8-1 万象の女神フレイヤとユニークスキル
そして時は現在へ――。
俺と亮は、動かなくなったあるひの側から離れられなかった。
どれくらいの時間が経っただろうか。
とうに涙も枯れ果てた。
俺も亮も無言になり、ただここへ、あるひの隣へ、呆然と座ったままだ。
と言っても、上も下も、右も左も真っ白なこの空間。あるひも死んでしまった以上、あてもなくどこへ行けというのか。
『貴様が鈴木創太か』
「――⁉︎」
誰もいないはずの空間で、俺を呼ぶ声が突然響いた。転移した時と、同じ声だった。
「どこだっ! どこにいるッ」
俺はもちろん怒っている。
なぜなら、大好きなあるひはおそらく異世界転移に耐えきれなくて死んでしまったのだから。
『ここじゃ』
眩い金の光とともに、真上から女神のような着衣を纏った、金色の髪の長い女性が降りてきた。背中には羽がついている。
「天使、か……? それとも女神か……?」
思わず、亮は言う。
俺もそうかと思った。
『貴様が鈴木創太か。して、そこの男女と獣はなんじゃ』
「なんじゃ、じゃねぇよ! お前が俺たちを呼び寄せたんだろうが」
ポチも警戒心丸出しで、ワンワンと吠え続けている。大事なあるひを殺しておいて、何を悠長に喋っているんだ、コイツは。
女神は口元に手をやり、「ふうむ」と言った。
『いいや、それは必然ではない。偶然じゃ』
「――は?」
『妾は、鈴木創太に用があったのじゃ。錬金術士の才がある、貴様にのう』
「ちょっと、ちょっと待ってくれよ。それじゃあ、あるひも、亮も、ポチも。たまたま俺の近くにいたせいで今ここにいるってことか」
『そうなるの』
「ふっざけんな! お前のせいで、あるひは死んだんだぞ! お前、神様かなんかなんだろ? 今すぐ、特別な力で生き返らせろよ」
『悪いが、それはできぬ。死んでしまった者は、二度と生き返ることはない。だが、悪いと思っている。貴様にも、そして共にこの空間へ呼び寄せてしまった者共へものう』
「じゃあ、どうしろってんだよ。百歩譲って、俺はいい。だけど、関係ないって言うのなら亮とポチ、……あるひを……元の世界へ返してくれよ!」
――女神は、首を振った。
『それは叶わぬ。貴様……いや、創太が任務を全うするまではな』
「――任務?」
『そうじゃ。これから新たに転移する世界には、錬金術士が必要じゃ。研究し、錬成の精度を上げ、世界の危機を救う必要がある』
「――はっ」
俺は、呆れすぎて笑ってしまった。
なんて自己都合なヤツなんだ。世界を救え、だって? だったらまず、あるひを救ってくれよ。
「――断ったら?」
『永遠に、この空間にいることになろう。何もないこの空間にな」
「なんて身勝手なんだ」
俺は咄嗟に亮を見る。呆然としたままだ。
そりゃそうだ。異世界転移だぞ?
……俺が、巻き込んでしまったというのか。
――と言っても、俺だって好きでここへ来たわけではない。
『お前たちに、固有スキルを授けよう。そして、この瞬間をもって、お前たちの時を止める。所謂、不老不死というヤツじゃ。だが、絶対に死なぬというわけではない。首を刎ねられれば死ぬし、心の臓を止められれば死ぬ。ただ、病気では死なぬ。そして亡くなってしまった、その娘の時も止めておく。ワンワンと吠えている、獣もの』
「――亮は、納得してるのか? 不本意とはいえ、俺のせいで巻き込んで……」
「何言ってるんだよ。俺たち全員巻き込まれた側だろ? 創太が悪いとかそんなのはないから。悪いのは、アンタだ」
――亮がここまで怒るなんて、滅多にないことだ。
『ふむ。して、其方は名を何という』
「加賀亮だ」
『亮、偶然にも其方には、武術の才がある。そして伸び代も。妾にできる限りの才を更に授けよう。皆を守るがよい』
「わかった」
『――我は万象の女神 フレイヤ。加賀亮に、武術の才を授けたまえ』
亮は金色に眩く光り輝いた。亮にもその感覚があるようで、手をグーパーグーパーしている。
『ステータスオープンと言ってみよ』
「ステータスオープン……。なんだ、これ……」
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【名前】 加賀 亮
【称号】万象の女神フレイヤの加護を受ける者
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.1/武闘家
Lv.1/魔法剣士
【体力/HP】10/10
【魔力/MP】20/20
【戦闘スキル】
敵対心:Lv.1
剣技: Lv.1
魔法剣(雷属性):Lv.1
【固有スキル】
多種多様な武器の使い手:Lv.1
怒り:Lv.1
大工:Lv.1
解体:Lv.1
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「亮、俺にも見えるぞ」
『ふむ、創太にも見えるとな。普通は他の者のステータスは本人が開示許可しない限り見えないのじゃが。
さぁ、創太、主にも……』
「俺にはあるひを生き返らせるスキルをくれ!」
『言ったであろう。二度と生き返らせることはできぬと。――我は万象の女神 フレイヤ。鈴木創太に、はじまりの錬金術士の才を授けたまえ』
――俺の身体は、眩く光り輝いていく。
身体が、あつい。どこからか、力が入ってくるのがわかる。身体が何かで、満たされていく。
俺は亮と同じく、「ステータスオープン」と言ってみた。
「なんだ、コレ……」
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【名前】 鈴木 創太
【称号】万象の女神フレイヤの寵愛を受ける者
はじまりの錬金術士
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.1/錬金術士
Lv.1/魔法使い
【体力/HP】1000/1000
【魔力/MP】2000/2000
【戦闘スキル】
錬成アイテム:Lv.1 /♾️
殴る: Lv.1 /♾
魔法(雷属性):Lv.1 /♾
(風属性):Lv.1 /♾
(炎属性):Lv.1 /♾
(水属性):Lv.1 /♾️
(土属性):Lv.1 /♾️
(闇属性):Lv.1 /♾
(光属性):Lv.1 /♾
【固有スキル】
錬金術:Lv.1 /♾
錬成知識:Lv.1 /♾
テイマー:Lv.1 /♾
鑑定:Lv.1 /♾
探索魔法:Lv.1 /♾
解体:Lv.1 /♾️
創作魔法:Lv.1/♾️
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「創太、俺には創太のステータスは見られないよ」
「もしかして、俺には鑑定っていう固有スキルがあるから亮のステータスが見れたのか?」
『そのとおりじゃ。しかし、妾が付与する前から、もともと才能があったんじゃろうな』
――亮と比較するのは失礼だけれど、俺のステータスは明らかにバグってる。これが、【称号】万象の女神フレイヤの寵愛を受ける者ってことか……。
「――やってやる、やってやるよ!」
「創太?」
俺は倒れたままのあるひを見る。
「あるひを生き返らせることができない? そんなこと知るか! なら俺は、あるひを生き返らせる錬成アイテムを作ってやる!」
「創太……」
――そう。なんだってやってやるさ。
俺が、はじまりの錬金術士だというのならば……前例がないならば、作ればいい!




