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エデンの向こうへ  作者: 懸時哀斗
1-3 流転
12/65

流転2

「そうだ。では次の話に移ろう」


トーンが変わり、菜摘も自然と居住まいを正す。


「菜摘、お前がこの組織に来た時のことを覚えているか?」


話の転換をいぶかしげに思いつつ菜摘は返答する。


「ええ。忘れることはありません」


実は、と志穏は前置きして話し始めた。


「あの時の事件、生存、または行方不明者が四人いることが判明した。菜摘、君を含めてだ」


四人…菜摘の計算とは数が合わない。


「同時にいまだに行方不明な奴が一人いることも明らかになった。これは一応の話として聞いてほしい。いいか、一応だぞ」


やけに念を押す。それだけ重要であるということだろうか。


「あの時まだ生きているであろうと推測されたのは四人。菜摘、耀介、あの男、そしてあと一人が―――」

「あと一人が?」

「一応だぞ。名前は蓬莱興世。菜摘…彼方は………蓬莱彼方は、蓬莱興世の実の息子だ」

「!!っ」


あの時の記憶が鮮明に呼び起される。あの時の光景が目に浮かぶ。あの時の臭いがする。あの時の音が聞こえる。

(彼がっ―――)



すべての音が遮断される。



「うちとしては、彼方は能力者ではないし―――」

(あの事件の犯人がっ―――)

「そもそも蓬莱興世が―――」

(彼方がっ―――)

「だから菜摘、この件は―――」

(彼方がっ!!!)

「菜摘、聞いているのかい?」


「…ええ、聞いていますよ。ところで志穏、手の空いているのはいますか?」


大丈夫だ。自分の気持ちとは裏腹に、不自然なほど冷静に話すことができる。だから、私は大丈夫だ。


「菜摘…話を聞いていたかい? 彼方は―――」

「決行は、一週間後にします。最後に彼方と話し合う機会がほしいので」


志穏の話を遮り、菜摘は矢継ぎ早に告げる。


「菜摘……君は――――――いや、いい………」


菜摘は不明瞭に返されるその言葉をろくに聞きもせず、疑問に思うこともなく、電話を切ると生徒会室を出る直前に一度見渡し―――


「彼方…」


自分がほんの少しも大丈夫でないことに気づく余裕もなく、一言呟き、扉に鍵を、かけた。





切られた電話をしばらく掌で転がした志穏は、


「彼方では止められなかったか…菜摘の意志を止めるためには期間が短すぎたか? だがこれ以上黙っているわけにもいかなかった」


そしてしばらく黙考し、


「いや、まだわからないな。しかし思った以上に菜摘の意志は固い……となると…………どうする? 菜摘」


志穏は携帯を弄んでいた手を止めると近くにいた一人に声をかける。


「未弥の移送準備を始めておいてくれ」

「えっ………あ…いや……」

「わかっている。準備だよ、あくまで」

「あ、はい。わかりました」


誰もいなくなった空間。そこで初めて違和感を口にする。


「…………しかし、なぜだ? 犯人が蓬莱興世だとして、何がしたいのか全く分からない。それにそもそも―――」


志穏はディスプレイに表示された四人の名前を見る。いや、志穏の視線はそのうちの一つに固定されていた。


「なぜ耀介は生き残っている?」





志穏、名前登場


そしてなにやら不穏な雰囲気が・・・

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