1章-3 宗像三女神
なんとか間に合いました。 ^^;
今度は神様の登場です。
日本の神様って、なんか悪戯っ子の様なイメージがありますよね。
結局、今日の午前中は春美さんとの打ち合わせでほぼ潰れてしまった。
春美さんも秋美さんも冬美さんも、最初に思ったより遥かに優秀で、ぼく達の資産は困ったことになりつつある。
どこかの会社を買収する訳でもないのに、そんなにお金があっても仕方が無いとぼくは思うんだけど、皆んなはそんなぼくが歯痒い様だ。
特にチーム悪魔っ子が……。
人間ってそんなに欲深いもんなんだろうか?
悪魔が言うので信憑性は限りなくあるけど、ぼくにはピンとこない。
まあ、人それぞれだと思っておこう。
とまあそんな感じで昼になり、買い物に出たままの紅葉と夏美さん以外のメンバーで昼食を摂っていると、呼び鈴が鳴った。
因みにこの呼び鈴は後から取り付けたものだ。
呼び鈴だけではなく、この屋敷は物理的にも霊的にも、かなり厳重なセキュリティーに守られている。
ベリアルに頼んだら、神だとて勝手には入れない程の結界を張ってくれたらしい。
そもそもの原因となったあの事件があって、ぼくは少々警戒心が強くなったのかもしれない。
玄関に出て応対してくれていた春美さんが戻ってきて、ぼくに来客を告げる。
「来栖様、宗像様と仰る女性方がお会いしたいと来られていますが、如何なさいますか?」
「宗像さん?記憶にないですね。どんな方でした?」
「そっくりなお顔の三人の女性ですわ。姉妹にしても似過ぎていますわね。
お心当たりがない様でしたら、追い返しましょうか?」
「いえ、ちょっと出てみますよ」
玄関に行ってみると、果たして三人の女性が居た。
春美さんが言う様に、顔立ちも背格好もそっくりな三人の女性だ。
「ぼくが来栖ですけど……どちら様でしたっけ?」
すると三人のうち、真ん中に立っていた女性が答える。
「妾は宗像三女神が長女、田心じゃ。こっちが湍津、こっちが沙代じゃ」
そう言って、左右に居る同じ顔をした女性達を腕で示す。
「宗像三女神?って……確か、沖ノ島に祀られておられる神様でしたよね?」
「沖ノ島に居るのは妾だけじゃ。此奴等は筑前で別々に祀られておる」
突然現れた、そっくりな三人の女性が、自分達は神様だと言っている……。
うん、ぼくの理解が追い付かない。
混乱しているぼくを余所に、宗像瑞津と紹介された女性が口を開く。
「何を混乱しておるのじゃ?信じられんのか?神なぞ、信じてなんぼじゃぞ?」
なんと言うか、凄く俗な事をおっしゃっておられる。
ぼくがどうしようかと考えていると、突然ぼくの右後ろにベリアルが出て来ており、小さな声でぼくに囁く。
「来栖様、こいつらなんだい?凄い力を感じるんだけど?」
成る程。
ベリアルがこういうのであれば、本当に神様なんだろうな。
となると、おもてなししないと……。
「大変失礼致しました。何分神様をお迎えするのは始めてなもので。
玄関先では失礼ですから、どうぞお上がり下さい」
そう伝えて上がって頂き、リビングに入って貰った。
「ベリアル、琴女さんにお茶をお願いしてきてくれるかな?」
「なあ来栖様、あいつらなんなんだ?」
「神様だよ。日本の」
「……日本の神様っていうのは、いきなり家に訪ねてくるもんなのか?」
「いや、ぼくもそんなのは初めて聞いたよ。まずはお話を伺わないと解らないね。
ベリアルも同席してよ」
「勿論だよ!あんな力を持ってる奴等、それも三人を相手に、来栖様だけにする訳にはいかないよ!」
「ありがとう。でもまあ、そんな揉める話じゃないと思うから、大人しくしててね?」
「……解ってる。なるべく黙って控えてるよ」
とりあえずベリアルには釘を刺して応接室に入る。
そこでは、三女神が並んで既に日本茶を啜っていた。
ベリアルに頼まずとも、琴女さんはちゃんと出してくれていた様だ。
「なんと玄関に応対に出たのが悪魔で、お茶を出すのが幽霊ときたか。
しかも隣はかなりの大悪魔と見ゆる。
はてさて、勝軍の孫じゃと聞いたが、彼奴はどんな教育をしておったのじゃ?」
真ん中の方が目を細めてぼくを見ながらそう言った。
「えっと……爺ちゃんのお知り合いなんですか?」
