8-2 異世界転移、再び〜新たなる世界へ〜
『では、主たちを新たな地へ転移させる。その小娘もの。小娘の件は、本当にすまなかった』
「「…………」」
俺たちは、何も答えなかった。
『――我は万象の女神 フレイヤ。転移の門よ、この者共を新たな地へと、導きたまえ』
再びピンク色の魔法陣が現れた。
俺はあるひを抱き抱えながら、亮と目を合わせたのちに前を見据える。
――この異世界転移が俺のせいだというならば、俺がみんなを、守ってみせる。
「まず、小屋を目指すのじゃ。そこには、ささやかじゃが、妾から主らに用意したものがある。さぁ、行くが良い。武運を祈っておる」
そして俺たちはピンク色の世界に包まれた――。
◇
◇
◇
青臭い、だけれど涼やかな風を感じる。
どうやら転移は無事に終わったようだ。
「亮、ポチ、無事かっ?」
「ああ、なんとか」
「ワンワンッ」
「こ、ここは――?」
――森の中?
今は朝なのだろうか。雲の切れ間から覗く陽の光を手で遮って、澄んだ空気を肌で感じる。
森の木々で視界が悪くよく見えないが、どうやら勾配のキツイ山陵に囲われた場所らしい。山稜からは所々剥き出しになった地層が見える。俺は、飲み込まれそうな圧倒的自然の気高さを感じていた。
「なぁ、創太。俺思うんだけど、ぐるっと角度のキツイ山陵に囲まれていて、この地に閉じ込められた感じがしないか?」
「どこかに抜け道があるかもしれない。……っと、その前に小屋を探せ、だったか」
――その時だった。
――ピコン!
『探索魔法により感知。危険度パープル。敵、1体。1分後に遭遇します』
俺の目の前に、薄水色の背景に白文字のポップアップが急に現れた。
「――敵⁉︎」
「――どうした創太、敵が来るのか?」
――そうか、これは俺の固有スキルだから亮には見えないのか。
「どうやらそうらしい。危険度パープルっていうのがよくわからないけど……。敵が1体くるらしい」
「なんだか、RPGの中にいるみたいだよ。まだ冒険は始まったばかりだし、定石で言えばスライムあたりじゃないか?」
――聞こえる。迫り来る気配。速い足音、そして殺気……!
――やばい、これは……こ、殺される……!
「亮、違うっ! かなりヤバいヤツが来るはずだ。臨戦体勢に入ってくれ」
亮の額から、汗がポタリと滴り落ちた。
「あぁ、俺も漸くわかった。……これはヤバイ! 創太、あるひを!」
「ああ。ポチ、あるひを頼んだぞ!」
「ワンッワンッ」
亮は足でバキッと木の枝を鋭利に折り、敵との遭遇に備えた。
俺も同じく、枯れ枝を持つ。
――そもそも敵って、どんな奴なんだよ。人間だったら、かなりキツイぞ。人殺しはしたくない。
「グルルルルルルルル……」
――来た。
森の中から、ピンク色の毛で鋭い牙をもち、1メートル程の体躯の狼が現れた。
赤く光る鋭い眼光で、こちらを一点に見据え、ジリジリと間合いを図っている。
「なんだコイツは。ピンクの狼⁉︎」
――ピコン!
『 ●ピギーウルフ
本来は子豚の姿をしている狼。怒るとピンク色の毛を逆立て、狼のような姿に変化し素早く襲ってくる。敵の首を狙って襲うのが特徴』
「亮! 首だ! コイツは首を狙って襲ってくるピギーウルフっていうらしい」
「素早そうだし、やべぇじゃん」
ピギーウルフは唸り声を上げながら、こちらとの間合いを徐々に詰めている。
ポチも必死だ。やられまいと、横たわるあるひの前で毛を逆立て、必死に唸っている。
ーー来る!
ピギーウルフは、亮目掛けて駆け出した。
「うおっ、俺か!」
――俺らの中から、何故亮が選ばれたんだ? まさか、亮の戦闘スキルの敵対心のせいか?
亮は枯れ枝を構えるも、ピギーウルフのあまりの素早さと獰猛さにたじろいで体勢を崩す。
「やべえっ……」
「亮!」
俺は頭が真っ白になり駆け出していた。でもこのままじゃ間に合わない。亮が、――このままでは亮が、喰われてしまう……!
――ピコン!
『貴方は魔法が使えます』
――そうだ。俺は一応、魔法使いでもあったんだ。
だが、使い方なんから知らない俺は、適当にRPGっぽい呪文を唱えてみる。
「ファイヤーボルト!」
ピギーウルフ目掛けてかざした右手から、銃のように炎の塊が飛び出した。そして亮とピギーウルフが交わる前に、ピギーウルフを捉え、業火の如く焼いていく。
「ギャアアアアアア!」
ピギーウルフは、背を反って力無くその場へ倒れた。……丸焦げになって。
俺たちは、
《ドロップアイテム》
・ピギーウルフの肉
・ピギーウルフの毛
を手に入れた。
「ありがとう、創太、助かったよ。死ぬかと思った。創太、それが錬金術か?」
「いや、たぶん違う。俺は魔法使いでもあるらしい」
「なんか魔法が使えるって聞くと……改めて思うよ。ここは、本当に異世界なんだなって」
――ピコン!
――ピコン!
――ピコン!
『――レベルが上がりました。
――レベルが上がりました。
――レベルが上がりました』
俺のポップアップが、レベルアップを告げる。
「創太、俺、戦えてなかったけど、レベルが上がったみたいだ! ステータスオープン!」
「そうか、同じパーティーだと恩恵があるのかもしれないな」
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【名前】 加賀 亮
【称号】万象の女神フレイヤの加護を受ける者
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.2/武闘家
Lv.1/魔法剣士
【体力/HP】10/15
【魔力/MP】20/20
【戦闘スキル】
敵対心:Lv.1
剣技: Lv.1
魔法剣(雷属性):Lv.1
【固有スキル】
多種多様な武器の使い手:Lv.1
怒り:Lv.1
大工:Lv.1
解体:Lv.1
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申し訳ないが、亮のステータスは俺の固有スキルで勝手に見えてしまう。
「ステータスオープン」
俺は小声で言ってみた。
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【名前】 鈴木 創太
【称号】万象の女神フレイヤの寵愛を受ける者
はじまりの錬金術士
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.1/錬金術士
Lv.4/魔法使い
【体力/HP】1000/1000
【魔力/MP】1999/2500
【戦闘スキル】
錬成アイテム:Lv.1 /♾️
殴る: Lv.1 /♾
魔法(雷属性):Lv.1 /♾
(風属性):Lv.1 /♾
(炎属性):Lv.4 /♾
(水属性):Lv.1 /♾️
(土属性):Lv.1 /♾️
(闇属性):Lv.1 /♾
(光属性):Lv.1 /♾
【固有スキル】
錬金術:Lv.1 /♾
錬成知識:Lv.1 /♾
テイマー:Lv.1 /♾
鑑定:Lv.2 /♾
探索魔法:Lv.2 /♾
解体:Lv.1 /♾
創作魔法:Lv.1/♾️
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なんだか、亮に比べてレベルの上がり方が半端ない。
「なんだ……これ……。敵を仕留めるとレベルが早く上がるってことか」
「いくつあがったんだ?」
「3、だよ」
亮の顔が、少しかげった。
俺はなんだか、亮よりレベルの上がりが早いことに、負い目を感じていた。




