プロローグβ
初めに1つ……
彼方と菜摘は後輩と先輩の関係だった。
知り合うきっかけはこちらで無理矢理に作ったものだった。
もちろん偶然なんかではないし、運命なんていう甘い幻想的な意味のものでもない。
むしろ、これは宿命と呼ぶべきものだったのだろう。
だから、その後2人が一緒にいることが多くなったのも必然のことだった。
一緒にいる機会を増やしたのは私だったのだから。
私は、彼を……
それでも私は幸せだった。
2人で一緒に過ごす時間は「本来の自分の目的」すら忘れさせてくれる、満ち足りた時間だった。
ある時から故意に、2人はどこかへ出かけることが増えた。
ある時がいつかなんて、そんなのあってないようなものだ。
その理由のほとんどが大したことのないものだった。
今になって思う。
あれは『デート』以外のなにものでもなかったのではないか。
でも、当時の私にはどうでもよかった。
デートだろうと、そうでなかろうと
だって、そうでしょ?
一緒にいられる、理由は何だって好かった。
それだけでよかった。
それだけでよかったのに、
それすら許されなかった。
否
自分が赦さなかった。
些細なことに幸福を感じてしまう、そんな自分を赦せなかった。
最後の最期まで、私は私が幸福になることを赦さなかった。
だから
私が彼方を喪う、最後の最期まで
自分の本当の気持ちに気づけなかった。
あなたは…気づいてあげて……ね
2話。
ここまでは修正ほとんどないはず。