胎動2
音楽の神様はミューズ
じゃ、小説の神様は?
「それでは皆様、お集まりいただきありがとうございました」
「一週間、長かったよ」
「ほんと、退屈だったー」
「この一週間で世界はさらに進んでるんだろ? 一日一か月として……半年近くが過ぎた訳だ」
巨大な――四畳ほどもあるだろうか、その巨大なテーブルには何かの地図が敷かれ、複数の人影がそのテーブルを取り囲んでいる。
「これ、どうやるんだ?」
「ここでの操作方法ですが、あくまでも大まかな動きを決定することがメインの操作になります。彼らの大まかな動きを指示、そこで指示された『駒』は〈彼ら自身の信念〉に基づき、〈行動可能な範囲〉で行動します。ですので、明らかに信念に反する行動を指示した場合や、例えば一時間でこのマップの端から端まで移動するといったことはできません。その場合は指示がない場合と同様に彼ら自身の判断で行動します」
「ん? ほっといても動くってことか?」
「その通りです。現在まで彼らは自由意志で行動し、現在の立場に立っています。皆様方には時折彼らの動きをチェックしていただけたことと思いますが、大まかには同じ価値観で行動すると判断してかまわないでしょう」
「じゃ、指示する意味なんてあんのか?」
「ないことはないですね。例えば二択で悩むような事態が起きたとして、そこでの選択の決定権はこちらで決定することができますし、ほかの人と接触することで彼らの価値観や信念など、行動の基準が変わることも起こりえます。なので行動にターン制などはありませんし、随時行動を指示していただいてもかまいません。実際に自分がその世界に入ったつもりになって動いてみた感じ、ですかね。途中でやめることもできますし、ある程度までの指示だったら彼らの中で折り合いをつけてその行動をすることになると思います」
説明を耳に入れつつもすでにゲームの内部に注視している者もいる。
「ねぇ………もう『耀介』来てるんですけど」
「俺も知らねぇよ」
「追い出せない?」
「俺は今出ていく気はねぇよ。それにいるってのは『菜摘』か『志穏』が指示したことじゃねぇのかよ。『耀介』の意志なんかじゃ学校に潜入なんてしねぇだろうから…な?」
いや、やりかねないかもな? 俺みてねぇしな? どうなんだ?
部屋の隅で呟く男を端に話は終わりに近づく。
「―――また、接触した場合に起こる現象の指示もできる時とできない時があります。敵対している相手と正対した場合、戦闘になることもありますし、ただの会話で終わることもあり得ます。初めから相手を倒しに行けと指示することもできますが、それを聞くかどうかは実際に動いてみないとわからないといったところですね」
「動かさないで見てるのもいいんだよな」
「そうですね。先ほど申し上げたように放置していても動きます。ですが、動かないのですか『彼方』?」
「今は未だ………ね。どうせお前も動かないんだろう?」
「まぁ、そうですね。私は調整がメインの作業になりますし…今動いたら、世界、終わりますよ?」
にこやかに告げる。
だろうな、とこぼす。
「皆様ご自由に指示を出していただいていいですよ。それでは『エデン』始めてください」