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エデンの向こうへ  作者: 懸時哀斗
1-3 流転
22/65

決別4

「減らないねぇ」

「そうね」

「疲れた?」

「べつに」

「もしかして冷たい?」

「そう?」

「返事が雑だし」

「節約してるだけよ」

「なにを?」

「体力とエネルギー」

「ああ………」


塔矢と未羽。二人の周りにはスライムの残骸のようなもので埋め尽くされている。それでもこの碧色の海が縮小しているようには見えない。むしろ増えているようにも見える。倒す数よりも増える数、つまり分裂する数のほうが多いからだ。


「分裂するなんて聞いてないぞ」

「分裂した後も体積が同じになってるしね…」


物理法則を無視して増え続けていく異形に次第に押され始める。数の暴力。


「このまま逃げるっていう選択肢は?」

「未知と彼方がどうなってもいいならね」

「だよなぁ。ところで二人は無事なのか?」

「………どういうこと?」


不意に放たれた問いに未羽は一瞬固まる。


「帰ってくるのが遅すぎないか。〈珠〉探すだけじゃそんな時間はかかんないっしょ。なんかあったんじゃないかな。あっちでも」


そこで生まれた沈黙を嫌い、未羽は言葉を紡ぐ。


「私たちは初めに決めた通りのことをするだけ。向こうは未知に何とかしてもらうということで」

「そうだな。未知ならどうにかすんだろ。俺らにできるのは二人が帰ってこれる場所を提供することか、とりあえず」


冗談めいた会話を交わし、二人は今度こそこの集団を殲滅せんと動き出す。



「未羽、大技いくぞ」

「どうするの?」


塔矢に目を向けず、スライムの集団を牽制する。


「竜巻を起こす。それであとは未羽の力で完成だ」


未羽はそれで塔矢の意図を察して尋ねる。


「時間が?」

「ああ、任せた」

「うん」


塔矢が目を閉じ精神を集中させ始めたのを目の端に捕え、碧の波に飛び込む。未羽にとって困ったことにこいつらを「斬る」わけにはいかない。無限に増殖するこいつらに斬るという行為はそれを助長するだけになってしまうからだ。


「まるでプラナリアね」


呟く。どこで斬ってもその生命体は同一の大きさ、同一の生命体となる。プラナリアの性質に他ならない。


「かといってそのままというわけにも……」


喋りつつ、ついにそいつを斬る。残念なことにこいつらは雑食性のようだ。人すら食べそうだ。これ以上侵入させるのもためらわれる。

軽やかに、それでいて獰猛に、未羽は斬り続ける。そして叫ぶ。


「あとどれくらいっ!!」


その声に焦燥が混じるのを感じつつ、塔矢は端的に返す。


「わりぃ、あと五分あれば何とか」

「五っ!? ………ちゃんとそれで倒せるのよねっ!?」

「…………さぁ?」


試したことがないのだ。そもそもこいつらの弱点すらわからない。それでもほかに方法がない。これに賭けるしかない。


「確率は八割ってところだろ! こういうやつらは高温か低温か酸に弱いんだよっ!!」


そうでなければ困る。そうでなかった場合、その時は―――


「わかった。とりあえずできるだけはっ―――」


未羽の体が弾き飛ばされるのが見えた。塔矢は舌打ちをして走り出そうとする、ところで未羽の手が見える。こっちに来るなと、その手が告げている。改めて自分の役割を思い出す。あそこで未羽が傷ついていて、それで自分が何もしなかったら、それこそ未羽の行動を無駄にすることになる。塔矢にできることは一刻も早く準備を整えること。だから―――


「わりぃ」


それだけ。

実はあいつらも分裂に限界があって、そこまで二人で攻撃し続ければいいんじゃないのか。こんなバカなことをしていて本当にあいつらを倒せるのか。さまざまな疑惑を必死に押し殺し、塔矢はその場を動かず精神を研ぎ澄ませる。




それにしても………あいつらはまだなのか。

決別はわかれと読みます。いまさら


みんないつまで起きてんだよ。


とりあえず、湖に石を投げた。

波紋がかえってくるのはこれから

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