行間
「やるんだな」
「ええ、ただ、彼方が能力者かどうか、それが気になります」
「能力者じゃなかったらやんねぇのか?」
「………」
「いいさ。試してやるよ。あいつが能力者かどうかだろ? とりあえず襲わせて様子見ようじゃねぇか」
「それ…は……」
「ああ、気にすんなよ。もう今頃襲ってる頃だ」
「っ!! っ…………」
河川敷に独り座り…
ただ、見つめる。
わからない
そもそも自分は…
わからない
あれ
いまみてるのは
わからない
ここはどこだ
わからない
自分は何だ
わからない
その時、背後で不自然な機械音が響いた。
「…ああ、いたの」
千尋はふと気配を感じ、振り返る。自室で一人、今後のことを考え、正直厳しいと思っていたとこに。
(始まるわね)
「そう、世界は動き始めた。私の望まないほうへ、あなたの望むほうへ。あなたはどっちにもつかないの? 私がいる以上、あちらは厳しくなるわよ」
それはただの見栄、なのに
(未弥と志穏がいるわ)
「!!っ あの子たちがいるの。確かにもうわからない」
勝つ負ける以上に、あの子たちと戦いたくはない。
「あなたは見てるんでしょ。なにもしない。見てるだけじゃ何も変わらないわよ」
(わかってる)
「―――人が……」
千尋は声を押し出す。
「人が…たくさん死ぬわ。次は…あの子たちかも……しれない。それでもあなたは動かないの?」
この戦いを止めるために。そのために動き出してほしいと思う。この人は一人で戦局を決めることができる。この不毛な戦いを止めることができる。
しかし返事はない。
「なんで能力者同士でつぶし合うの? そうであるものとそうでないもので争うのならまだわかるのに。なんで………」
それでも返事はなく、
「そう、わかったわ。あなたはいつもそう。でも世界はあなたの望むほうへ動いていく。正直うらやましいわね」
(あきらめれば?)
「そんなことできないわ。だって、私はあの子たちの母親よ。親が子供を守らないで誰があの子たちを守るというの?」
(さぁ?)
怒鳴ってしまいたかった。
あなただってあの子たちの…
だが、その言葉を飲み込む。
「まぁいいわ。どうせあなたは見ているだけなんでしょ。私は変えてみせる」
(実のところ、動くけどね)
「っ!!! あなたが!? いつ!?」
この人が動くはずがない。そのはずの人が動く。世界が大きく変わる?
(まだ動かない、動くのは世界が分かれた後)
「もう分かれてるわよ。そう思わないの?」
(序章、のちに世界は三つに、私はトップに立つ)
「これが…序章? あなたは何がしたいの?」
この世界は、何もしないのか?
この不毛なだけの戦いが、いつまでも続くというのか。
(世界の勘違いを正したいだけ)
「―――そう、………そう」
この人の言葉が「正しければ」、この人についていけば戦いは終わるのだろう。だけどそれでも千尋はこの人の言葉を信じることなどできない。なぜなら―――
(もう話すこともないわね。安らかな眠りを、千尋)
「―――私は死ぬ……と。それもあなたの想定。できればその未来は変わってほしいのだけれど…」
まぁいいわ、と千尋は嘆息する。
「それでは健やかな未来を、姉さん」
なぜならば、この人は自分の子供たちを見棄てているのだから。
自分の子供すら守らず、何が世界の勘違いを正すというのだろうか。
だから私はあの子たちを守る。
ようやく
「能力」のワードが出ました。
実際のチカラは次話に期待