないぞ。お前の命はあくまで繋ぎ止めてるだけだ。いつまでもつかはわからん。もちろん遅れるほど死ぬ可能性が高くなるだけだ」

「……望みは?」

「あ? なにもねぇよ。強いて言うなら、そうだな。息子の惚れた女を見てみたかっただけだ」

「…思い出したわ。そういえば、あんたそんな感じだった。親子で似てるとこがあるわね………生かせるものなら生かしてみなさい。その後あなたがどうなるのか保証できないわよ」


それを聞き、興世は笑う。


「さっきは死ぬ可能性が高くなるとかいっちまったが、大丈夫だ。俺はお前が死ぬ瞬間を想像できないな。これからやる『実験』にお前は成功するだろうよ」

「好きにしたら?」


菜摘は目を閉じる。次に目を開ける時に何をすべきか、それを考えながら。


「恐ろしい女だ。彼方は大丈夫かよ。まぁ、あいつはあいつで心配だが」


ピクリと菜摘が反応したが、それでもそれ以上は動く様子を見せない。


「菜摘、今からお前を『最強』にしてやるよ」


そして、興世は―――






忘れてた。


多分言ってないですが、

未知の能力は

炎や火ではなく、熱になります。



菜摘、生きてたんだね。びっくり

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