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8-4 3体のピギーウルフ


 ピギーウルフはこちらに気付き、もう既に狼化している。


「亮、どうやって倒す?」

「不老不死ったって、首噛まれりゃ死ぬもんな」

「あのさ、俺、魔力(MP)のありったけを、撃ってみようと思うんだけど、取り逃したら、あるひのこと守ってくれないか?」

「わかった。あるひは守る。命に代えても」

「ありがとう……。ポチも頼んだぞ」

「ワンッワンッ」


「グルルルルルルルル……」


 ピギーウルフは、既に戦闘体制に入っている。

 鋭い眼光が、敵対心(ヘイト)のスキルを持つ亮に向いているのがまずい。あるひに傷はつけさせない。


 そのためにも、俺に敵対心(ヘイト)を。

 これまで闘ってきて、わかったことがある。

 大切なのは、『呪文』じゃあない。

 ――魔法に大事なのは、イメージだ!


 俺は両腕に魔力(MP)を集中させて、雷豪をイメージする。両手が、黄色く、そして金色に。バチバチと光り始めた。


 ――もっと、もっとだ。集中しろ!


 ありったけの魔力(MP)を1つの塊に、凝縮するイメージで、――一気に、解き放てッ!

 1体のピギーウルフが、後退りした。

 

 ――今だ!


「――雷神の怒り!」


 雷雲がピギーウルフたちの頭上に集まり、轟音と地響きと共に、蒼い落雷が落ちた。


「ギャアアアアアア!」


 ピギーウルフたちは、3体とも背を反り上げ、後ろ脚だけで立ち上がり、その身に落雷をくらい続けている。


 ――まだだ。まだだッ! あるひには、手出しさせないッ!


 魔力(MP)を絶やさず注いでやる!

 根比べだッ!

 ピギーウルフたちは、丸焦げになり、バタリと背面から脆く崩れ落ちた。


「や、やった……! すごいな創太! さすがだよ」

「いや、亮とポチに、あるひを託せたからだ。ありがとう」


 ――ピコン!

 ――ピコン!

 ――ピコン!

 ――ピコン!

『――レベルが上がりました。

 ――レベルが上がりました。

 ――レベルが上がりました。

 ――新しい固有スキル(ユニークスキル)敵対心(ヘイト)を覚えました』

 俺のポップアップが、レベルアップと新スキル獲得を告げる。


 俺のレベルは、また急激に上がる。

 ――でも、欲しいのは魔法使いとしてのレベルじゃあない。


 あるひを生き返らせるための、錬金術士としてのレベルだ。


 ◇


 小屋は小高い丘の上にあった。

 雨風から守るかのように、家の隣にそびえる大きな木からは、何かの実を採集することができそうだ。

 太い幹の足元には井戸があり、薪木などを保管できそうな小屋や、家庭菜園のための畑もある。

 家と庭を囲むように、木の柵が立てられ、柵の出入り口から続く緩やかな斜面には膝丈ほどの草花が覆い繁っていた。


 小屋、というよりかは、家のような風貌。

 家に入るには、ノックしなくちゃな。

 ――コンコン。


「失礼しまーす……」


 返事がない。

 探索魔法からしても、誰もいなそうだ。

 

 ――パチッ!

 家に入ると、自然と天井のランタンが点いた。

 なんだ? センサー付きライトか?

 今まで森の中にいたものだから、この世界の生活水準は全くわからない。


「創太、あるひを寝かせてあげよう」

「そうだな」


 どうやらこの家は一階がリビングで2階が個室のようだ。個室は運良く、3部屋ある。


「真ん中の部屋をあるひの部屋にしようか」


 と言って亮は、ベッドにあるひを寝かせてあげた。


「俺たちだけじゃなく、あるひの時も止まってるから、こうして見ると、ただ寝てるだけみたいだな」

「うん。眠り姫みたいだ」


 あるひを見ていると、後悔ばかりが胸を去来する。


 ――どうして、散歩に誘ってしまったんだろう。

 ――どうして、助けてあげられなかったんだろう。


「ごめん、あるひ。ごめん、亮。ごめん、ポチ……」


 俺は涙が涸れるまでアルヒのベッドに顔を埋めて大泣きした。

 亮も泣いているようだった。

 ポチはキュウンと鳴き、俺の身体に鼻先を擦り当てる。

 (しばら)く俺たちは、泣き続けた……。


 ◇


 ひとまず落ち着いて、一階に戻った俺たち。

 落ち着いて部屋の中を見てみれば、一階は一面本棚だった。でも本はそこまで多くはなく、まちまちに置いてある程度だ。

 それに大きな釜(?)のようなものもある。釜の横には、作業台とまたまた本棚と。そして、釜の前には踏み台らしきものもある。

 何に使うのか、サッパリ検討もつかない。


「創太、これ、見てみてくれ」


 亮が指差したダイニングテーブルには、様々な物が置いてあった。これがおそらく、万象の女神フレイヤからのささやかな贈り物ということだろう。


 長剣に、木の棒(?)に、本が数冊。

 それに、この世界で一般的なのか知らないが、ローブに革の胸当てなどの防具と盾がある。革製の小さなショルダーバッグも。

 そして、りんごが3つ。


 ダイニングテーブルには、椅子が2つ。


「腹減ったな。りんご、食べるか」


 俺たちは夢中でりんごを食べた。

 もちろんポチにもりんごはあげた。

 病気で死なない俺たちだから、食あたりとかでは死なないだろう。


 俺は行儀悪く、本を開きながらりんごをかじる。


 ――ふむ。なになに。『アップルパイの作り方』? 料理の本か?


 読めば読むほど、汗が出る。

 俺の異変に、亮だけでなくポチも気がついた。


「どうした? 創太」

「キュウン……」


「大変だ! これは、錬金術士が使う本だった!」

「すげえじゃん! やったな」


「よくないんだよ……」

「なんで?」


 ――シャリッと瑞々しいりんごを食べながら亮は言う。


「それがな、亮。りんごは、錬金術に必要な、錬金素材アイテムだったんだ」

「なんだってええええええええ?」


 ――ああ、なんで食べてしまったんだろう。

 大人しく焦げたピギーウルフでも食べておけば良かった。


 亮は言う。


「あの〜、吐き戻そうか?」


 俺は断る。


「いや、汚い」



 ――明日の俺たちの予定は決まった。りんごを探す冒険に出かけなければ。

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