ぼくの疑問に右側の人が答える。
「そうじゃ。この時期の妾達は比較的暇での、京の都にある妾達の社に顔を出すのじゃ。
そのついでに毎年勝軍の顔を見に寄るんじゃが、先刻行ったらもぬけの殻ではないか」
続けて左の人。
「しょうがないので慈恵の所へ行って聞いてみたら、なんと勝軍は先日死んで、孫のおぬしは浪速のここじゃと聞いたもんでな。
しかしのぉ、あの勝軍が死におったかい。ちっとも知らんかったわ」
どうも同じ顔の人が交互に話すと、よく判らなくなってくる。
困ったな。
「そうですか。爺ちゃんと住職のお知り合いなんですね。
ぼくはちっとも知りませんでしたよ」
「そうよの……勝軍と慈恵が、九州で暴れておった妖かしを退治にきよったときからじゃから……もうかれこれ五十年近い付き合いかの。
妾達にとってはついこの間じゃが、人間にとっては長い付き合いじゃろうの」
真ん中の方が答えてくれた。
そうか……爺ちゃん、神様とも交流があったんだ。
「それは、知っていれば訃報もお知らせしたのですが、申し訳ありませんでした」
「いやなに、それはしょうがないじゃろうの。
そもそも慈恵が知らせて寄越さんのが悪いのじゃ」
右側の人が目を細めて言う。
「じゃから、ちょっとばかりお灸を据えておいたわい」
左側の人が楽しそうにそう言った。
住職……大変だった様だね。
「それでぼくにご用なんですよね?仏壇にお線香でも上げて頂けるんでしょうか?」
「いやいや、妾達は神じゃぞ?線香など上げるわけないではないか。
そもそも日の本の八百万の神にとって、死は不浄なものじゃしの」
「では、どういったご用件で?」
「勝軍の孫よ。ちょっとした忠告があるのじゃ。
肥後の鞠智一族というのを知っておるかの?」
肥後の菊池と言えば、歴史上に何度も出て来る名族だ。
歴史にあまり詳しくないぼくでも、菊池千本槍や南朝・征西府を支えた菊池武光くらいは知っている。
「うぬ。まあそれも間違いではないの。確かにそれらも鞠智一族の話じゃ。
まあ厳密に言えば、鞠智一族から枝分かれした菊池氏の話じゃの。
鞠智一族は、天孫降臨より以前から肥後に盤踞しておる古き一族での。
かなり日の本に馴染もうとあれこれと頑張ってきた様じゃが、今の当主はちょっと違う様での」
そうなんだ?
菊池一族って鞠智一族の支流で、しかも天孫降臨より前って……。
無茶苦茶に古い一族だったんだね。
「それでの、忠告と言うのは他でもない。
この鞠智の惣領が、何やら良からぬ事を企んでおる様での。
どうも酒呑童子と手を握った形跡がある」
「酒呑童子ってあの鬼のですか?源頼光に退治されたんじゃありませんでしたっけ?」
「確かに頼光には一族を討たれよったが、酒呑童子自身は肥後に逃げ込んでおったのよ。
肥後の妖かし共を従えておったんじゃが、流石に京におった頃の力はなくての。
それほど問題にはしておらんかったんじゃが、どうも鞠智の惣領はそこに目を付けたらしいの」
「それで、具体的に何をしようとしてるんでしょうか?」
「それは流石の妾達でも判らんの。ただ、こういった場合の起きる揉め事は今までは勝軍や慈恵なんぞが対処しとった様じゃから、それを忠告に来たという訳じゃわい」
成る程、その鞠智の長男が何かを企んでるけど良く判らないから、注意しなさいよ、ってことか。
「それはわざわざ有り難うございます。でも、もう爺ちゃんも居ませんし、ぼくにできることもないでしょうね。
住職にもこの話をしてくださったのでしたら、住職にお任せすることになるかと思います」
ぼくがそう言うと、三女神が訝し気な顔をする。
「何を言うておるのじゃ?勝軍の孫で、あの役小角の縁者じゃろうに?
しかもそんな強大な力を持った魔物を従えておいて」
「いえ、でもぼくは、あまりそういう荒事は好きじゃないもので……」
「好き嫌いではないわい。勝軍から何も聞いておらん様じゃが、おぬしは逃げられはせんわい。
そういう血筋なんじゃからの」
そう言ってぼくを睨み付ける三女神を相手に、ぼくはただ絶句して立ち続けることしかできなかった。
さて、次回はなんとバトルの予定です。
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