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8-5 初めての錬金術


「あったー! りんごの木」


 俺は大喜びでガッツポーズした。

 一時はどうなることかと思ったからだ。


「俺ら普通に食ったもんな。まさか錬金術用だったとはな、知らないもんなぁ。なぁ、ポチ?」

「クゥーン」


 りんごの木は、あまり苦労することなく川を超えた森の中で見つかった。


 この森はやはり異世界らしいというか、多種多様な実が成っていて、土地柄とか土壌とかの影響をあまり受けていないだろうと思った。だからこそ、あっちにも、こっちにも、りんご以外にも見たことのない植物があるんだと思う。


 そして、ここに来る間、めちゃくちゃ闘った。

 武闘派の亮とは違い、魔法を使うか、「殴る」のが俺の闘い方。魔法はいいとしても、殴るって、何で殴るんだ? やっぱり漢は拳ってこと?


 俺たちは戦闘にもだいぶ慣れ、相変わらず俺のレベルはサクサク上がり、そう苦戦することなく家に戻って来られた。


「いよいよ、錬金術かぁ……」

「初錬金術だから、俺も眺めているよ。興味あるし」


 と亮。


 なんとリビングにもともと設置されているこの大釜と、ダイニングテーブルに置いてあった木のロッドを錬成に使うらしい。


 ……んで、どうやって?

 

 それについて俺は文句を言いたい。

 錬金術の本をくれたのも、俺たちを異世界へ呼んだのも、万象の女神フレイヤだ。

 普通、錬金術の本に詳しく書いてあるだろうと思うだろう?


 違うんだ。

 彼女は……絶対ズボラだ。


 本に書いてあったのは、

『・皮を剥いたリンゴ

 ・メシュメルの実(中身)

 ・小麦粉 

 ・【ミール液】 

 ・【火薬草の結晶】 

 をいい塩梅で混ぜて木のロッドでかき混ぜろ。

 錬成が終わったら、練金釜に手を添えて、「錬成終了。――回収!」と言うのだ。

 あとは、そうだな。【マジックバッグ】を役立てろ』


 だそうだ。

 小麦粉はいい。練金釜の横の収納棚に入ってたから。

 だけど、【ミール液】ってなんだ?

 【火薬草の結晶】ってなんだよ?

 【マジックバッグ】ってなんのこと?

 【】って、何の意味でついてるんだよ〜⁉︎


 教わるより慣れろってか?

 世界が危機に晒されてるのに?

 急がなくていいのか?

 どうなってんだよ、……ったく。


「せっかくだけど、亮。まだ材料足りないみたいだ」

「ええええ! 小麦粉と砂糖と塩と、バターとベーキングパウダーとりんごとかじゃねえの?」


 ……妙に詳しいな。さては亮、お料理男子だな?


「お前、錬金術士なんだろ? やり方とか、スキルとかでわかんねぇの?」


 ――うん。亮の言う通りだ。


 俺のスキルといえば、――そうだ! 「鑑定」がある。このスキルを使えば、大抵のことはわかりそうだな。盲点だった。


 俺はもう一度、ダイニングテーブルを見る。


「スキル、鑑定!」

 ・木のロッド(普通)

 ・【マジックバッグ】(最高品質)


 ――あった! 俺は【マジックバッグ】を詳しく鑑定してみる。


 ――ピコン!

【マジックバッグ(最高品質) 中は亜空間領域となっている。錬成前の素材アイテムや生活雑貨、食糧など、生き物以外の物を保管することができ、個数と大きさの制限は特にない。

 収納時点から劣化が止まり、温度や状態はキープされ、かつ、バックに重量は加算されない。

 使用には魔力(MP)が必要。アイテムの出し入れでを魔力(MP)を消費する。

 また、使用者登録が必要である】


 ――何だこれ。すごい便利じゃないか。


 ――ピコン!

『使用者を鈴木創太に改めますか?

 ▶︎はい

  いいえ』


 俺はポップアップのはいをタッチパネルのように押してみた。


 ――『こんにちは。今から私はあなたの【マジックバッグ】です。よろしくお願い致します。ご主人様』


「おお、なんかこのバッグが使えるようになったぞ」

「よかったじゃん。で、何か入ってないのか?」

「ええと……」


 ――えーと、【ミール液】に【火薬草の結晶】だったか?


 亮に言われるまま、肩から中に手を突っ込み、手に鑑定の力を付与しつつ、あーでもないこーでもないと言いながら探してみる。


「なぁ、創太。バッグの大きさに対して、明らかにお前の腕がどんどん入っていくんだけど。どうなってんだそれ」

「亜空間領域なんだってさ」

「なんじゃそりゃ」

「おそらく、無限ってことなんじゃないかと思ってる」

「なるほど、なぁ……。さすが異世界」


 ――あったぞ! 【アップルパイ】を錬成するのに足りなかったアイテムが。


 俺は早速、本に書いてあったとおりの材料をいい塩梅、もとい()()で練金釜へ入れていく。

 そしてこの木のロッドでかき混ぜれば……!


「創太、なんだか焦げ臭くないか?」

「言われてみれば……いや、言われてみなくても俺の視界は既に黒煙で真っ暗だ」

「ポチ! 一旦逃げるぞ!」

「ワンッ!」


 俺は亮とポチに見捨てられた。

 ――でも、それが正解だったんだ。


 ――ボオオオオオオオン!


 けたたましい音と、【アップルパイ】(仮)だった何かが、消し炭になって弾け飛んだ。


 それにしても、これが錬金術士の特性なのか。俺も錬金釜も、爆発の割には無事だ。……真っ黒だけど。俺は、本の指示どおりに試してみる。


 練金釜に手をかざし、「錬成終了。――回収!」と。


 すると、丸焦げのパイが浮かび上がってきた。

 いや、パイと呼ぶのも烏滸(おこ)がましいかもしれない。黒いナニカだ。


「あのー。創太、大丈夫……じゃなさそうだな?」

「いや、生きてはいる。初の錬成アイテム、食べてみないか?」


 ドロオオオオオオンとした見た目。真っ黒なナニカ。


 俺は亮と一緒に一口食べてみた。


「「まっず! おええええ」」


 ――そして学んだ。

 不老不死は、病気では死なない。

 けれど、病気にはなるものである、と。


 俺たちは、三日三晩、激しい腹痛と嘔吐に苦しんだ。不幸中の幸いは、ポチが口にしなかったことだけだった。





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