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異世界むなしばなし

絶世花子

掲載日:2026/10/06

むかしむかし、あるところに、花子という若い女がおりました。

花子は、あまり見た目のよい女ではありませんでした。

目は小さく、鼻は低く、髪もぼさぼさ。

男の人にも、あまりモテませんでした。

花子は、それがずっと不満でした。



『わたしがモテないのは、美人じゃないからだわ』



花子は、そう考えていました。



『もっと美人になりたいなぁ。

だれよりも美しい、世界でいちばんの美女になったら、きっと立派な男の人と結婚できるのになぁ』



そんなある日のことです。

花子が森を歩いていると、目の前に女神さまがあらわれました。



「花子よ。あなたに、ひとつだけチートの力をさずけましょう」



『チート?』



「ふつうの人にはない、とってもすごい力のことです」



花子は大よろこびしました。



『それなら、わたしを世界でいちばんの美女にしてください!』



「わかりました」



女神さまが杖をふると、花子の体が金色に光りました。

すると、どうでしょう。

小さかった目は、宝石のように美しくなりました。

低かった鼻も、すらりと高くなりました。

ぼさぼさだった髪も、絹のようにつやつやになりました。

こうして花子は、本当に世界でいちばんの美女になりました。



『やったわ!』



花子は大よろこびです。



『これで立派な男の人と結婚できるわ!』



花子が町を歩くと、男の人たちはみんな振り返りました。



「なんて美しい人なんだ!」



「まるでお姫さまみたいだ!」



花子は得意になりました。

男の人たちは、次々に花子へ贈り物を持ってきました。



花をくれる人。

お菓子をくれる人。

きれいな服をくれる人。



花子はますます得意になりました。



『やっぱり美人になれば、モテるのね!』



そして花子は、だんだん町の女の人たちを馬鹿にするようになりました。

きれいな服を着た女の人を見れば、



『そんな服を着ても、顔がそれじゃあ意味がないわね』



料理の上手な女の人を見れば、



『美人なら、料理なんてできなくても男の人が食べさせてくれるわ』



一生懸命に働いている女の人を見れば、



『かわいそう。美人じゃないから働かなくちゃいけないのね』



と言って笑いました。

昔からの女友達にも、



『あなたも、もう少しきれいだったらよかったのにね』



などと言いました。

とうとう女友達も、花子と遊んでくれなくなりました。

けれども花子は気にしません。



『女の友達なんていらないわ。

わたしには男の人がいっぱいいるもの』



ところが、しばらくすると不思議なことが起こりました。

花子に贈り物をしていた男の人たちが、次々に別の女の人と結婚し始めたのです。



『おかしいわねぇ』



花子は首をかしげました。

ある日、花子が好きだった男の人も結婚することになりました。

花子は驚いて、結婚式を見に行きました。

ところが、お嫁さんは花子ほど美人ではありません。

どこにでもいる、ふつうの女の人でした。



『どうして、あの人と結婚するの?』



花子がたずねると、男の人は言いました。



「優しくて思いやりのある人だからだよ」



『でも、わたしの方が美人よ!』



「そうだね」



『町中の男の人が、わたしを美人だと言っているわ!』



「そうだね」



『じゃあ、どうしてわたしじゃないの!』



男の人は困った顔をしました。



「だって花子さん、うちの母さんと絶対に仲良くできないでしょ?」



花子には、よくわかりませんでした。

そのあとも、町の男の人たちは次々に結婚していきました。


料理の上手な女の人。

働き者の女の人。

子供が好きな女の人。

夫の家族と仲良くできる女の人。


みんな花子ほど美人ではありません。

中には、花子が以前、



『あんな顔では結婚できないわね』



と笑った女の人もいました。

けれども、その女の人は夫や家族と仲良く、幸せそうに暮らしていました。

花子は、だんだん腹が立ってきました。



『どうしてよ!

わたしは世界でいちばん美しいのに!』



花子は鏡を見ました。

何度見ても、美しい顔です。

女神さまは、ちゃんと願いをかなえてくれました。

花子は、本当に世界でいちばんの美女になったのです。

それでも花子は、結婚できませんでした。

やがて、町にいた同じ年ごろの女の人たちは、ほとんど結婚してしまいました。

そして、花子が馬鹿にした女の人たちは、もうだれも花子と話してくれませんでした。

花子は最後まで首をかしげていました。



『おかしいわねぇ。

美人にさえなれば、結婚できると思ったのになぁ』



そして花子は荷物をまとめると、自分をもっと大切にしてくれる男の人を探して、町を出ることにしました。

けれども、見送りに来てくれる人はいませんでした。

こうして花子は1人で寂しく去っていきました。


悪口を言う人が居なくなったので、町はすっかり平和になりました。

めでたしめでたし。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



本作を見つけて下さってありがとうございます。

小西にこ(蒼き流星ボトムズ)と申します。


色々なジャンルに手を出すのが好きで、今回は童話に挑戦してみました。

多くの作品が連載途中にも関わらず申し訳御座いません。


この場を借りて作品進捗を報告します。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



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― 新着の感想 ―
モテる事と結婚生活を送る事は別だからね、その中である存在を感じる事が出来なかったのがヒロインの「両親」である、結婚生活の最も身近なロールモデルとなるであろう両親が存在しないとならば正解など知る由もない…
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