決別2
「じゃ、そろそろ動こうか」
「……どうやって?」
「まず二手に分かれる」
「うんうん」
「二人は外にいる緑色のやつを相手にする」
「うん」
「もう二人は〈珠〉をとってくる」
「うん……て、たまってなに?」
「〈珠〉ってのは……」
「うん」
「説明がめんどくさいから後は未知にまかせた」
急に話を振られた未知が驚く。
「えっ、ヤダ」
「ま、いいから」
「よくない」
「運が悪かったと思って」
「はぁ……」
未羽は一人ため息をついた。
塔矢と未羽は昇降口に向かう。すでにそこにスライムの集団が到達せんとしていた。
「団体さんのおつきですよ、ってところか」
未羽は何も言わずに水の刀を創り出す。塔矢の視線を感じ、未羽は問う。
「なに?」
「いや、武器名とか言わないのかなってな」
「なんのために」
「気持ちの問題っと。 …じゃあ俺はこれで行くか」
塔矢は掃除用具入れに行き、中から箒を取り出す。
「不器用な能力だね」
「俺がこんなの持ってるってみんなにばれたら、俺の評価がダダ下がりになるんじゃないか?」
だから内緒で、と軽く言う塔矢を未羽は笑う。その程度で下がるようなものでもあるまいし。
塔矢は箒に〈風〉を纏わせ即席の剣をつくりあげる。
「未知がいればいいでしょ」
「もちろん、それで十分おつりがくる」
この人はどこまでかっこつけなんだろうか。
「んじゃ、行きますか」
未羽は何も言わず、飛び出した塔矢に追随。
「戦闘、開始」
二人は碧色の海の中で華麗に動き出す。それは一種の舞のように荘厳で、それでいて確実に「敵」を屠っていった。
「はぁ……」
この日何度目かになるため息をつく。彼方はそれに突っ込む気力さえなくしているようだ。だけどそんなことはどうだっていい。
「全く…どこにあるのよーーー」
叫んでみたところで返事があるはずもなく、教室からこわごわと顔を出している生徒が数人いるだけだった。
「探す場所が根本的に間違っているんじゃないの?」
そんなことはとっくに思っている。
「じゃあどこにあるの? 場所がわかるなら早く案内してよ、おにぃちゃん!」
とげとげしい言葉に彼方がたじたじになる。
「学校にあるってわかってるんだったらもっと詳しい場所まで分かるようにしてほしいよ。えっ、と。ち、地下室とか……」
未知の視線に気づき、途中で焦り、どもりながら提案するがそんなものが普通の学校にないと思っているのだろう。それはそうだ。普通の学校にはそんなものはないしこの学校にもそんなものは―――
「あー、お前ら、地下室行きたいなら先生か生徒会の許可を得てから行くんだぞ」
『………あるんだ』
次回・・・